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MV『SMOKE』by ディマシュ:感想 & あんまり妄想しなくてすんでる解説

(Dimash 57)
(17,603文字)
(第1稿:2024年5月31日~6月14日)


★YouTube動画:『Dimash Qudaibergen - "SMOKE" OFFICIAL MV』
by Dimash Qudaibergen(公式) 2024/05/30(日本時間)




(今回は「MVのストーリー」の項目で、🕵️‍♂️と🕵️‍♂️の間が「ちょっと解説」の文章となります)



【『SMOKE』のMV、リリース】

 5月29日。
 カザフスタンのアスタナ時間で午後8時。
 日本時間の30日午前0時、ディマシュの新MV『SMOKE』がリリースされた。

 実は最近、ディマシュのインタビュー動画が「アップ→削除→再アップ」になったり、よく分からん時間に動画がリリースされたり、ということが相次いでいた。

 そのため、このMVのリリース時間を信用できなかった私、ホントに0時に来るのかい!?と、やきもきしながら待っていたのだが、なんと!
 ちゃんと時間通りに来た(笑)
 良かった~😂

 そして、謎のピンクスーツの意味が、MVによってはっきりした。
 良かった~(笑)



【MVのストーリー】

(お話の登場人物が多いので、写真多めで解説します)

《イントロ ~ タイトル:物語の舞台》

舞台となる邸宅

 かまびすしく鳴いている鳥たちの声が響きわたる森の中。
 海岸か、川に面した丘に立つ、石造りの豪華な邸宅が見えてきた。
 鐘楼のような塔が建物にくっついているので、昔は教会や修道院だったのかもしれない。
 ここが物語の舞台となるが、BGMが「ドォ~~~ン」みたいな効果音ではなく、可愛らしい鳥の声なので、物語は「ホラー」ではなく「コメディ」であるというサインだ。


 タイトル、『SMOKE』

  その邸宅の玄関にたたずむピンクスーツの男が、しかし妙に神妙な様子で、左下を向いて目を閉じ、手を腹の前で組んで何かを待っている。
 両脇にはマシンガンを構えたボディーガードがふたり、彼を守っている。


《ヴァース1(0:08~):「運び屋たち」登場》

 曲が始まった。
 黒い「メルセデスベンツGLC200」が、道路を走っている。
 このベンツは、どこか知らない砂漠の広場に止まった。

新車で約800万円、中古で約300万円のベンツですぜ


 玄関のピンクスーツが歌い出す。

 黒いベンツから男たちが降りてきた。
 降りてきた男たちは……

口ひげ男A:チェック柄シャツの一番上のボタンをはめた、黒い帽子と黒いサングラス、口ひげで小太りの中年男。

口ひげ男A


オールバックB:オールバックになでつけた黒髪、黒い上着と白のタンクトップ、黒いサングラスに薄めのひげの男。

オールバックB


バンダナ男C
:白い模様のはいった黒いバンダナを頭に巻いて、胸に「S…」の文字がある黒の袖なしTシャツ、あごひげ、黒いサングラスの男。

バンダナ男C

 
白タンクトップD:バンダナ男Cの手前には、白くて丈の長いタンクトップを着た男がいる。

 バンダナ男が、トランクから大きなカバンを取り出した。
 その手前にいる白タンクトップも、カバンを持ったようだ。
 この4人が、石造りの家に入っていく。

 石造りの家に入る4人のうしろ姿。
 写真向かって左から、オールバック男B、白タンクトップD、バンダナ男C、口ひげ男A。


 途中で何回か、主人公のピンクスーツが邸宅の玄関で歌う姿が映る。

物語を語り始めた主人公

 この場面で、「栄光を手に入れるため」と歌う主人公(ディマシュ)は、ミョーにカワイイのでござる💖
 くちびるの形と動きがとっても綺麗💖
 なので、意味なくスクショして掲載したでござる💖

 

コーラス前の主人公

 コーラス前に「準備万端」と歌う主人公が、人差し指で視聴者に何かを「注意しろ」と語っている。

 歌詞の内容が、音楽のみの時やパフォーマンス・ビデオの時と違い、かなり具体的な内容に聴こえる。
 特にコーラスの歌詞は、誰かに対する「警句」のセリフのようだ。

 ピンクスーツを守るボディーガードのひとりが、そのセリフをしゃべっている顔が映る。

ボディーガード1

「 Don't play with the fire,  ready for the smoke ! 」

(注:MVを見たみなさんはもうご存じだろうが、初見と2回目ではボディガードの役割が変わるので、ここでは2種類の意味を記載しておく)
(初見の時(ヤクザ)「拳銃は使うな、マリファナ取引の準備をしろ」)
(2回目以降(警官)「拳銃を使わせるな、現場の安全を確保しろ」)

