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時代を超える 男の勲章

少し大袈裟に言えば「男の勲章」はいつの時代も必要とされている歌だ。今までも、そしてこれからも。特に男にとっては時代がいつになっても心に響く歌なのだ。

今日のコラムは「男の勲章」一曲に絞って書いてみようと思う。ここまでいくつもコラムを書いてきたが、一曲に限定して書くことはほとんどない。いったいどういう流れで進んでいって最後どう着地するのか、自分でもワクワクしながら書いてみる。

イントロなくいきなりサビから始まるこの曲。「つっぱることが男の〜」というあのフレーズを耳にしたことがないという日本人はなかなか存在しないのではないか?と思うほど、この曲の世間への浸透度はとんでもなく高い。

1982年に嶋大輔の2枚目のシングルとしてリリースされた原曲は売れ枚数37万枚の大ヒットを記録している。あれから横浜銀蝿をはじめとして沢山の人にカバーされ、2005年には続編として「大人の勲章」を本人が歌っている。また様々なバラエティ番組や高校野球の応援歌としても有名。またドラマ「今日から俺は!!」では主題歌にもなっている。リリースされてから38年にもなるのに、今の若者でもこの曲を知っているのだ。これはなかなか凄いことだと思う。38年間売れ続けたわけでもないし、国民的な歌というわけでもない。けれど誰もが一度は耳にしたことがある。これはいつの時代でもこの歌が評価され続けている証なのだ。

Johnny作詞作曲のこの歌。Johnny本人が自分のソロとして歌うつもりで作ったとのこと。確かにJohnnyらしいストーリー性のある歌詞だ。大輔には申し訳ないが、Johnnyが歌う「男の勲章」が聞きたいと思うのはオレだけではないはず。それにしても、本来はJohnnyが歌うはずだったこの歌を譲ってもらった嶋大輔の幸運さ。やはり大輔は何か持っている男なのかもしれない。この歌を歌ったおかげでどれだけ仕事が入ったか。今でも仕事があるんだから、大輔はJohnnyにもこの歌にも一生感謝するしかない。


  つっぱることが男の
  たったひとつの勲章だって
  この胸に信じて 生きてきた
  


曲の冒頭からこのキラーフレーズ。男は誰もがひとりぼっちだ。少々つっぱってなきゃ生きていけない。それでいいんだ。それでいいと信じるしかないんだ。それが男というもんだ。そんな男へのメッセージのようなフレーズでこの歌はスタートする。このフレーズだけでこの曲がどんなことを歌っているのか分かるくらいにストレートで分かりやすくていい。そしてこのフレーズが38年もの間、いろんな男達の耳に残り背中を押し続けたのだ。


  泣きたくなるような
  つらい時もあるけど
  いつも俺たち がんばってきた

  時の重さに流されそうに
  なった時でも
  歯をくいしばり たえてきた


部活の猛練習に耐えてきた奴、クラスでの虐めに耐えてきた奴、厳しい先生や親の小言にも我慢してきた奴、学校の成績や仕事の成績に振り回されながらも頑張ってきた奴、社会の理不尽さに耐えてきた奴、男はどんな場面でも我慢をして耐え抜かないといけないシーンがあるものだ。その大小は人にもよるが誰でもそんな経験はしている。してない奴なんていない。顔で笑って心で泣いてってやつだ。そういう経験をしている全ての男にこの歌は響いてくる。

誰の胸にも響くということにこの歌の値打ちがある。この歌を書いたJohnnyはいったい誰に向けて書いたのだろう。きっと若い世代の落ちこぼれに書いたと推測される。でもこれは若い世代に限った話じゃない。大人になってもこんなシーンはいくらでもあるのだ。男はいつでも歯を食いしばって生きているのだ。


  ガキのころ 路地裏で見た 
  夜空にキラめいた
  流れる星を見て 
  誓った思いを 忘れちゃいないぜ


不安を煽るような夜に、自分の将来に対して夢を見たり反骨心を燃えたぎらせる経験は誰にでもあるだろう。実際にはやる事やらない奴には思いは叶わない事が多いのだが、まだやる事やっていない状態でも、オレはやる時はやるからと強がってみたり、そしていつか成し遂げてみせるぜ!と誓うのである。青くてとんがった世代には特にありそうなエピソード部分だ。


