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北欧人が本気を出すクリスマス

今年もクリスマスですね。デンマークでは、クリスマスの季節は11月から徐々に始まって12月から本格化し、12月24日の夜にクライマックスを迎えて、25日にはその余韻でまったり(ぐったり)しています。

北欧人たちがクリスマスを盛り上げようとする本気ぶりには毎年圧倒されますが、今回のnoteでは、それを写真をまじえつつご紹介したいと思います。デンマークに来て以来、毎年どんなクリスマスを過ごしてきたか写真を見返していましたが、ほんとに毎年よくこんなに色々やってきたな、、としみじみ。

まず、ハロウィンが終わって11月に入ると、もうクリスマスムードに変わります。店の品揃えが、かぼちゃからサンタに変わるイメージです。こちら、11月の最初の週末の写真ですが、すでにクリスマスマーケットができていました。甘いお菓子やホットチョコレートの香りが漂います。

国会議事堂近くのクリスマス・マーケット

そしておもむろに登場するのが、クリスマスシーズンの定番ドリンクGløgg(グルッグ)。赤ワインにシナモン、レーズン、砂糖などを入れて煮たホットワインです。この季節には、カフェでもレストランでもGløggがメニューに登場し、自宅で集まる時にも、自家製のGløggを出してもらったりします。

この店のGløggレシピには、赤ワインに加えて、ラム、ウォッカ、ウイスキーも入っているとのこと

11月半ばにメトロに乗った時には、サンタクロース姿のLEGOのお姉さんが、麻袋に入ったレゴを子どもたちに配っていて、クリスマス気分を盛り上げていました。こちらは娘がもらったレゴ。

こちらは8歳娘がもらったもの。小さい子には大きめのレゴブロックを配っていました。

11月末ぐらいから、クリスマスツリーの売り場も街中に登場します。本物のもみの木を買うわけですが、これが日本人的にはびっくりするぐらい巨大です。2メートル以上あるような大きな木を買って、家の中に置くんですよね。

クリスマスツリーの売り場

もみの木の値段は、高さによって決まります。こういう尺を木にあてて高さをはかり、値段を判定するわけですね。この店だと、2メートルで480DKK(約1万円)でした。

高さをはかるための木の尺

買ったはいいけど、どうやって持って帰るの?と思いますよね。まずは、ツリーをこちらの赤いつつのようなものに入れて、網をかけます。

木を横にして引っ張り出すと、網がかかった状態になる

網をかけると、こんな感じになります。

網かけ後のクリスマスツリー

こんな状態にして、手で持って帰ります。根元に台をつけてもらうのを忘れず。一度、忘れたことがあって、仕方なくツリーを抱えて店まで戻ったこともありました…。

本物の木なので、水をやらないとどんどん乾燥して、葉っぱが散らかります。我が家の場合、子どもたちが走り回ることもあって、けっこうな量が落ちる。

そういう手間も含めて、毎年買いに行くのも面倒だし、クリスマスが終わったらごみとして運んでもらう処理も手がかかるし、そもそもこの一ヶ月のために大量の木を切って捨てるっていうのは心が痛むし、プラスチックでできたツリーでいいんじゃない?と提案したこともあったんですが、いやいやそれは違う、と即却下されました。本物の木の香りが大事なのだそうです。

天井に届く高さなので、飾り付けもこんな感じ

12月に入ると、クリスマスムードが加速します。デンマークのクリスマスでは、とりわけ、子どもたちを楽しませることに全力をかけているのを感じます。

12月1日から24日まで、毎日何かプレゼントをあげる習慣がある、と最初に聞いた時にはびっくりしました。といっても、どのみち必要だった文房具だとか、日用品の小さなものでいいんですけど、それでも24個も考えるのは大変。ある友人は、10月ごろから24個のリストを考えて、少しずつ買い揃えていると言っていました。

最初の数年は、24個分を用意して、それを1から24までナンバリングして壁にかけていたんですよね。夫が子どもの時から使っていたという、手作りの布地の壁掛けをもらったので、それを使っていました。

しかし、24日分もプレゼントを用意するなんて大変だよね…と4歳息子の幼稚園のママ友に話をしたら、「プレゼントはまだ簡単な方」だと言うんですよね。デンマークでは、ニッセという赤い帽子をかぶった妖精(サンタクロースの助手的な存在)がいて、イタズラをすると言われているんですが、なんと彼女の家では、このニッセのイタズラを毎日やっているんだと。

例えば、歯ブラシを事前に凍らせておいて、歯磨きしようとしたら凍ってる!とか。寝ようと思ったら、ベッドの場所が動いている!とか。子どもは、今日はどんなイタズラが起きるだろうとワクワクしているそうです。

アイデア集のウェブサイトもあると言うのでのぞいてみたら、これがクリエイティブで面白い。牛乳パックに果物の味の着色料を入れておいて、朝、牛乳をパックからミルクを注いだら緑になっているとか、出かけようとしたら、靴がプレゼント風にラッピングされている、とか。

ニッセのイタズラは子どもだけでなく、職場編もあって、サイトにはアイデアが色々と並んでいました。Bjørnという名前の人がデンマークにはいますが、同時にBjørnはクマという意味でもあります。なので「Bjørnに電話して。番号はXXXX」というポストイットをパソコンに貼っておき、仕事の折り返しの電話だと思ってかけてみたら、動物園の番号だった、とか。

