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若者の

「アオキさん、便意が来たら教えてくださいね」
そう言いながら看護師さんが手に持つ蓋付きのチリトリのようなもの。まさかと思った。

20代の終わり頃、僕は車に撥ね飛ばされて入院中だった。
その事故で太腿の骨がパッキリ2つに折れて、病院のベッドにくくりつけられたほぼ身動きできない状態の僕にその看護師さんは言った。
聞くと、寝たきりの僕のお尻の下にチリトリを差し込んでそこに用を足すのを手伝ってくれると言うのだ。
今なら枯れた世代に成り果てたので「そうですか、ウチの子をどうぞよろしくお願いします」と身を任せ、ミも任せてしまうだろうけど、まだまだ青春の残滓を残す20代、まして人より照れ屋な僕は「先生…‼︎ウンチがしたいです…」とは恥ずかしくて言い出せなかった。
頭と足は固定され、片腕には常に点滴、頼りになるのはもう片方の腕と腰あたりの微々たる上下運動のみ。その時の僕はそれまでの人生で一番考え、一番努力したんじゃないかと思っている。
「よぅし、1人で出来たぞぅ…」
チリトリに蓋をしてナースコールのボタンを押す時の独りよがりな優越感と満足感、チリトリを手渡す時の恥ずかしさと何日か分のウンチの重みは今でも忘れていない。
あれが若さだったのかと思い出す。

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