今でも続く土曜の夜の特別感
銀蝿一家ファンあるあるのひとつに『土曜の夜になると妙にワクワクする』というのがある。実はオレも当時はもちろん、あれから40年近く経った今でも土曜の夜になるとワクワクしてしまう。とは言っても特別な何かをするわけではない。集会があるわけでもなく、朝まで踊る歳でもない。ちょっと夜更かしするくらいだ。
当時のオレは暴走族に入っていたわけじゃないし、土曜の夜中に出かけるような生活はしていなかった。いたって普通の中学生的な生活だ。だからこそかもしれないが、たまに土曜の夜に友達の家に泊まりにいく日のワクワク感は今でもはっきり覚えている。くだらない話をして無駄に朝まで起きて遊んで、日曜日は使いものにならないという感じだ。
なぜ、土曜の夜があんなにワクワクするのだろう。それはやはり銀蝿一家の曲を聴いていると土曜の夜に憧れるような歌詞が多いからだろう。
もちろん、銀蝿一家を聴かない人だって、「土曜の夜だしちょっと夜更かしするか!」ってな具合に特別感はあるものだ。しかし、銀蝿一家を好きな人の土曜の夜の特別感はそんなもんじゃない。あの異様なワクワク感はたまらないのだ。もちろん当時現役で毎週集会に出かけていた人には敵わないが。
今日はそんな土曜の夜をワクワクさせる曲から3曲ピックアップしてコラムを書いてみたい。
まずは横浜銀蝿の「土曜の夜だぜ‼︎」。これはもうタイトルそのままなんだけど、土曜の夜というだけで特別なワクワクを感じられる。まずは歌詞を見てみよう。
土曜の夜だぜ‼︎
踊りに行こうぜ Highwayジルバ
お前とオレなら ナイス・カップル
軽くローリング ステップふめば
火花チラチラ 土曜の夜だぜ‼︎
とばして行こうぜ Midnight Dance
マブイあの娘は ファンキードレス
軽くウインク アクセルふかしゃ
ハートしびれる夜サ…
Ha‼︎ Ha‼︎ 今宵 Ha‼︎ Ha‼︎ とばす
Ha‼︎ Ha‼︎ Summer night
夜に抱かれて…
Ha‼︎ Ha‼︎ 踊るぜ Ha‼︎ Ha‼︎ 朝まで
だってゴキゲン Saturday nightサ…
とびきりいかした お前とRock'n Roll
浜辺でうかれる Seaside party
ドレスのすそを 波にぬらして…
素足で踊る 土曜の夜だぜ‼︎
きらめく夜空は
ファンタスティックMoon night
笑顔にうつって Sexy face
ゆれる風に この身をまかせ
甘くささやく夜サ…
なんだかよく分からないが、とにかく土曜の夜がキラキラ輝いて見える。軽快なメロディーに乗った歌詞の内容は頭では想像できることだが、実際には経験したことのないことばかりだった。だから想像するしかなかった当時、土曜の夜にはいったい何があるのか?とんでもなく楽しそうじゃないか!土曜の夜の正体に興味は増すばかりだった。
翔くんの書いたこの歌詞を読むかぎり、土曜の夜には車とマブイあの娘とロックンロールが必要なことは分かったが、なんせ当時はまだ中学生だ。車なんて手に入れることは不可能だし、恋人ができる雰囲気もなかった。唯一ロックンロールなら横浜銀蝿が手元にある。ひたすら横浜銀蝿を聴きながら無性にワクワクしていたという、今考えるとなんとも言えない土曜の夜の過ごし方であった。
ちなみにこの曲はシングル「おまえにピタッ‼︎」のB面と、アルバム「ぶっちぎりV」とバージョン違いで存在する。バージョンの違いは単にイントロ、間奏あたま、エンディングに車やバイクのエンジン音が入っているか入っていないか、そしてシングルの方はエンジン音の代わりにギターやベースのフレーズが入っている。それ以外の違いはないと思っていた。しかし今回このコラムを書くにあたってシングルバージョンとアルバムバージョンを何度も聴き比べてみたら、どうもミックスが違うような気がしてきた。アルバムバージョンの方がAメロのバックのアコギのカッティングやBメロの嵐さんの刻むライドシンバルの音などが鮮明に聴こえるような気がするのだ。とはいってもヘッドホンでよーく聴かないと分からない程度の違いではあるが。そして現在オレが聴いている音源は当時のレコードではなく、後にCDで再発されたものなのでただ単にマスタリングの違いなのかもしれない。まぁ細かいことは置いておいて、とにかくこの曲はメロディーも演奏も軽快で、そこに翔くんのリズム感のある歌詞が乗ったファンキーでいかしたナンバーだ。
