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デンマークのコロナ状況:オミクロン株の急拡大、3回目接種は「4ヶ月半後」、5-11歳への接種など

今年は、新型コロナウイルスにまつわるデンマークの社会の様子や政府の対応などを日本に向けて説明する機会が何度かあったのですが、11月半ばから状況がかなり変わってきているので、以下まとめてみました。

欧州では冬の到来とともにコロナの感染が拡大していますが、デンマークでも12月に入って、感染者数が過去最多水準を記録中。新たな変異株「オミクロン」も急速に拡大して、12月5日の時点で183件確認されています。

9月10日には、新型コロナウイルスは「社会的に重大ではなくなった」として、マスクなど全ての行動制限が完全に撤廃され、いったんは”コロナ前”の社会に戻っていました。しかし、ワクチン未接種の人や子供などを中心に再び感染が広がり、11月半ばからは美術館などの屋内施設やレストラン、カフェなどで「コロナパス」が再導入されました。

今年春からデンマークで始まったコロナパスの運用については、こちらの記事にまとめております。

デンマークのコロナパスは、ワクチン接種済みか、簡易検査(抗原検査)もしくはPCR検査での陰性を証明することで有効になるのですが、簡易検査の陰性証明による有効期限は48時間、PCR検査は72時間なので、ワクチン未接種の人が普段どおりの生活をするためには、検査を頻繁に受ける必要があります。

今年春にコロナパス制度をスタートした時には、かなりの数の簡易検査場が設置され、カフェに行く前に検査をする、みたいな気軽さで受けられたのですが、11月半ばのコロナパス再導入の際には、政府はそれほど多くの検査場を設置しませんでした。検査場がそれほど近くにない、行くとかなりの行列になっている、という状態にすることで、ワクチン未接種の人が検査の煩わしさを避けるために接種するよう促す狙いもあったようです。実際、コロナパス復活のニュースの直後から、ワクチン接種の予約は急増しました。

ただ、一部の欧州の国とは異なり、デンマークではワクチン接種は義務ではなく、個人の判断に委ねられています。個人の自由意志を重んじるお国柄なので、ワクチン義務化はなさそうな気がします。

さらに11月末からは、公共交通機関やスーパーやレストランなど屋内施設でのマスク着用が再び義務化。デンマークでは、マスク着用義務は6月に廃止になっていたので、人々のマスク姿を見るのは約5ヶ月ぶりでした。

オミクロン株も確認されていて、12月3日金曜日には18件だったのですが、週末をはさんで5日の日曜日には183件と急増。デンマークでは、簡易検査(抗原検査)とPCR検査を無料で大規模に行っているので、感染拡大を早期に把握しやすい特徴があります。このニューヨークタイムズ紙の記事によると、大量の検査だけでなく、イギリスと並んでゲノム解析にも優れているために、変異株を検知しやすいらしいです。

デンマーク政府としては、感染拡大のスピードを遅らせるためには、1にも2にも、ワクチン接種のペースを加速させることが最重要という認識を示しています。フレデリクセン首相は12月1日の記者会見でも、「この冬をうまく乗り越えられるかどうかは、ワクチンにかかっている」と強調しました。

政府が力を入れているのが、3回目接種となるブースター接種と、新たにワクチン接種対象となった5−11歳の子供に対する接種です。

ブースター接種は、デンマークでは18歳以上の全員が対象。1、2回目と同じ種類のワクチンを接種します。当初は、2回目接種の終了日から6ヶ月をめどにしていましたが、政府が「12月中旬からは現在のワクチン接種体制の2倍にあたる、1週間に50万人を目標にする」として接種のスピードを上げる準備をして、2回目の終了日から5ヶ月半に短縮できるという見通しが出てきました。(→その後、40歳以上は4ヶ月半にさらに短縮)。各自の2回目の接種日から計算して、オンラインで接種の案内が届くので、「3回目の接種の招待をもらった人はできるだけ早く予約して接種をしてほしい」としています。ちなみに現在、3回目の接種を終えた人は約16%。

一方、5歳から11歳の子供に対してもワクチン接種を進めることを決め、対象者の親には順次、接種の案内が届いています。5歳以上の子供に対するワクチン接種が決まった時のニュースでは、不安を感じながらも「社会全体としての感染拡大を止めるためには仕方がない」という親たちの声を伝えていました。

というのも、去年はロックダウンで学校が休校になり、子どものメンタルヘルスへの影響がかなり問題になったんですよね。だから、子供への感染が止まらず再び休校に追い込まれるような事態は避けたい、というのが切実なところ。また、子供だけなら重症化するケースはまれかもしれないですが、大人、特に高齢者に感染が広がることで重症患者が出てくる事態を避けるべきという社会的な観点から、ワクチン接種を受け入れている印象です。

ただ心配なのは、今まさにJulefrokost(ユルフロコスト、直訳するとクリスマスランチ)という、デンマーク人にとって年に1度の大事なクリスマスイベントの季節だということなんですよね。会社のイベントや、家族や友人の集まりとして、デンマーク伝統料理のニシンの酢漬けや豚のローストなどを食べる&飲みまくる会で、スナップスとか強いお酒で酔っ払う人も多い。去年はロックダウンでほとんどがキャンセルになったこともあり、今年は感染拡大中でも敢行するところがけっこうあるようで、こちらは先日のチボリ公園のレストランの様子。大盛況でした。

とはいえ、デンマークでオミクロン株の急拡大もクラスター発生場所のひとつがJulefrokostだったし、ノルウェーでも同じようなクリスマスイベントでオミクロン株感染のクラスターが発生した、というニュースがありました。Julefrokostは重要イベントなので、中止の呼びかけがあるかは微妙なところですが、上限人数を決めるだとか、行動制限がもう少し出てくるかもしれない状況です。


(追記)
12月8日には、フレデリクセン首相が緊急会見を開き、12月10日から始まる追加の行動規制を発表しました。政府としては、去年のようなロックダウンは避けたい、と強調していて、ワクチン接種(未接種者、3回目、5-11歳の子供)の加速を改めて呼びかけました。

  • ナイトクラブなどは営業中止、飲食店は0時以降閉店、酒類の販売も0時以降は禁止

  • 50人以上の立見客が入るコンサートは1月7日まで中止

  • 小中学校(0-10年生)は12月15日から自宅待機、オンライン授業に切り替えもしくは冬休み前倒し。1月4日まで冬休みで、その後は通常登校の予定

  • 12月中に子供(5-11歳が新たな対象)のワクチン接種をできるだけ終えてほしい → 年明けの登校に備えるため

  • 会社主催のJulefrokostは中止を推奨 → やっぱりそういうことになりました。大企業のJulefrokostになると、1000人以上でコンサート会場貸切とかあるし…

  • 民間企業、公的機関問わず、テレワークにできるだけ切り替えを推奨

  • ワクチンによるコロナパスの有効期限が、2回目接種から「7ヶ月間」に短縮される→ 3回目接種を促す狙いで

(さらに追記)
新型コロナウイルスの感染者数は過去最大を更新していて、12月19日からはさらに規制が強化されることに。2022年1月半ばまでの約一ヶ月間の措置とのこと

  • 映画館や美術館、コンサートホールや動物園など文化施設が閉鎖に

  • 遊園地などのアミューズメント系の施設も閉鎖…

  • レストランなどでアルコール提供は22時まで、営業時間は23時までに短縮

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