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1日1建築 ⑥ 「エストニア国立博物館」

✅ エストニア国立博物館

田根剛 / エストニア タルトゥ市


✅ 特徴

ナショナル・ミュージアムは、エストニアの古都タルトゥに建設。ハンザ同盟で繁栄した首都タリンとは異なり、タルトゥはエストニアの中央に位置し、文化・学術の都市として長くこの地に根付いてきた街です。長年の議論の末、建設地は1909年に設立された最初のナショナル・ミュージアムの敷地内であるラディ地区が選ばれました。しかしここは、第二次大戦後に旧ソ連が軍用地として占拠した跡地であり、1991年の独立後20年以上も手つかずのまま残っていたのです。

そんな負の遺産である軍用地、その中央に横たわる滑走路の延長線上にナショナル・ミュージアムを直結しました。


10年前には全くの荒野だったこの敷地に、全長355m、幅72m、延床面積34,000㎡の建物ができあがりました。氷河期から現在のエストニアの日常を伝える歴史・民族の収蔵品、コーラス、演劇、ドキュメンタリー映像など生きたコレクションを展示するミュージアムとなります。長い歳月をかけ、静かに待ち続けたエストニアの人々の強い想いが現実となってこの場所に建ち現れつつあります。


✅ 負の遺産も歴史の一部

場所の記憶を受け継ぎ、過去を未来に繋ぐとき、歴史はかわり、時代はかわり、未来はかわることができる

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