懲戒手続きへの弁護士の関与
おはようございます。弁護士の檜山洋子です。
懲戒処分をする時には、処分対象の従業員に弁明の機会を与えなければなりません。
就業規則にその旨規定されているときは、弁明の機会を与えずに懲戒処分を行ってしまうと、手続き違反として処分が無効になります。
就業規則にその旨の規定がない場合であっても、弁明の機会を与えることは懲戒処分が相当なものであることを基礎づける事実となります。
つまり、就業規則に弁明の機会付与に関する規定があろうとなかろうと、弁明の機会を与えずに懲戒処分をしてしまと、その処分が無効になる可能性が高くなるということです。
では、弁明の機会を与えようとした時に、「弁護士を立ち合わせて欲しい」と言われたら、会社はこれを受け入れなければならないのでしょうか。
もちろん、この場合の「弁護士」とは従業員側の弁護士であって、会社の顧問弁護士ではありません。
結論として、会社にこのような弁護士立会いを認める義務はありません。
しかし、弁護士の立会いも、相当性の判断材料の1つです。
従業員が極度に萎縮してしまっていて、到底弁明できるような精神状態でないと分かっているのに、形式だけ弁明の機会(とういか弁明の場)を与えたとしても、そのような機会を十分に活かしきるなんて難しいことは明白です。
そうすると、心の支えとなる弁護士に立ち合ってもらい、従業員側の言い分をしっかりと聞く機会をもつことは、事実の解明の観点からも好ましいことです。
従業員側の弁護士が立ち合うと、会社が不利な立場に追い込まれるのではないかと不安になるかもしれません。
しかし、弁明の機会は、あくまでも従業員の言い分を聞く機会であって、団体交渉のように双方の主張を戦わせる場ではありません。
したがって、弁明の場に従業員の弁護士が立ち合うことを恐れる必要はありません。
ただし、この弁明の場においてした発言を後に利用されることを念頭に置き、従業員の権利を侵害するような質問や、事実関係を決めつけた上での誘導をしないように、いつも以上に気を付けるようにしましょう。
できれば、一言断った上で、録音をさせてもらうのもいいかもしれません。
さらに、従業員側の弁護士が立ち合うなら、会社の顧問弁護士も立ち合わせることにすれば、会社にとっては安心材料となります。ただし、会社側の弁護士を立ち合わせることは従業員にとっては萎縮要因となり、弁明の機会が実質的に奪われたことにもなりかねませんから、会社側の弁護士を立ち合わせるとしても、基本的には弁護士は(従業員側の弁護士も)積極的に口を挟まないことを条件にしておく方がいいでしょう。