 

《コーラス1(0:31~):「運び屋たち」が仕事を開始》

 男たちが入っていった石造りの家の中では、2人の女性が手に医療用?の手袋をはめて、何かの作業をしている。
 ここは麻薬卸売業者が「麻薬」、このMVでは「マリファナ」を製造する工場のようだ。
 オールバックBが机の上の袋に手を突っ込み、マリファナをひと握り掴んで匂いを確かめた。
 彼が掴んだ黒っぽいモシャモシャっとしてるのがマリファナらしい。
 もしかして、工場の従業員が密かに混ぜ物をして量を増やして、その分のマリファナをくすねたりする可能性もあるから、それをチェックしてんのかな?とか。
(Bは、上着がチェック柄から黒に変わったようだ)

麻薬の匂いを嗅ぐ、オールバックB。マリファナ鑑定士ですかね?

 
 アメリカの西海岸(サンタバーバラ ~ LA ~ サンディエゴ)の地図で、ルートを確かめる男の手。
 口ひげ男Aが、地図にナイフを突き立てた。(俺が仕切るぜ、てか?)
 隣にオールバック男Bが座っている。

  主人公がいる邸宅では。
 ふたり目のボディーガード、ちょっと小柄で超短髪でちょびひげの男が、コーラスの「警句」を復唱する。

ボディガード2


 マリファナ工場となっている石造りの家。
 口ひげ男Aが、自動小銃を持って立ち上がった。
 その後、白タンクトップDの向こうに見えている口ひげ男Aとバンダナ男Cが、ソファに座って何か作業中のようだ。

何かを作業中のAとC 


 石造りの家にいた男たちが、ベンツに戻っていく。
 白タンクトップDが、ベンツのトランクに大きなカバンを投げ入れた。


《コーラス1の終了間際:「ディーラー(密売人)たち」》

 場面変わって、別の小さな家。
 これは、3月13日に発表されたMV公式ティザー動画のサムネや動画の最後に映っていた、砂漠にポツンと建つ小さなガソリンスタンドだ。
 この小さな家のポーチに、3人の男たちが座っている。
 彼らは、「ディーラー(密売人)たち」。
 最初に出て来た4人の「運び屋たち」が取引する相手だ。

  写真向かって左から、

赤毛E:赤毛で細めの黒いサングラス、肘までの黒い服、黒いズボンの男。

メダル男F:首から大きなメダルを下げた、黒いサングラスで黒いタンクトップの太った男。
(この人はディマシュのボディーガード兼コンパニオンのタウさんらしい)

ディマシュのセルフィーで、タウさんとパチリ(公式インスタより)


フード男G:フードのような黒っぽい帽子をかぶり、薄めの黒サングラスに黒いあごひげ、白黒のチェック柄の上着の男。

 カットが変わり、家の窓から見た4人目の男がぼんやり映る。

スキンヘッドH:緑色っぽい上着を着た、スキンヘッドの痩せた男。

スキンヘッドH


《ヴァース2(0:53~):主人公が行動開始》

 そのころ邸宅では。
 主人公が邸宅のダイニングルームに入ってきた。
 襟を正し、気合を入れている。

意気揚々とダイニングルームに入る主人公

 
 ツインテールの女の子が、主人公の到着に手を叩いて喜び、主人公と握手する。

嬉しそうな少女、この家の子女その1

 
 玄関では、歌っている主人公がまるで「この程度は朝飯前さ」みたいに、肩先のほこりを払う仕草をして見せた。

「なーに、朝飯前さ」(マジで食ってなかったりして)


 同じく、赤白チェック柄のシャツの男の子が、主人公を見ると声を上げて喜び、主人公とハイタッチ。

「イエ-イ!」 この家の子女その2

 
 席についていた黒髪の美女が、物珍し気な目で主人公を見上げている。
 こちらとはもしかして、今回初めてお会いした感じかな?