やはりなんといってもサビの翔くんの男らしい声で「Ha‼︎ Ha‼︎って歌う部分が実にカッコよくて当時ハマっていたのを覚えている。歌詞も翔くんらしい日本語と英語、カタカナをうまく混ぜてリズムに乗せられている。おそらく翔くんが横浜で散々遊んでいた時の実体験を元に膨らました歌詞なんだと思うが、相当楽しい土曜の夜を過ごしていたんだろうなと羨ましく感じる。実際には遊んでいないオレの気持ちをここまで高ぶらせるというのは、やはり翔くんの実体験をそのままパッケージしたような表現が聴くものの心を捉えているからだろう。個人的に翔くんがよく使う「夜に抱かれて」という表現がすごく好きだ。そしてこの曲の翔くんのボーカルは本当に男らしく渋い声で惚れ惚れするほどかっこいい。
続く土曜の夜をワクワクさせる歌はJohnnyのソロから「土曜の夜はHighway Danceで」を挙げたい。この曲はJohnnyのソロシングル第二弾「$百萬BABY」のカップリングだ。
「太陽のツイスト」で共演した歌手の横山みゆきさんの「ねぇねぇ、Johnnyどっか連れてって〜」ってやけに色っぽいお願いにJohnnyはとひとこと「ダメ!」と断るセリフが冒頭に入っている。やはりここはロマンチストで硬派なJohnny。恋人の誘いを断り、ひとり車を飛ばして土曜の夜を満喫している。
土曜の夜はHighway Danceで
「ねぇねぇ Johnnyどっか連れてって!」
「ダメ!」
(Highwayキラメク) 土曜の夜は
(Highway俺達) 男の世界さ
(Highwayとばせば) だれもが主役の
(Highway踊るぜ) Highway Party
(Highway俺らの) 熱いハートは
(Highwayいつでも) スピード違反さ
朝まで踊るぜ
土曜の夜は
いかしたお前のさそいでも
俺の時間を
あげるわけには いかないんだ
だって
Highway Dancerきどりの俺だぜ
今宵は朝まで Machineと二人
夜のHighway
朝がくるまでのダンスホール
おめかしきめた
Machineが集まり踊りだす
ちょいとHighway twist
テールフリフリきめれば
月のほほえみ オイラいただき
土曜の夜は
いくらお前にさそわれても
星までつづく
夜のHighwayに恋した俺
だからわかっておくれよ
今宵はダメだぜ
土曜の夜は Highway Danceさ
(Highwayキラメク) 土曜の夜は
(Highway俺達) 男の世界さ
(Highwayとばせば) だれもが主役の
(Highway踊るぜ) Highway Party
(Highway俺らの) 熱いハートは
(Highwayいつでも) スピード違反さ
朝まで踊るぜ
横浜銀蝿のドキュメンタリー映画「ぶっちぎり」でJohnnyが「普段さ、日曜日から金曜日までは普通の人なわけよ。でも土曜の夜はさ、頑張りゃスターになれんだもん。速けりゃスターなんだもん。歳が若くたって」って語っているんだけれど、この曲はこの言葉どおり速さを追求し土曜の夜にかけるJohnnyの男らしい歌詞となっている。恋人の誘いを断って夜のハイウェイへ出かけていくだなんて相当なクルマ好きだろう。せめて恋人を横に乗せて走ってあげればいいのにと思うが、あえてこういう歌詞を書くところがやはり硬派なJohnnyらしいともいえる。そしてJohnnyはこの土曜の夜の男の世界がたまらなく好きだったことがこの曲でよく伝わっている。
で、結局土曜の夜には車が必須なのだ。やはり車を飛ばしている想像を膨らまして土曜の夜を過ごすしかないのだろうか… でもこの曲を聴いているとたとえ車がなくても土曜の夜がどんなにきらめいているかが容易に想像できるし土曜の夜の特別感を感じずにはいられない。疾走感のある曲調に分かりやすい歌詞。今聞いても心はときめくが当時は本当にこの土曜の夜の男の世界に憧れた。
さて、今日のコラムの最後はこれしかない。紅麗威甦の4枚目のシングル曲「門限破りのSaturday Night」だ。タイトルどおり門限破りをして土曜の夜に女の子と遊びにいくという内容でやはり土曜の夜のワクワク感が満載だ。
当時、我が家にも門限の時間はあったが、割と門限には厳しくはない家庭だった。しかしそこはやはりまだ中学生。門限時間を過ぎてこっそり帰る時のドキドキした感覚は今も覚えている。あの頃は気づかなかったけれど、門限があるからこそ遊びに熱がこもりワクワクできていたのだと思う。
門限破りのSaturday Night
Let's go Let's go 踊りに行こうぜ