  氷のように冷たい 
  世間の壁が 
  いつもさえぎる
  俺達の前を

  胸にえがいた この夢は
  ハンパじゃないから
  かじかむこの手 にぎりしめ


ギターソロを挟んで出てくるこの部分は、青くてとんがった世代だけに限らず、社会の荒波に揉まれているような大人も含め、多くの男に向けての思いを歌っている。夢を諦めたくなるような冷たく辛いことを前に人は無力だ。しかし先程出たような路地裏で夜空を見ながら誓った夢を実現するまでは諦めたくない。葛藤しながらも前を見据えてチャレンジを進めてやるという思いを強く表現している。実はこの部分が、この歌を若者だけでなく全ての人へ向けたメッセージソングとして成立させている。


  ガキのころ 赤とんぼ 
  追いかけてた時の
  燃えてた 瞳は 
  今でも俺達 忘れちゃいないぜ


もう一度、大人の社会に揉まれて前に進めなくなりそうな部分に若い頃の思いを思い出し、この思いを貫徹するべく奮闘することを宣言している。何があっても諦めない。そんな男の負けない気持ちが青くとんがった世代の時に芽生えた思いをそのままにこの先も闘い続けていく。
やはりこれは若い世代に向けて作られたようである。そして、若い世代の時の「やってやるぜ!」という気持ちは、きっと大人になってから必ずチカラになるはずだよと教えてくれているような気がしている。

このままサビのキラーフレーズの繰り返しで曲は終わるが最後が実にJohnnyらしい言葉の使い方だ。


  つっぱることが男の
  たったひとつの勲章だって
  この胸に信じて 生きてきた 

  つっぱることが男の
  たったひとつの勲章だって
  この胸に信じて 生きて行く

  つっぱることが男の
  たったひとつの勲章だって
  この胸に信じて 生きて行く


三回繰り返すこのサビのキラーフレーズ。これまで「生きてきた」と奮闘してきた自分を表現してきたが、最後二回は「生きていく」とまたこの先の自分の奮闘を誓ってストーリーを締めている。

この男の人生の結果は描かれていないが、きっと若い頃の思いを忘れずに闘っていくのだろう。オレもそんな男になりたいと憧れ、その思いを忘れずに生きていく。このストーリーに結果は関係ない。そこへいくまでの過程が描かれているのだ。男の人生は結果が全てじゃない。大切なのは最初に抱いた夢みたいなやつと、それを実現させるべき努力の過程。諦めない気持ち。

こう考えてみると、この歌が高校野球の応援歌として人気がある事が非常によく分かる。甲子園を目指す球児にとって、甲子園に行けたという結果も大事だが、そこを目指す努力の過程が大事なのだ。その努力の過程こそが男の勲章なのだ。

もう一度言うが、この歌ではまだ結果は出ていない。何も成し遂げてはいないのだ。若い頃に抱いた思いを忘れずに、夢を実現するべくこれからも闘い続けて生きていくという宣言をしている歌なのだ。

おそらくJohnnyはそんなテーマでこの歌を作ったのだろう。これから闘い続ける全ての人へ向けたメッセージ。闘い続ける人はいつの時代も存在する。その夢や闘い方は変われど、闘い続ける人が存在するのはいつの時代も同じ。だからこの歌がいつの時代にも、どんな世代にも響くのだ。

このコラムでは、この歌が響くのはあたかも男のみという言い方をしてきたが、むろんそれは男に限った話ではない。奥様や恋人、最愛の人への応援歌という意味合いも含めて、これは全ての人へのメッセージなのだ。

ツッパリ・不良を売りにデビューして「土曜の夜にバイク飛ばすぜ!」といった内容の歌を作ってきた横浜銀蝿。今回の「男の勲章」はJohnnyだが、Johnnyに限らず横浜銀蝿は活動の中期となるこの頃になると、全ての人へのメッセージとして「自分の信念を曲げずに頑張り続けること。それが俺たちの言っている真のツッパリ」という銀蝿一家共通の考え方の発信へとシフトしていっていた。

先程、こんな素晴らしい歌を譲ってもらった嶋大輔は一生感謝するしかないと書いたが、これはたまたま大輔がJohnnyの思いを歌にしてくれただけで、もっと大きなこととして、この歌を聞くことで勇気をもらったオレを含め全ての人がこういった曲に出会えたことに感謝すべきなのではないだろうか。

今までも、そしてこれからも。恥ずかしくない生き方をしていきたいと改めて思わされた。そうやって生きていくこと。これからの生き方そのもの。それが男の勲章だ。

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