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【横浜市EBPM座談会③】データ利活用について横浜市職員×研究者×ビジネスパーソンが熱く語る会。

皆様こんにちは。
横浜市政策局データ・ストラテジー担当(広報チーム)です。

横浜市ではデータ利活用を取り入れた政策形成を推進する取組を進めています。本市の取組をご紹介するとともに、データ利活用によって目指す方向性についてみなさんと考えるきっかけになればと思い、noteを立ち上げました。さまざまな関係者にお話を伺いながらデータ利活用の将来像について深堀りしていきたいとおもいます。

3回に分けてお届けしている今回の座談会開催レポートですが、第1回では「官民でのオープンデータ利活用の実際(リンク)」について、第2回では「子育て分野のEBPM推進におけるデータ利活用の取り組み(リンク)」についての議論の様子をお届けしました。

最終回となる今回は「データを基軸とした産官学連携における中間人材の可能性と将来像」に関する議論内容をご紹介したいと思います。


「第3回 データを基軸とした産官学連携における中間人材の可能性と将来像」


今までの議論を通じ産官学でデータを活用することで、更なる行政サービスの改善が進む可能性を抱きました。ただし、セクターごとの役割や事業の進め方などを変えていく必要性も見えてきました。それらを解消していく観点で議論は進みました。その中で各論は、人材・マネジメント・コミュニケーションを取る場づくりに発展しました。

1 産官学連携のハブとしての中間人材

第1回と第2回の議論でも共通で出てきた話題として、産官学で連携してEBPMを進めていくためには、「お互いの異なる立場を理解し、ゴールと進め方をデザインする必要性」がありました。第3回では、それらの役割を担う中間人材に関するディスカッションから始めました。

EBPM推進における中間人材の可能性について研究している、成育こどもシンクタンクの千先先生にお話を伺いました。


成育こどもシンクタンク 千先先生

千先先生:
「医療専門職として、2年間省庁で勤務した経験もあり、
立場によってエビデンスやEBPMの定義が異なること・EBPMサイクル全体像が把握できていないことが、産官学連携によるEBPM推進の阻害要因になっていると強く感じています。研究者は課題把握・効果検証、行政は政策立案がそれぞれの主軸になりますが、全体を俯瞰し、双方の視点を持つ人材が重要だと考えています。

アメリカでは『リボルビングドア』という考え方が浸透しています。政府とシンクタンクなど民間企業との間で人材が流動的に行き来する仕組みが二大政党制に伴って機能しているため、双方の視点を有している人材が継続的に生み出されます。

日本ではそういった仕組みがシステム化されていません。アメリカと日本では政治制度等の前提が異なりますが、リボルビングドアのような機能を有する人材活用の仕組みを導入することで、産官学連携の推進へ繋がると考え、そうした研究も行っています。(研究引用:https://www.jst.go.jp/ristex/stipolicy/project/project50.html)」

ご自身の経験も踏まえ、産官学連携が進んでいない課題をもとに必要な仕組みの研究、また、中間人材を育成する取組を行っていることが印象的でした。
同じように省庁での勤務経験がある他の参加者からもコメントがありました。

サイバーエージェント:
「行政内部の事情を理解しているからこそ、調整を進める中での現実的な落としどころを見出せる、ということはあると考えています。

たとえば、自治体には利益を出すといったわかりやすいKPIもなければ職員個人としてもEBPMを推進するインセンティブが弱いので、民間企業と自治体間で、何を目的としてデータ活用に取り組むのか “モチベーションの認識合わせ” が必要だと感じております。」

その他、今回の議論の中で、目的設定の重要性が確認されてきましたが、その一方で、異なる立場のちょっとした意見交換がきっかけとなり新たな取組が始まることもあると言及されるなど、目的を定めすぎない、ある種雑談のように、定期的に考えや意見を交わせる場の必要性についてもコメントがありました。

2 産官学連携における課題と改善方法

最後に、産官学が連携しEBPMを推進する上で、これから自治体に求められることとして、サイバーエージェントからは、自治体内で産官学の連携を促進する仕組みが作られることがあげられ、そこに必要と考えるポイントが挙げられました。

サイバーエージェント:
「3つの仕組みをあげてみたいと思います。

まず1つ目は、事業参画の入り口に関する仕組みです。現状は民間企業から自治体へ問い合わせても、その時の担当者次第で事業化に進むか、課内で検討すらしないのかが決まっていくことが多いと感じています。事業検討に有効な情報や提案であっても、検討の材料として扱われるか否かが担当者次第、という状況は自治体にとってもメリットがないのではないかと思います。民間企業からの提案に対して真剣に検討する仕組みがあれば、自治体にとってもメリットを逃さなくなるのではないでしょうか。

2つ目は、データ提供方法の仕組みです。EBPMを推進するためにはデータが必要不可欠です。しかし、自治体ではデータを保有する部署との調整や、データ加工などに多くの時間的コストが投下されています。この状況を、データをオープンにする仕組みにより改善できれば、よりEBPMが推進されると思います。

3つ目は、検討段階で効果検証を見据える仕組みです。EBPMをしっかり実施しようとすると、事業という介入を行う前のデータを取得するだけではなく、どのように介入を実施するか、介入後の効果検証をどのように実施するかまでを事前にデザインしていることが重要です。事業をスタートする大枠が決まっている段階では、効果検証に必要なデザインをあきらめなければならないことがよくあります。」

サイバーエージェント:
「現場の自治体職員には新しいことや難しいことに対して、当然取り組むべきであることとして積極的に対応していただける方も多くいらっしゃいます。また、そのようなトップの方もいらっしゃいます。そうした現場とトップ、更に中間のマネジメント層が同じ方向を向いて取り組みを進められるとよいと考えています。DXなどを積極的に進めている自治体はここが嚙み合っている印象です。」


座談会の様子

3 横浜市は今後も産官学連携を重視し、データ活用を推進する

今回の座談会を通して、産官学連携の仕組みをアップデートすることが出来れば、EBPMを通じたデータ活用にはまだまだ伸びしろがあると強く感じました。そのためにも異なるセクターごとに立場や目的が異なるということを前提に人材や仕組みの観点から整理する必要性が確認できました。

成育こどもシンクタンク:
「コロナ禍以前は、行政とアカデミアが連携しアイデアソンなどのオフラインのイベントを開催する事例もありました。そういった機会で生じる小さな雑談は異なる立場をつなぎ合わせる重要な要素にもなり得ます。立場を越えて気軽にディスカッションできる場は今後も必要だと考えています。」

産官学連携を有効に進めるためには、データ活用に関する論点や事業の枠組みに関する話だけでなく、参加者各々の想いや事業背景などの事業の前提となる情報などを共有する話し合い等も含めた意見交換などが行われていくべきではないでしょうか。各セクターが自由に議論できる対話の場のニーズが高いことを改めて感じ、自治体自らそうした場をプロデュースすることも念頭に入れEBPMを推進していきたいと思います。

横浜市では今後も民間・アカデミアと積極的に交流を行い、市民サービス向上のためにデータ活用を推進していきます。引き続き、ご注目ください!


問い合わせ
今後データ活用に興味関心のある他自治体の皆さんや民間企業の皆さんとも意見交換や連携を図りたいと考えていますので、ご興味のある方は以下のメールアドレスへご連絡ください。

mail: ss-ds@city.yokohama.jp

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