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BLACK SATANは桃太郎である

かなり大胆に言い切ってしまうが、BLACK SATANの魅力は桃太郎そのものである。

ドラムなのかボーカルなのかはっきりしなかった紅麗威甦からの呪縛が取れたかのように桃太郎はBLACK SATANで本格的にボーカリストとして、激情型ハスキーセットでボーカリストとしての存在感を発揮しまくることになる。

正直オレはBLACK SATANについては詳しくない。紅麗威甦が活動停止して、メンバーが新たに組んだバンドがBLACK SATANだという認識だ。彼等が銀蝿一家だったのかどうかもすら分からない。BLACK SATANから参加する田口オサムや麻生仁がどうやって桃太郎、Leer、mitzと出会ったのかも分からない。オレの記憶が正しければ紅麗威甦のラジオ番組に田口オサムは出演していたような気がする。そう考えると、田口オサムあたりは銀蝿一家の次期デビュー候補の練習生か何かだったのだろうか?誰か知ってる人教えて欲しい。なんかモヤモヤする。

とにかくBLACK SATANには情報がなさすぎる。デビューした頃オレも高校生になって銀蝿一家とは違う海外のハードロックとか聞き始めていたから、BLACK SATANのレコードは持ってたけど、ライブに行くとかインタビューを読み漁るというファンとしての行為をサボり気味だった感は否めない。

このバンドの可哀想なところは、この辺りからは銀蝿一家の後ろ盾は無くなっていただろうとうこと。逆に紅麗威甦と比べられやりづらい部分もあったかもしれない。
バンド的にはあまり恵まれてない面が多かったかもしれないが、BLACK SATANはとんでもなくかっこいいバンドだったのは間違いない。あんまり売れてるイメージはないけど、デビュー当時は元紅麗威甦のメンバーの新バンドとして露出はあった気がする。和というか歌舞伎のメイクが印象的。あんなのいらなかったとは思うけど。

紅麗威甦でのボーカル担当はっきりしない問題からすっかり解放された桃太郎。完全にボーカリストとしてやりたい放題で才能を爆発させていたイメージだ。以前も書いたが桃くんは激情型ハスキーボーカルの天才だ。その才能が一気に開花したのが、このBLACK SATANでの活動の時だったであろう。

BLACK SATANの作詞作曲クレジットを見てみると、ちょいちょいメンバーが書いてることもあるが、基本外部の人に曲を書いてもらっていたようだ。ジョニー大倉の作曲が多いのことが目につく。

BLACK SATANには言いたいかことがいくつかある。あの歌舞伎調のようなメイクはいらない。あと歌詞が絶望的にダサいのが気になる。他の銀蝿一家がダサくなかったかというと確かにダサい部分はあったけど、BLACK SATANのダサさは異常だ。そして暗く前向きな部分が少ない。
ただ、曲はいい。だから聞いてられる。正直言ってギターがどうとかベースがどうとか言うこともない。可もなく不可もなくということだ。

じゃあ、曲以外何かいいことあるのかよ?と思う人が多くいると思うが、冒頭にも言った通り、BLACK SATANは桃太郎なんである。
申し訳ないが今日のコラムは他のメンバーのファン心理とかを置いてきぼりにしてしまうだろう。

桃太郎がいなきゃBLACK SATANはないのである。じゃあ今ボーカルが森一馬のBLACK SATANはどうなるよ?と声が聞こえてきそうだが、それはもうオレの中ではBLACK SATANではない。申し訳ないがそういうことなんである。 


 君の好きだった カクテルを
 たまには一人で 飲むのもいいさ
 初めて踊った あのディスコ
 ネオンライト浴び 行ってみようか

 けだるい気持ちで 煙草をふかし
 今日で彼女を 忘れようと
 誰でもいいから 今夜の相手を
 探して見つけた Disco Ange
l


やさぐれている。暗い。健康的でない。
その後の歌詞には真夜中の黒い悪魔に…
って聖飢魔IIじゃないんだから…

銀蝿一家に多かったもっと甘酸っぱいものをくれよと思ったのはオレだけじゃないはず。こんな感じで歌詞がダサいんで、あまり深追いはしてない。ただし、桃くんのボーカルが特に良かったからアルバムも好きだった。

