だからいつものRock'n Rollがある日常
ロックンロールとはなんぞや?
ロックンロールについて当時は何も知らなかった。まだプレスリーやチャックベリーあたりの有名どころさえも知らなかった。スリーコードがどうたらとかリズムがどうたらなんて分かっていなかったし、ロックンロールが生まれた歴史的背景なんてものにも興味はなかった。ダウンタウンブギウギバンドやキャロルは名前は聞いたことがあったが曲は知らなかった。
そう、あの時は横浜銀蝿の曲だけがオレの知っているロックンロールだったんだ。そもそもロックンロールという言葉は横浜銀蝿と出会って知った。翔くんが歌えばそれはロックンロールになる。嵐さんがドラムを叩けばそれもロックンロール。Johnnyのギターが鳴ればそれもロックンロール。TAKUのベースが唸ればそれもロックンロール。それ以外は何がロックンロールで、何がロックンロールじゃないのか分かるわけがなかった。
横浜銀蝿は、出会ってそのまま一気にハマったもんだから、バンドに関する事前の情報もなく、とにかく曲をひたすら聴き続けたため、寝ている時間を除くとほぼ一日中横浜銀蝿が流れていた。授業中もウォークマンで聴いてたし、放送部員を唆してお昼の放送は横浜銀蝿ばかりになって学校内で少し問題となるほどだった。こんな調子だからもしかしたら夢の中でも横浜銀蝿を聴いていたのかもしれない。それは常に身近にロックンロールがある日常だったということ。まさに「だからいつものRock'n Roll」状態だ。
前にも書いたが、オレは「ツッパリHigh School Rock'n Roll(登校編)」の後最初に熱心に聞いたのはアルバム「ぶっちぎりII」からである。「だからいつものRock'n Roll」は「ぶっちぎりII」の最初の曲だ。当然アルバムを聴くたびに「だからいつものRock'n Roll」から聴くことになる。いつも横浜銀蝿を聴いていたオレにとっては「だからいつものRock'n Roll」から毎日の生活が始まっていたのだ。だから、オレにとってロックンロールとは横浜銀蝿そのものだった。
俺とお前のRock’n Roll
口ずさんでる every time
Kissの後は take your home
そしてお前は smile on me
だからいつものRock’n Roll,
Rock’n Roll time all together
お前の好きな Rock’n Roll
うたってやるよ every time
俺のマシンで take your home
涙をふいて smile on me
だからいつものRock’n Roll,
Rock’n Roll time all together
お前だけの Rock’n Roll
聞いているのさ every time
いつもの道を take your home
ふり向きざまに smile on me
だからいつものRock’n Roll,
Rock’n Roll time all together
だからいつものRock’n Roll
だからいつものRock’n Roll…
実にシンプルな歌詞だ。
簡単な言葉で日常のロックンロールを歌っている。どう考えてもこの歌詞を書いたのは翔くんだ。一行完結、行の後半は誰でも分かるような簡単な英語で攻めるというパターンがひたすら続く。こういう粋な遊び心がある歌詞が書けるのは翔くんだけだ。羅列した歌詞のリズムへの乗せ方が素晴らしすぎる。曲の後半は「だからいつものRock’n Roll」というフレーズをただひたすらに連呼するだけだ。この曲で言いたいことは実にシンプルで、ロックンロールがある日常だ。難しいことはなにひとつなく、ロックンロールがなんぞやなんて知らなくても楽しめる曲なのである。
シンプルなのは歌詞だけじゃない。
TAKU作曲のこの曲はひたすらAメロを歌い続けるだけという曲構成で、これはデビューアルバムに入っていた「そこのけRock'n Roll」の進化版のような痛快な作りだ。歌詞もメロディーもシンプルそのものだから自然とすんなりと体に馴染む。そしてevery time/take your home/smile on meとTAKUのハモりのコーラスが疾走感を増すことに一役買っていてかなり重要な存在となっている。1回目の間奏以降はフルで翔くんの歌にハモっていて最高だ。このコーラスがなかったらおそらく全く違う印象になるのではないだろうか。この曲に限らないがやはり横浜銀蝿にTAKUの存在はかなり大きい。