Let's go Let's go Saturday Night
Let's go Let's go 迎えに行くから
Let's go Let's go Saturday Night
箱入り娘も 今日かぎりで Run away
Let's go Let's go 飛び出せ in the night
門限破りの Saturday Night Oh Yeh
夜風に誘われ 深夜のデイト Tonight
そうさスリル満点 大人の気分だぜ
俺が白馬に またがって
午前0時に 迎えに行くから
ロマンチックな こんな夜には
お前抱きよせ 愛のささやき
Let's go Let's go 踊りに行こうぜ
Let's go Let's go Saturday Night
横浜 本牧 いつものディスコティック
Let's go Let's go 朝まで all night
お前に会う為 今日まで俺は Oh Yeh
脇道 寄り道 廻り道してた To You
昔の彼女には チョッピリ悪いけど
こんな気持ちは 初めてさ
本気なんだぜ 抱きしめたいほど
ラストダンスは お前と2人
チークタイムに 打ち開け話
Let's go Let's go 踊りに行こうぜ
Let's go Let's go Saturday Night
今夜はお前を 帰したくはないのサ
Let's go Let's go 愛して in the night
Let's go Let's go 踊りに行こうぜ
Let's go Let's go Saturday Night
Let's go Let's go 迎えに行くから
Let's go Let's go Saturday Night
歌詞は嵐さんが書いている。Johnnyの歌詞と比べると内容がやや軽い。「昔の彼女には チョッピリ悪いけど♪」なんてところは実に嵐さんが書きそうな歌詞だ。「この恋は今までとは違う」と毎回恋するたびに思うものだが、そんな若い男子が感じるような気持ちを表した楽しい歌詞である。
曲のはじめのアクセルをふかす音に当時は痺れたし憧れた。まだ無免許だったが初めてスクーターに乗った時にまずこれを最初にやったのを鮮明に覚えている。実に甘酸っぱい思い出だ。スクーターなので迫力のある音にはならなかったが気持ち良かった。飛ばしている時は頭の中ではもちろん「門限破りのSaturday Night」が流れていた。そういった意味でこの曲は土曜の夜のサウンドトラック的な要素が個人的にはあるので、なにか特別な思い入れがある。
普段は哲太より桃太郎派のオレだがこの曲のボーカルに関してはやはり杉本哲太に限る。こういったノリ一発の曲には杉本哲太の声が妙にハマる良い例なんじゃないかと思っている。途中の哲太と桃太郎の掛け合いの部分は個人的にポイントがかなり高い。
前述の「土曜の夜だぜ‼︎」と「土曜の夜はHighway Danceで」に比べると車やバイクを飛ばすという要素よりも女の子とのラブソング色が強いが「門限破り」というワードが入ることで、思春期のスリル満点なワクワク感を増長させている。この辺の嵐さんの言葉のチョイスは流石だ。
以上、今日のコラムでは土曜の夜をワクワクさせる3曲について書いてみた。改めてこうやって聴いてみると土曜の夜には車かバイクと女の子がマスト。プラスして「踊る」という要素が必ず入っている。当時だとディスコで踊る、ツイストを踊るという意味がもちろんあるのだろうが、もしかしたら車やバイクで急カーブをぶっ飛ばしたりすることを「踊る」という表現で表しているのかもしれない。おそらくそういうことなんだと思う。とにかく銀蝿一家の歌詞には「踊る」「ダンス」というワードが数多く入っている。
当時は毎週深夜にやっていた銀蝿一家のラジオを部屋で聴くことがワクワクした土曜の夜の過ごし方だった。夜中の深い時間に「こんばんよー!」なんて言葉が生まれて、ラジオに向かって「こんばんよー!」って言っていた中学生の青春時代。銀蝿一家とは関係ないが、テレビでは「オールナイトフジ」とか楽しい深夜番組をよくやっていたので、そういう意味でも土曜の夜は特別だった。車やバイクに乗るにはまだ早い年齢だったので、銀蝿一家に出てくるような歌詞の世界を体感することは出来なかったが、それでもやっぱりあの土曜の夜のワクワクする感情は忘れられない。あの頃から過ごし方は変わってしまったが、今でも土曜の夜は特別なのだ。そうさ、ゴキゲンSaturday nightは永遠なのサ。
it's only Rock'n Roll