紅麗威甦時代に比べて、BLACK SATANでの桃くんのボーカルはかなりクセが強くなった。ハスキーな声がさらにハスキーになっている印象。しゃくり上げる感じと謎のビブラートのセットが炸裂していて、もっとも桃くんらしいボーカルをしていたのはこの頃だ。だから、この時は歌詞の意味は考えないようにしていた。曲はポップだし、なにより桃くんの声が最高なわけだから、それ以外の気になる部分は目をつむって聞いたものだ。だから、BLACK SATAN最高!となったことはないが、桃太郎最高!と思う瞬間は何度もあった。それでいい。そういうバンドなのだ。


 君をなくしたら どんな哀しみも
 色あせるほど 悲しい
 10月のアニー はじめて気づいた
 君は最後の恋さ 


「10月のアニー」なんかは曲はいいし桃太郎の歌がすごく丁寧で歌いこむスタイルが抜群の名曲だ。最後の恋と歌っているから失恋したわけではないんだと思うけど前向きさが足りない。銀蝿一家時代にはあれだけ失恋も笑いに転換されてきたものを聞いて育ってきてるから、暗いだけなのはどう切り抜けていいか分からないのだ。いちいち曲の中にほっとする部分を探している自分に疲れる。


 もうこれ以上 優しさに背中向けて
 生きられないのさ 寂しすぎるよ

 命尽きるまで(抱いてやるぜ)
 愛をころがすのは 今だけさ
 胸の傷痕で (決めるぜ)
 愛を研ぎ澄まして
 Keep on Rollin` Silly Love


オレの求める方向性とは違う方向へ動き出している。オレはもっと単純で笑える楽しいロックンロールが欲しいだけなのである。
残念ながらもうこの時点でバンドがどこへ向かっていけばいいのか分からなくなんているようだ。このバンドにも銀蝿一家の根底にあったロックンロールに乗せやすい歌詞が乗ったとにかく明るくがむしゃらにという単純明快なスタイルを出して欲しかった。
 
にしても、「リーゼントやめた夜」は桃くんのボーカルが全面に出てる分すごく心に残る名曲となっている。この曲では桃くんのしゃくり上げる歌唱法と謎のビブラートのセットが健在でハスキーな激情型スタイルだ。桃太郎に求めるのはこれなんだと痛感させられる。しかし、これはバンドなのである。ボーカル一人が良くてもダメなのだ。


 つまらない大人に なりたくないぜ 
 Rock'n Roll Night
 あきらめないで 夢を抱いていろよ
 寂しくないぜ Baby 巡り合おうぜ
 Rock'n Roll Night
 踊り続けて愛と 分かるまで
 キュートな恋を Dancin
 星を数えて Rock'n Roll Night
 みんなやりきれなさを 陽気にsing out
 寂しくないぜ Baby 巡り合おうぜ
 Rock'n Roll Night
 踊り続けて愛とわかるまで
 寂しくないぜBaby…


BLACK SATANでは一番好きな曲である。「Rock'n Roll Night」だ。こういう前向きな曲をBLACK SATANにも望んでいるのだけど。この曲なんかは完全にボーカルが曲を引っ張っている。これでいいのだ。しかしここから何年かして桃くんはBLACK SATANを脱退している。その桃くん抜きのBLACK SATANは聞いていない。そういうことだ。BLACK SATANは桃太郎だったのだから。桃太郎のボーカルを生かすための曲作り、バンド作りをしてくれるなら、そんなBLACK SATANだったら今でも熱く語れるのであろう。そんなことを言って現在のBLACK SATANに怒られるかな…森一馬よ頼むから掌返しをさせてくれ。

Rock'n Roll Night

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