この曲は、アルバムバージョンとライブバージョンでかなり雰囲気が変わる。特にイントロなどは全くの別物に感じるほど雰囲気が違う。アルバム音源だとピアノやサックスといった楽器が入ることで若干大人な要素を含んだ曲に仕上がってる。この大人の魅力が、子供だったオレの心に「憧れ」というスパイスを効かせてとびきりいかしたナンバーとなっているのだ。横浜銀蝿の曲は基本的に間奏のギターソロは短めだが、この曲の間奏はギターソロ+サックスソロで倍の長さになる。そしてそれが2回ある。そして間奏のTAKUのベースラインのカッコ良さも忘れてはいけない。
ライブでのこの曲は、ピアノやサックスはなくなって4人の歌と演奏だけでアグレッシブになる。アルバムバージョンでの間奏のギターソロがライブではそのままイントロで演奏されることで冒頭からかなり印象が変わる。このイントロ、間奏で披露されるJohnnyのリードギターのフレーズがたまらなく好きだ。ライブではテンポも早くなりベースのフレーズも動きまくってかなりアッパーな曲となる。
ライブバージョンで好きなのは♪Rock’n Roll time カモン!ヘイ!ヘイ!ヘイ!all together♪という部分のJohnnyが合いの手的に入れるカモン!ヘイ!ヘイ!ヘイ!の男臭い声だ。
去年、川崎のクラブチッタで初体感した横浜銀蝿のライブでのこのカモン!ヘイ!ヘイ!ヘイ!を拳を挙げて一緒に歌えた時は全身の毛穴が開くくらい高揚した気分だった。
そしてライブバージョンではやはり間奏の三三七拍子がポイントであろう。三三七拍子でのJohnnyの男臭いソレッ!っていう掛け声もまた好きだ。この三三七拍子のおかげで間奏がかなり長くなるわけだがこの三三七拍子が終わり、Johnnyのリードギターでまた曲に戻るあたりが抜群にカッコよくてしびれる。
解散ライブをレコードにした「散る。〜ぶっちぎりファイナルカウント10 」でこの曲を聴くと、この三三七拍子の途中で翔くんが大坂さんへの感謝を述べるところが心に沁みる。大坂さんとは横浜銀蝿を見つけ出しデビューさせてくれた事務所の社長さんだ。大坂さんがいなかったら横浜銀蝿とオレたちは出会えていなかったと思うと本当に大坂さんには感謝しかない。
ちなみに先述の川崎のクラブチッタでのライブでは三三七拍子ではなく三三五拍子になっていた。ピッピッピ、ピッピッピッ、ピッピッピッピッピッ、わっしょーい。あれは楽しかったな。早く横浜銀蝿40thのライブでまたあの三三五拍子をやりたい。ちなみにクラブチッタでのこのライブで「だからいつものRock'n Roll」は本編最後に演奏されていた。
今日は「だからいつものRock'n Roll」にスポットを当てて書いてみたわけだが、この曲が横浜銀蝿にとっての代表曲というわけではない。いや、もちろん代表曲のひとつではあるのだけれど、やはり「ツッパリHigh School Rock'n Roll」シリーズや「ぶっちぎりRock'n Roll」「銀ばるRock'n Roll」などと比べたら一番の代表曲ではない。
特別言いたいことがあるわけではないが、いつもロックンロールがそばにいるという日常をひたすら歌うロックンロール。ある意味メンバーの原点とも言えるようなこの曲。そんなロックンロールと出会い、毎日がロックンロールのある生活となったあの頃を思うとやはりこの「だからいつものRock'n Roll」は個人的には間違いなく横浜銀蝿の代表曲なのだ。あの時に銀蝿のロックンロールと出会っていなかったら…おそらく全く違う人生になっていたんじゃないかとゾッとする。大坂さんと出会って横浜銀蝿が羽ばたいたように、オレも横浜銀蝿と出会えて本当に記憶に残る大切な思春期を過ごすことができたのだから。
ロックンロールとはなんぞや?ということがあの頃よりは少し分かっているつもりの今聴いてもこの「だからいつものRock'n Roll」はやはりゴキゲンで偉大な曲だと思っている。そして、頭の中でこの曲が流れる時はもれなくJohnnyのカモン!ヘイ!ヘイ!ヘイ!のフレーズがついてくる最高の日常はこれからも続いていく。
it's only Rock'n Roll
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?