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デンマークのコロナ対応: コロナパス、ワクチン接種、大規模検査など

5月2日に、こちらの原稿をBuzzFeedに寄稿しました。(まだの方は、こちらをまず読んでいただければ。以下の内容は、その補足になります)

おかげさまでたくさんの方に読んでいただいたようで、いまだに反響をいただきます。新聞記者時代の元同僚に、北欧のコロナ事情を書いてくれない?と声をかけてもらったのがきっかけだったのですが、米国や欧州のメジャー国ならともかく、北欧事情なんて興味あるかな…と思っていたので、多くの人に読んでもらったのは驚きでした。

日本政府のコロナ対策に対するフラストレーションのあらわれかな、とも感じます。それに、日本の主要紙や放送局などはたいてい、北欧諸国には支局を置かず、ロンドン支局なりがカバーする態勢を取っているので、北欧現地発の情報は貴重なのかも。

BuzzFeed寄稿後も、コロナ関係の情報はTwitterでツイートしたりもしていますが、140字だと伝えられる情報に限りもあるので、BuzzFeedの原稿に盛り込みきれなかったことや原稿執筆後の情報を、noteにまとめてみることにしました。

ワクチン接種でもデジタル先進国の強みを発揮

ワクチン接種の優先順位を決めるのは、生死に関わることでもあり、難しい問題です。新型コロナウイルスによるパンデミックを予言していたようだと話題になった映画「コンテイジョン」(Contagion)でも、ワクチン入手を巡る争いが描かれていましたが、デンマークではほぼ、年齢別で図のようにパシッと順番が決まっていて、自治体による違いもなし。

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メッテ・フレデリクセン首相(43)は早い時期に、ワクチン接種について「自分も、他の閣僚たちも、自分たちの年齢層の順番が来るまで待つ」と表明しました。ワクチン懐疑論が広がる国であれば、トップが先に接種して国民の不安を和らげる意味はあるかもしれませんが、デンマークでは今のところそれはない。むしろ、「自分が特別であると思ってはいけない」と自制する「ヤンテの掟(Jante Law)」という概念が浸透している国なので、首相であってもワクチン接種の特別扱いはないと表明する意味もあったようだし、国全体として自分の順番が来るまで慌てず待つ、という雰囲気ができあがった気がします。

ただデンマーク政府は、血栓症の懸念から、アストロゼネカ製とジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンの使用を見合わせることを決めたので、接種計画は当初予定からずれ込み、現時点では終了が8月末になっています。

デンマークは、国連の世界電子政府ランキングでたびたび1位に選ばれるデジタル先進国だけあって、ワクチン接種をめぐる手続きもすべてオンラインで完結しており予約のために電話をするといった作業はなし。自分の順番になったら、デジタルポスト(公的機関からの連絡は全てここに届く)にメールが届くので、そこからワクチン予約の手続きを始めます。

このあたりは、ワクチン接種の電話予約をしようにも全然つながらない…といったフラストレーションが広がっている日本と比べて、デジタル先進国の恩恵を感じるところです。

もう一つ、急な予約キャンセルなどで余ったワクチンを、公平性を期しながら有効活用する仕組み。これも、うまくオンラインの仕組みを素早く作ったなあと感じます。

まず、余剰ワクチンの接種を希望する人は、自分の住む地域を管轄する医療センターのウェブサイトで、「余剰ワクチンの接種希望」をクリック。私が住む首都コペンハーゲンの場合は、当日の午後1時半までに名前、年齢、住所、電話番号を記入し、呼び出しから30分以内に到着できるワクチンセンターを選択して、送信しておきます。

余剰ワクチンが発生したら、その日の希望者リストの中から、年齢の高い順番にワクチンセンターから電話がかかってきます。通常は、午後5時から8時ごろの間に電話が来るので、30分以内にワクチン接種会場に到着し、ワクチン接種、という流れです。

私も、毎朝せっせと登録しているのですが、「50歳以下だと電話がかかってくる確率は低いです」とただし書きがしてあるので、まあダメ元で。でも、日本ではこの余剰ワクチン問題をめぐって、無駄にしないよう近くにいる人に接種すれば不平等だと批判され、かといって打たなければワクチンを無駄にしたと批判され…という不幸なサイクルに陥っているようにも見えます。これはデンマークのように、何らかの形で近所の希望者をリスト化しないと、みんなが納得いく解決が難しいような気がするのですが...。

