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【悪い癖】他の犬を咬んでしまった・・・・!

問題行動の中でも一番飼い主さんが困るのが「攻撃行動」です。しかも他の犬を咬んでしまった場合、もうどうにもならなくなってしまうことがあります。咬んでしまったらどのように対処すべきか、実際にご相談を受けた事例をもとに、説明していきます。


1.事例:同居犬を咬んじゃった!

Aさんのお家ではもともと飼っていたワンちゃん以外に、保護犬を複数頭飼われていました。そのうちの一頭が急に先住犬に咬み付き、怪我をさせてしまったそうです。しかも、一度ではなく5回ほど、同じ先住犬に対して攻撃を行ったそうです。結果として、咬み付いたワンちゃんは、完全に隔離をすることになってしまい、他の犬とも遊べる状況ではなくなってしまいました。また、仲裁に入ったご家族のことも咬んでしまったそうです。

Aさんは、今まで通り、仲良く遊べるようにしたい、完全隔離しなくてもいいようにしたいということで、ご相談にいらっしゃいました。


2.原因

さて、この場合、犬が攻撃した原因はなんでしょう?Aさんのご家族は「いきなり先住犬に咬み付いて、攻撃された犬の鳴き声で気づいた」という状況で、心当たりがないそうです。

攻撃した犬はブルドッグの血統が入っており、もともと攻撃性の高い犬種ですが、そもそもベーシックトレーニング(オビディエンストレーニング)をほとんど受けていない状態でした。そのため、その犬種特性が強く発露してしまったということが考えられます。

次に同じ先住犬にばかり攻撃をするということも気になりましたので、犬の中で飼い主がどのワンちゃんを一番可愛がっているか、ということを聞いたところ、攻撃対象となっていた犬を一番にかわいがっていたということがわかりました。つまり、飼い主さんのアテンションや飼い主さんに近い場所を取り合っていたんですね。特にこのワンちゃんは保護犬です。これまでの飼い主さんや自分の居場所を取り上げられた経験があるので、今いる快適な状態をキープしようと一生懸命になっているのだろうと思います。

また、何度も何度も攻撃をしているのは、その奪い取るというのが成功してしまっているからですね。咬んでしまったら、飼い主さんが仲裁に入ってきます。それは犬からしたらご褒美になってしまっているのかもしれません。


3.環境操作

まず、このワンちゃんはもともとの犬種特性として攻撃性が高いので、エネルギーを適切に発散させてあげることが重要です。お散歩だけでなく、おもちゃ遊びなんかも活用していきました。おもちゃ遊びは狩りの練習になるよう、音のなるぬいぐるみなどを使って引っ張りっこをやってみました。「あまりおもちゃで遊ばないんです・・・」といっていましたが、遊び方を教えてあげたら、咥えて、引っ張って、ブンブン振り回して、上手に遊べました。しかもこんなに生き生きとしているワンちゃんを見るのは初めてと飼い主さんもおっしゃっていて、いかにエネルギー発散が足りなかったか、ということが飼い主さんも理解できたようです。

Tip
ぬいぐるみを選ぶコツは「音がなること」「獲物の感触に近いもの」を選ぶことです。犬の獲物は鳥やネズミですね。ふわふわしているものや中に綿がつまっているものが近い感触です。またかなりの顎力で噛みますので、人間用のおもちゃは避けてください。必ず犬用のおもちゃを使いましょう。


5.他の犬とリソースを取り合わないためのトレーニング

ここでいうリソースとはいわゆるご褒美のことです。フードだけではなく、飼い主さんのアテンション(叱るも含めて)、場所なども犬にとってはリソースになってきます。このリソースは犬のものではありません。飼い主が管理していくものだということをきちんと犬に理解してもらいます。そのために環境操作も行っていきますが、トレーニングの中でも実践していきます。

オスワリ+マテ、フセ+マテ、ヒールウォークなどで、リソースが欲しいのであれば、良い行動を取る必要があるということを徹底して教えていきます。コマンドを出して、おもちゃやフードを犬の近くに置いても、勝手に触らない、飼い主さんがOKを出すまでコマンドに従っていなくてはいけないということを覚えてもらいます。

また、いざ他の犬に対して興奮が高まってしまったら、「オイデ」で呼び戻す必要がありますので、これもどんなに気になるものが他にあっても帰ってこれるように練習を重ねます。

4.万が一咬んだときの対処方法

環境操作とトレーニングで犬の攻撃性が落ち着いてきたとしても、万が一の咬傷事故はいつも起きうるかもしれないと思って、管理していくのがよいです。残念ながら、一度発現した行動はなくなることがなく、問題行動の頻度を下げることが問題行動改善のゴールになります。

万が一、このワンちゃんが他の犬を咬んでしまったとき、今まで同様に飼い主が仲裁に入るのは逆効果です。ご褒美を与えることになりかねないですし、また人間を咬んでしまうかもしれません。

このような場合は「水をかける」「クッションを投げ入れる」「ブランケットをかぶせる」などして、いったん犬を驚かせて攻撃行動を中止させることが重要です。犬が落ち着いてからケージに入れるなどの隔離を行いましょう。決して人間が噛まれることのないように、怪我をすることがないように配慮することが重要です。


5.まとめ

犬を咬んだことがないから大丈夫と思っている飼い主さんも多いかもしれませんが、リソースの取り合いだけでなく、恐怖反応から攻撃行動に出るようなワンちゃんもいます。他の犬に対して吠える、唸る、場所を取り合う、おもちゃを取り合うなんて行動が出たら、それをエスカレートさせないようにしていくことが大事です。

そして万が一咬傷事故が発生してしまったらのシミュレーションもしておくようにしましょう。うちの子に限って・・・と思いたい気持ちはすごくわかりますが、万が一が発生して困るのは咬まれてしまった犬です。よくあるのが、全然他の犬が平気だったんだけど、ドッグランで咬まれてから、他の犬に攻撃行動が出るようになって、うちの犬も他の犬を咬んでしまった・・・という事象です。咬まれたことがトラウマになって他の犬への攻撃となり、この負の連鎖が続いてしまうんです。他の犬に攻撃されても何があっても、咬傷事故を起こさない、巻き込まれない覚悟が必要です。

また、すでに一度でも咬傷事故を経験しているワンちゃんは一度専門家にご相談いただくことも検討ください。何がきっかけなのか、咬傷事故によってどのような学習をしているのか、プロの目線からアドバイスを受けると、新しい気付きがあるかもしれません。


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