12月ってただでさえ仕事が忙しい時期なんですけど、その時期に各種のクリスマスのイベントもこなしつつ、子どもが喜ぶプレゼントを用意しつつ、ニッセのイタズラも仕掛けつつ、クリスマス当日(これまたやることがてんこ盛り)の準備もしつつ、ってどんだけ大変なんだと思っちゃうんですが、デンマーク人たちってそれを大変というよりも、思い切り楽しもうとしてますよね。さらには、病気にかかりやすいシーズンでもあるので、予定が狂ったりもするわけですが、それでもやる本気ぶり。家族や友人と過ごす時間を大事にし、楽しむことを忘れない、という優先順位がしっかりしてるなあと感じます。

プレゼントの習慣は家によってそれぞれで、毎日1個ずつ、トータル24個あげる家もあれば、週末ごとに4個あげるという家もあります。この季節、それぞれの店では、毎日、日付の番号を開けるプレゼントボックスもたくさん売られています。

これはお菓子タイプですね。

その日の日付の数字をあけていくと、小さなお菓子が入っている。24日にはこうなります

我が家も今年はこの24個ボックス方式にすることにし、8歳娘にはポケモンカードやキーホルダーなんかが入っているボックスを、4歳息子にはパズルのボックスをプレゼントしました。

購入担当の夫が選んだのが、こちらのThe New Yorkerのパズルでした。一箱108ピースのパズルになっていて、さすがにこれは4歳の息子には難しすぎでしょ、ていうかこれ自分の趣味でしょ、と文句を言っていたのですが、実は8歳娘と4歳息子でやるにはちょうどいい難易度。しかもパズルをやっている間はおとなしくしてくれるので、かなり助かりました。

ミニパズルが24個入っているボックス
こんなふうに、実際のThe New Yorkerの表紙ができあがります

そして、12月に入ると、1から24までのメモリが刻んであるカレンダーキャンドルを灯し始めます。

この季節、がっしりとしたサイズのカレンダーキャンドルが並びます

今年の我が家のクリスマスキャンドルはこちら。娘が学校のイベントで作ったものです。

1日に1メモリずつ減るくらい、毎日キャンドルを灯しながら、クリスマス気分を味わうわけですね。このキャンドル、24日にはどうなったかというとーー。

最後はこんな感じになります

これもそうなんですけど、基本的にクリスマスの飾り付けの類は、手作りを楽しむのがポイントでもあるんですよね。12月が一年でいちばんhygge(ヒュゲ)な月といわれるのも、こんなふうに人と集まる機会が増えるからでもあります。

こちらはクリスマスリースを手作りするイベント

これは、友人宅でクリスマスのクッキーを作った時のもの。

アイシングをして仕上げました

テレビでは、12月1日からクリスマスの特別番組もはじまります。1日にスタートして24日が最終話という1日1話形式で進むテレビシリーズです。

番組は子ども向けなんですが、これがあなどれない存在で、タイアップ企画としてこのストーリーを元にしたカードのコレクションブックも店頭で販売されています。今年、TV2という大手民放局で放送されていたシリーズのカードのコレクションブックがこちら。

これが表紙


ストーリーに出てくるキャラクターやアイテムのカードを集めて入れていく

提携するスーパーなどで、一定金額以上の買い物をすると、カード入りの袋をもらえます。子連れだとお店の人が何枚もくれたりするので、けっこう増えるし、娘は、義母からもカードをもらいながら集めていました。この袋は、開けるまでどのカードが中に入っているかわからない。子どもたちはできればカードを全部集めたいので、親にたくさん買い物をしてカードをもらってきてほしいとお願いするという、恐ろしいシステムになっています。

同じカードが何枚もたまるけど、一枚もないカードも出てくるので、子どもたちはこのコレクションブックを学校に持っていって、お互いに自分が欲しいカードを交換しながら、カードをためていくわけです。でも、中にはなかなか手に入らない貴重なカードもあるらしく、それが人気になりすぎて、オンラインで高値で売られてニュースになったりする白熱ぶり。

それから、12月には、julefrokostという、直訳するとクリスマス・ランチという食事会をする機会も多いです。レストランでも、julefrokostのメニューを出すところが増えてきて、友達や親戚と食事会をやったりします。

レストラン「Barr」のjulefrokostはおいしかった。こちらはデザートのコーナー

デンマークの会社では、ふだん飲み会をやるようなことはほぼゼロですが、julefrokostは社員が一同に揃って食事やエンターテイメントを楽しむ場になっています。無礼講になりすぎてセクハラが発生したりするので、近年は問題になったりもしてますが…。

私が仕事場にしているInternational Press Centre(IPC)でも、こんな感じでjulefrokostをやっています。

デンマークを拠点にして海外のメディアに発信するジャーナリストが集まるIPC。ここでも毎年julefrokostを行っています
この年はビュッフェ形式でした

街もクリスマスデコレーションが華やかになってきます。こちらは動物園。

コペンハーゲン動物園のクリスマスデコレーション

こちらはスイーツのお店。こちらのウィンドーに飾ってあるものは、ほとんど本物のお菓子なんだそうです。デンマークの人たちは、マジパン(アーモンド粉末と砂糖を混ぜたペースト状の洋菓子)を本当によく食べますよね。

このお菓子も多くがマジパンのもの

さて、ここまではクリスマスの雰囲気を盛り上げる数々をご紹介しましたが、いよいよ24日の流れです。準備は、子どもたちが寝た後、23日の夜から始まります。

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