犬と人間の世界の違い

日本人は昔から物や動物を擬人化し、キャラクター化したり漫画にしたりする文化を持っています。
犬と一緒に暮らしていると、ついつい、人間と同じ感情を持っているのではないか?人間の言葉がわかるんじゃないか?人間と同じく思考ができるのではないか、と思う瞬間があると思います。

ですが、犬は人間と種が異なり、人間と見ている世界も、感じていることも違います。犬はどんな世界に生きていて、どんな行動習性があるかを考えてみましょう。


犬の歴史

犬は早くから人間により家畜化され、何万年も人間とともに生活しています。また猟犬は獲物を見つけたら人間に知らせる役割、銃で仕留めた獲物を回収する役割、あるいは、穴に住む獲物を吠えて追い出すなど、その役割によって特長が顕著になるよう、品種改良が繰り返されています。

そういった歴史的背景により、犬種ごとに特徴的な行動、人間との関わり方、必要な運動量が異なります。また、人工的に改良された結果、ブルドックなどは人間の手を借りないと出産が難しい犬種です。

このように、犬は人間とともに、何万年もの間、人間の社会の一員として暮らしてきています。犬をできるだけ自然の形で飼いたい、狼の子孫だから狼のように育てたい、などの飼い主さんの声を聞くことがありますが、犬は人間社会から外れて生活することのほうが難しい動物です。

Tip
犬が人間と一緒に暮らすことを前提にするのであれば、社会のルールを守らせ、QOLをともにあげていくために、しつけや基礎トレーニングは行う必要があります。また、吠えの行動が遺伝的に強化されている犬種は、吠えることが仕事でしたので、特に気を配って抑止しないと、マンションなどの現代コミュニティでは近隣の迷惑になりかねません。犬種特性を理解した上で、適切なトレーニングを行っていきましょう。


犬が見ている世界は?

人間と犬は見ている世界が一緒でしょうか?以前犬はモノクロの世界しか見えていないと言われていましたが、近年の研究で、赤が判別しづらく暗いグレーに見えてしまうということがわかりました。代わりに青や黄色がよく見えるようです。

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出典:Can Dogs See in Ultraviolet? | Psychology Today


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出典:Are Dogs Color Blind? Side-by-Side Views – American Kennel Club

また、視力については人間の0.3程度しか見えないともいわれています。一方、狩りを長らくしていた歴史的背景から、動体視力はよく、早朝・夕暮れの薄暮に獲物が見えやすいよう、進化しています。さらに狩りでは獲物の細部を観察するのではなく、動く物体の追跡を主にしています。近くに落ちているおやつが見えず、くんくん匂いで確認していますが、こういった感覚器官の機能の違いによるものです。

Tip
犬のおもちゃを購入するとき、赤い色は犬が見えづらいので、避けたほうがいいかもしれません。特に公園など緑色が多い場所では、青や黄色などの色を使ったほうが、犬にとっては見えやすいでしょう。


犬の好む場所は?

クレートやケージなどの狭いところにいるのはかわいそう、閉じ込めたくない、という飼い主さんが多いのですが、実は犬は狭くて暗いところが好きです。よく寝る前に穴を掘る仕草をして、くるくる回る様子が見られますが、土を掘って巣穴を作っていた昔の習性が残っていると言われます。巣穴では温度調整をしたり、出産をしたり、獲物をこっそり隠したりしていました。ケージやクレートでゆっくりプライベートな時間を過ごすことを習慣づけてあげると、自分のペースでリラックスして過ごせるようになります。

Tip
クレートでいきなり扉を閉めると「出れなくなる」「自由が奪われる」という不安で、二度と入らなくなる犬がいます。クレートの扉は外し、犬が慣れてから扉をしめるようにしましょう。また、周りの様子が気になってゆっくりできない様子が見られるときは、薄い布を上からかけて刺激から遮断してあげましょう。


犬をおやつやフードで釣るのはよくない?

トレーニングでフードを毎回与えるとフードがないときにコマンドを聞かなくなるのではないか?という質問を受けることがあります。また、なんとなく食べ物で釣ってトレーニングをさせるのは嫌だという声も聞きます。

でも、代わりに、犬が喜ぶものってなんでしょうか?私達人間が「その行動いいね!」と伝えたいとき、人間同士であれば、言葉で褒め合うことができます。会社ではボーナスや昇給があるかもしれません。その報酬のために何度も同じような行動を取ろう!としてくれる動機づけがトレーニングでは必要になります。

そう考えた場合、犬にとって本能に基づく報酬になるのは、やはり、フードなんだろうと思います。

Tip
最初は美味しいもの欲しさにトレーニングをやっていた犬も、徐々にトレーニング自体が好きになって、さらにクリッカーの効果でおやつがなくてもコマンドを聞いてくるようになります。個々の犬によってフードの好みは分かれることがありますので、もし犬が夢中にならないようであれば、犬が好むおやつに変えてみてください。


犬は反省できる?

ケージに入れず留守番させて、帰宅時に部屋のものをめちゃめちゃにしていた・・・こんなとき、犬が申し訳なさそうにしていると感じることがあるかもしれません。でも、残念ながら、これは勘違いです。犬は数時間前の行動と今の行動を結びつけて考えているわけではありません。犬は飼い主の落胆や怒りを察知し、それをなだめるために、これまで学習した行動を提示しています。(これまで、犬がそういった態度を見せることで、飼い主をなだめることに成功しているのかもしれません)

Hint
犬の誤った行動を直すときは、その行動が起きたその瞬間(少なくとも数秒以内)に叱る必要があります。それより前の行動と今叱られていることを理解することも、関連付けることも難しいのです。


どんなに長く人間と暮らすようになっても、犬と人間は種がことなります。お互いの違いをよく知って、よりよい生活にしていきましょう!


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