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スキルではなく、心を育てる(1)

以前、「デンマーク人の働き方」を紹介する記事で、父親も母親と同じように幼稚園や小学校に子どもを迎えに行くこと、午後4時ごろにお迎えに来るパパ友の一人は、政府・デジタル庁の局長というバリバリの官僚だった、と書いた。これを読んだある人から言われた言葉が、印象に残っている。

「でも、なんで延長保育を利用しないんですか?」

なるほど、日本で子育てをしている人はそう考えるか…と唸ってしまった。

まず、デンマークの保育園(1〜2歳)と幼稚園(3〜5歳)というのは、単に子どもの年齢で分かれているだけで、保育園も幼稚園も午後5時までしか開いていない。そして、延長保育は存在しない。デンマークでは、ほぼどの家庭も共働きであるにもかかわらず、早い人だと午後3時すぎには、もう子どもを迎えに行っている。4時半を過ぎると、園に残っている子どもはごくわずかで、「すみません、仕事がどうしても都合つかず…」みたいに恐縮しながら迎えに行く雰囲気なのだ。毎日そんな時間にお迎えにいこうものなら、お前は鬼か、という冷たい視線を受けることになる(経験済み)。

まあそれでも、午後5時まで保育園が開いてるなら、その分のお金を払ってるんだから、午後4時55分に滑り込めばいいじゃん、と思うかもしれない。私も、最初はそう思っていた。しかし、「午後5時に園が閉まる」というのは、「5時には、職員全員が片付けもろもろを終えて、門の鍵をがっちゃんと閉めて帰途に着く」という意味なのである。だから、午後4時55分に滑り込み、だと遅すぎるのだ。

午後5時まで園が開いているにもかかわらず、働く父親、母親たちは、だいたい午後3時〜4時前後にお迎えにいくんです。できるだけ長い時間を子どもと過ごしてあげたい、午後5時のぎりぎりまで子どもを園に残すと、子どもがかわいそうって思っているふしがあります。

といった感じで先方に説明すると、今度はこう聞かれた。「そんなに早くお迎えにいって、子どもと何してるんですか?」

たしかに、そう不思議に思うのかもしれない。なんせ、何をしてるのかって聞かれても、特に何もしてないのである。そして、この「何もしていない」ということに、実は意味があるように思うのだ。

私は、年に一度は2人の子どもを連れて日本に一時帰国しているので、同年齢の子どもを持つ日本の親と話すことも多い。そこで聞く話から考えるに、平日、幼稚園や小学校が終わった後に子どもがどう時間を過ごしているのかの違いは、子育てに対する考え方の違いをよく表しているように感じてきた。端的に言えば、子どもの「何を」育てようとしているのかが違うのである。


遊んでばかりの子どもたち

デンマークの子どもたちが、幼稚園や小学校が終わった後にどう過ごしているかについては、私もママ友パパ友たちにけっこう聞いてきた。まあ、総じて我が家と似たり寄ったりだな、という印象を持っているので、我が家のケースをご紹介したい。

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