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働く人を大事にするデンマークのオフィス環境

今月のBusiness Insider連載は、建築をテーマにしました。デンマークの建築家たちが、「建築とはart form(芸術形式)である」と教えられてきた伝統を紹介しつつ、大学の学生寮や公立学校の建築といった公共性の高いプロジェクトにも、潤沢な資金が回る仕組みなどについて書いています。

もともと私は、建築やデザインに詳しいわけではなかったですし、日本に住んでいた頃は、職場にしても住まいにしても、建物や環境には無頓着な方だったと思います。でも確かに、日々を過ごす空間が質の高いものであれば、自分が大切にされているという感覚につながりますし、その逆もしかり。これは、デンマークに来て初めて考えるようになったことの一つでした。

記事の最後に少し触れたのが、職場環境についてです。デンマークでは、温度管理が必要な研究室といった特殊なケースをのぞいて、日光の差し込まない部屋で人を働かせることができないそうなのですが、採光のほかにも、換気や、パソコンを置く場合のデスクの大きさ(スクリーンと目の距離が近すぎないようにすること)など、色々とルールがあるそうです。そんなふうに良質な職場環境づくりに力を入れるのは、“いい環境にはリターンがある”という合理的な考え方にも基づいたもの、というのも、今回の取材で印象的な言葉でした。光が入らず、換気も悪い、じめじめした不快な環境環境では、人は病欠にもなるし、パフォーマンスも落ちて組織の損失になる、というわけです。

そんな話を聞きながら、日本にいた頃は、光の入ってこない部屋に閉じこもって、一日中資料とにらめっこしたり原稿を書いたりって、普通にあったよね…と遠い目になったのですが。

さて、今回のnoteでは、そんなデンマークの職場環境について、コペンハーゲン中央駅近くに本社を構えるデンマークのSaaS企業「Queue-it」を例に、写真とともにお伝えしたいと思います。この記事のトップ写真もQueue-it社で撮影したものです。

Queue-it社は、ウェブサイトにアクセスが集中してダウンするのを回避するために、オンライン上の"待合室"という解決策を提供しているIT企業です。Business Insiderの連載記事では写真を一枚だけ紹介しましたが、同社でオフィス環境について取材させてもらったところ、最近のデンマークの働き方のトレンドを反映していて、とても興味深いものがありました。

自宅勤務のように仕事できる「集中ルーム」

Queue-it社のオフィスを訪れて、まず気づいたのが、オフィススペースがかなり細長い設計になっていることでした。デスクは、窓際から最大でも3席分しか離れないようにしているそうで、デスクで仕事している社員全員が、窓の近くに座っているような印象を持ちます。

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