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今更だが紅麗威の桃太郎感がとんでもない

紅麗威甦や銀蝿一家のことを散々語っておきながらも、恥ずかしながらつい最近紅麗威の音源を初めて聞いた。あれだけ桃太郎のことが好きだと語っていたのに紅麗威の音源を聞いていなかったというのは本当に恥ずかしいし完全なる失態だ。

今回購入したのはアルバム「俺達最後のロックンローラー」、そしてアルバム「1965」から「プルトップに指をかけ〜Growing Up! Day By Day〜」と「四十の幻想」だ。残念ながら「1965」は枚数限定発売だったようでどこにも売っていない。なので紅麗威に関しては半人前のような状態で語るのがおこがましい。しかし、これは銀蝿一家考察コラム:青くてごめんだ。青くてなにが悪い?の精神で語ってみる。

まずは「俺達最後のロックンローラー」だが、これマジでいいんですけど。なにがいいって全曲桃太郎がボーカルなのだ。紅麗威のボーカルは桃太郎なんだから全曲桃太郎が歌ってるのは当たり前だろうというツッコミがありそうだけど、正直こんなにいいと思っていなかったのだ。全曲セルフカバーということで紅麗威甦でお馴染みの曲が並んでいるのだが、当時は杉本哲太が歌っていた曲を桃太郎が歌っている。それだけで胸は熱くなるわけだが、プラス内容がいい。

紅麗威甦のボーカル問題は前に書いた。結局ボーカルは哲太なのか、桃くんなのか、はっきりしない問題だ。




個人的には迷うことなく、哲太より桃くん派なんで、全曲桃くんが歌っているという紅麗威は追いかけるべきバンドだったのだ。それを今頃になって気づくとはやはり恥ずかしいかぎりだ。

若干アレンジされたバージョンになっている「遅すぎたシンデレラ」から始まるこのアルバム。もうこれだけで紅麗威最高なんですけど。哲太ボーカルのバージョンで38年聞いてきたこの歌が、突然桃くんの歌になって聞かされてもまったく違和感がない。ちょっと大人になったのか、桃くんの歌は勢いに任せて歌うことなく凄く丁寧な歌い方が印象的だ。その丁寧な歌い方によって2曲目の「GOOD-BYE LONELY」もかなり温かい歌に変わっている。この温かさは勢い一発の当時の紅麗威甦とはまた違う魅力だ。もうこの2曲を聞いた時点で「最高じゃん!」と声が漏れていたのは言うまでもない。


  サヨナラ いかすロンリーガール
  最後の夜だから 泣くなよ
  滲んだお前 思い出の恋
  ちょっとセンチな俺さ 
 


もうこの辺の桃くんの優しい声にどうしていいか分からないくらいに感動している自分がいる。哲太じゃなくて桃くんの歌で聞きたいと思っていた密かな思いが実現した瞬間なのだから、少しくらい泣かせてくれよ。桃くんのボーカルは当時から表現力があったと思っているが、さらに表現力が増してるじゃないか。

「尻取りRock'n Roll(桃くん編)を挟んで、「好きさ好きさ好きさ好きさ好きさ」だ。哲太の時は無理にツッパっていたおかげで勢いもあったけれど、桃くんの丁寧な歌い方が意外とハマっていて、マイルドな「好きさ」になっていることに驚く。この曲はやっぱり作者のTAKUのコーラスありきで考えてしまうが、このバージョンではリーとミッツがコーラスを頑張っていて良い。元々コーラスの上手い二人だが、ファニーなTAKUとはまた違う魅力があって堂々と成立させている。紅麗威甦の曲の中で三本の指に入るほど好きなこの曲を桃くんが歌っているだけでこのアルバムの価値は高まっている。最高だ。

「ぶりっこRock'n Roll」は、歌も演奏も当時よりものびのびとやれてる印象。哲太のボーカルと比べるとコミックソング的な雰囲気が少し薄れている気はするが、この曲が最強のコミックソングのひとつだということを改めて感じることができる。ここでもやはり桃くんの歌詞を丁寧に歌いあげるスタイルは健在だ。それにしても、「Let's Dancin' ぶりっこDance!」からの間奏の爽快感はたまらない。

さて、ここからはライブ音源。全曲スタジオレコーディングの曲で聞きたかったと思う反面、ライブレコーディングの曲達を聴くと、これはこれで全然ありなのだ。このライブ音源がまた予想以上に良かったことがこのアルバムの出来の良さを決定づけている。まずは「Hey!彼女」。ライブということもあって、桃くんの歌は少々荒さがありイメージ的にはブラックサタンの時に近い。