デンマーク政府の検査に対する考え方

デンマーク政府は比較的早い段階から、ロックダウンによって感染者数を抑えた後は、大規模な検査態勢を整えることで、「コロナ検査で陰性の人」と「ワクチン接種済みの人」とで、社会の通常化を早期に目指す、という構想を掲げていました。BuzzFeedの原稿では、その"切り札"となったツールとして、「コロナパス(パスポート)」のことを詳しく書きました。

記事公開後には、デンマークで行われている大規模な検査態勢についてのコメントが多かったのですが、原稿でも触れたように、検査は感染拡大を予防するという補助的手段(感染者を減らしていくための主要な手段ではない)と捉えられています。感染者を減らしていくための主な手段は、あくまでもロックダウンなどの行動制限政府は感染のレベルに応じて、集会の上限人数だとか学校の再開学年などを細かく定めているわけです。ロックダウンが段階的に緩和されている現在も、「手指をしっかり消毒」「距離を空ける」「屋内ではマスク」といったこれまでの対応は感染対策の基本、として、変えないように呼び掛けています。

デンマーク政府の検査に関する考え方をもっと知りたい、という方は、この保健当局の資料(Teststrategi=検査戦略)が詳しいです。(デンマーク語なので、全文読みたい方はGoogle Translateなどを活用していただければと)

この資料の中で説明されていますが、大規模な検査体勢はずっと続けていくというわけではないんですよね。具体的には、3段階にフェーズを分けていて、

フェーズ1: PCR検査と簡易型の抗原検査を大量に行うことで、コロナパスの条件つきで社会再開を徐々に行う(←今ココ)
フェーズ2: ほとんどの人がワクチン接種を終える夏ごろには、感染レベルが落ち込むことが予想されるので、検査対象はワクチン接種を済ませていないグループに限定。検査規模縮小
フェーズ3: 秋ごろには、コロナ検査は主に、新たな変異種の広がりがないかモニタリングするという位置付けに変更

と変わっていきます。こういう見通しの示し方も、ワクチン接種スケジュールと同じく、すっきりしていてわかりやすいと感じるところです。

いくらかかってるの?

大規模な検査態勢を整えるのはいいとして、気になるのが「いったいいくらかかるの?」ってことじゃないでしょうか。デンマーク政府は、積極的な検査を促すために、PCR検査も簡易検査も無料で提供しています。一日最大50万人(人口の8.6%、日本でいうと1日1080万人)という検査態勢を整えるには、場所の確保や人の動員、大量の検査キットを用意するところまで、ものすごいお金をかけてるよな、、と思っていました。

原稿執筆後、DR(デンマーク公共放送、日本のNHKにあたる)がこんな記事を出しました。コロナパスの条件つきで再開する施設が増えるにつれて、一日当たりの検査数も増えており、一日当たり6,000万クローナ(約10.6億円!)かかっているという試算です。

ちなみに、いったいどんな人が検査員として動員されているんだろうと思って、検査してもらいながら聞いたら「医学生です」って言ってました。別の場所でも聞いたら、やっぱり医学生だったから、相当数が動員されてるんだろうなあ。そりゃ、看護師さんだけじゃ足りないよ...。

もっと調べたい人のために: 役立つウェブサイト

デンマークのコロナ関係のポータルサイトはこちら(英語版)。現在の行動制限、検査施設の案内、出入国の際の規制など。

https://en.coronasmitte.dk

デンマークの最新の感染者数や入院患者数の変遷の情報は、こちらの保健当局のデータ(英語)が参考になります。

また、地元メディアのTV2、DRのサイトも、わかりやすくコロナ関連の数字を更新しています(ただしデンマーク語)。

余談ですが...

Buzzfeedの記事は、思いがけず6000字級の長大な原稿になったにもかかわらず、読みやすいと言っていただき、書き手としてはとてもありがたい反応でした。

そして、記事の内容もさながら、写真を褒められたことが私は嬉しかった!トップの写真はコペンハーゲンの某レストランで撮ったのですが、粘ったかいがありました(笑)。

あまり知られていないのですが、新聞記者って、基本的に写真は自分で撮るんですよね。特に、地方支局にいたり、特派員として海外で取材をしている時は、カメラマン(写真部記者)がついてきてくれることはほぼ皆無なので(APやロイターなどが加盟社向けに写真を配信してくれるようなニュースの場合は別ですが)。

写真のクオリティーって、記事の印象をかなり左右しますよね。だからこそ、新人記者の時から、一眼レフでの写真の撮り方をたたきこまれるのですが。これもまた、終わりなき修行です。

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