  このままだまって くらしていても
  オレたち いつか
  大人になっちまうのさ 
  同じ青春(とき)を 
  すごしてゆくなら 
  ハッピーな事が多い方がいい


この辺りの桃くんの激情型ボーカルがハマっている。紅麗威甦時代のこの曲は勢いだけで作り上げた印象だが、どっしりとした安定感のある紅麗威のバージョンもなかなか良いと思う。相変わらずミッツのハモリのコーラスがまたかなりいけている。

「翔んでるセブンティーン」は、このアルバムの中で桃くんの歌が一番ハマっている曲だ。少々の音程ミスやギターのミスタッチはあるものの、ライブの疾走感を考えたら気にならない程度のミスだ。これをライブで実際に聞いたら興奮すること間違いなしだろう。

お待ちかねの「時代を越えて」は、少し演奏が荒すぎる面もあるものの、これは桃くんのボーカルの安定感でカバーされている。まさに歌が引っ張っている印象だ。歌詞を大事に伝えようと歌う桃くんのボーカルがとても好感が持てる。


  いつの時代も
  大人たちは
  自分のものさしで
  オレたちをしばりつけ
  わかっちゃくれない


紅麗威甦当時はエッジが効いていたこの歌詞だが、実際大人になって歌っても非常に説得力があるのが嬉しかった。これは歌詞を丁寧に伝えようと歌う桃くんのボーカルの力がかなり大きい。もうそれに尽きるのかもしれない。そのくらいこのバンドにおいて桃太郎のボーカルは重要だ。

「時代を越えて」と共にこのアルバムのメインと言える選曲となる「YUKIKO」。こちらはあの頃と変わらない桃くんの激情型な歌い方がたまらない。そしてリーのハモリのコーラスもあの頃と同じで泣きそうになる。この曲に限っては、当時の紅麗威甦時代から現在もまったく変わらない。色褪せない魅力が詰まっている名曲なのだ。

ラストは「俺達最後のRock'n Roller〜Rock'n Roll我命〜」。実際のライブでも最後に演奏されているようだ。ラストスパートという感じで歌も演奏も力が入っているのがわかる。後半、オーディエンスと一緒に歌う部分があるのだが、残念ながらオーディエンスの声があまり聞こえないのが残念。あまり観客がいないのかな?紅麗威が次いつライブをやってくれるかは分からないが、ライブが決まったら絶対に行く。紅麗威とのコール&レスポンスをやりにどこまでも行きたい。

このアルバムは、前半がスタジオレコーディング、後半がライブレコーディングされたセルフカバー集となっている。全曲紅麗威甦として38年くらい前から聞いて愛着のある曲ばかりだが、今こうやってセルフカバーを聞いても全く違和感なく聞けて素晴らしかった。こういうのって、以前の思い入れが強すぎてセルフカバーされてもあまりピンとこないことが多いが、このアルバムにはそういったことが一切ない。またアレンジを大幅に変えてまるで新曲のように演奏するわけでもない。要するにこれは紅麗威甦時代から曲のレベルが高かったことを物語っているんだと感じる。そして哲太ではなく、桃太郎が歌っているということが最大のポイントであり、良く聞こえる最大の要因だと考える。

最後にアルバムでは購入できず、単曲の配信で聞けた「プルトップに指をかけ〜Growing Up! Day By Day〜」と「四十の幻想」2曲について。どちらの曲も出来としては予想以上のものだった。桃くんのボーカルはもちろん、コーラスや演奏もいい。ミッツの唸るベースがなかなかいい。

特に「プルトップに指をかけ〜Growing Up! Day By Day〜」はめちゃくちゃメロディ良くないか?かなりのナイスソングだと思う。これはぜひとも氣志團にカバーしていただきたい。桃くんには申し訳ないが氣志團の翔やんが歌ったら、普通にシングルリリースできるような曲だと思う。翔やんもこの曲聞いたら絶対に反応してくれそうな氣志團ぽさが溢れる名曲なのである。もしかしてライブなどで実はもう既にカバーしたたりするのか?そのくらい氣志團に合っている曲だ。

今回のコラムは、紅麗威の音源についての感想をひたすら語るだけの内容になってしまったが、とにかくこの音源の出来が良かったので語ってみた。これを聞いてみて思ったのは、やはり紅麗威甦の曲は素晴らしい。そして桃太郎のボーカルは本当に最高だ。リーやミッツには申し訳ないが、桃太郎の存在感が圧倒的だ。たまに「杉本哲太がいない時点で紅麗威甦じゃない」という意見を見かけるがそんなことは絶対ない。桃太郎がいれば紅麗威甦も紅麗威も成り立つ。紅麗威の桃太郎感はとんでもないのだ。


it's only Rock'n Roll

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