「こいつ誰よ?」と、主人公を見る美女

 主人公、黒髪の美女にご挨拶のキスをする。
 ご安心ください、唇じゃなくて、額のあたりです、たぶん。

 どうやら主人公のピンクスーツは、麻薬王のファミリーとすでに相当仲良くなっているらしい。

 

 (🕵️‍♂️ ちょっと解説1:麻薬王の家族)

 この麻薬王の家族、どうなってるのかな?
 女の子は小学生の高学年ぐらい、男の子は小学校低学年ぐらいで、髪の毛の様子から、このふたりは母親が違うのかもしれない。
 女の子の母親が麻薬王の最初の奥さんで、黒人系かな?  でも女の子の顔立ちがちょっと東洋系っぽい感じもある。
 男の子の母親が、2番目の奥さんかな? 男の子の顔が可愛いので、母親はミス・ナントカみたいな女性だったかもしれない。
 黒髪の美女が、麻薬王の3番目の奥さんか、新しい彼女かな?
 男の子の母親の可能性もあるけど、息子が主人公とあれだけ親し気だったら、その母親も主人公とすでに知り合いのはずなので、どうやら初対面らしい彼女は母親ではなく、つい最近ファミリーに加わったのだろう。
(全部テキトーに言ってるだけなので信用しないでください😂)🕵️‍♂️


 さて、再びガソリンスタンドの取引現場。
 マリファナを持って来たベンツの「運び屋」の男たちが到着して、「ディーラー」の男たちと会っている。

ガソリンスタンドで両者ご対面。「おう」「ああ」

 
 邸宅では、青い上着を着たあごひげの「麻薬王」が、主人公と黒髪の美女に向かって、盛んに何かをまくしたてている。
 たぶん美女に向かって、こいつは信用ならないディーラー側の男だから、言うことを聞くなとかナントカ。
 主人公のほうは、そんなことはお構いなしに美女のあごに手をやり、
「星をたたえた黒い瞳のお嬢さん、あなたはなんて美しい人なんだ、知り合えて光栄ですよ」
みたいな甘い言葉をささやいている(ように見える)。

 上の写真は 「鼻持ちならない主人公は美女に甘い言葉をささやき、犯罪者の麻薬王は彼女にこんな悪いヤツの話なんか聞くなと自分を棚に上げて文句を言っている」という、非常に分かりやすいコメディ・カット。


 かたや取引現場では、運び屋のオールバックBが、持っていた大きなカバンをディーラー側の男に渡している。
 こういう取引の場面では、最も危険で難しい局面が来ていた。

 邸宅のダイニング。
 麻薬王が立ち上がろうとして、でも主人公に頭を押さえつけられて、椅子に座らされていた。
 これで主人公と麻薬王の心理的な力関係がわかる。
 麻薬王は意外と弱気(笑)

 部屋の片隅には、おそらく麻薬王の母親の老女が車いすに座っている。

 主人公は、テーブルにあった麻薬王のケータイをさりげなく手に取った。
 なにをするつもり!?

気付かれないうちに、麻薬王のケータイを取る主人公


 (🕵️‍♂️ ちょっと解説2:この物語の年代は2000年代前半かも)

 MVのケータイは、現在のiPhoneなどのスマホが出る以前の携帯電話で、日本ではガラケー、海外ではフィーチャーフォンと言い、折り畳み式、スライド式、MVに出て来たストレート式があった。
 このケータイの全盛期が2000~2010年頃。
 なので、おそらくだけどこの物語の年代は、2000年代前半ごろではないかと思う。
 ちなみに、初代スマホのiPhoneとAndroidが発表されたのは、2007年。🕵️‍♂️


 さて。
 取引現場でだれかがズボンの後ろに刺していた拳銃を後ろ手に掴んだ。
 その男、赤毛Eがその拳銃を取り出して、「運び屋」側に突きつけた!

  その瞬間、ダイニングにいる主人公が左手に持った麻薬王のケータイで、登録してあった取引相手である「ディーラー」側のダイヤルに電話をかけ始めた!

電話をかける主人公の手。直前にはケータイの画面に「Dealer」とあった。


 主人公は大胆にも、テーブルの上に土足で上がると、ケータイに向かってなにかを話し始めた。

椅子からテーブルへするするっと上がってしまう主人公を見て、驚く麻薬王とその母親


 (🕵️‍♂️ ちょっと解説3:テーブルに上がった主人公の思惑)

 なんでまた主人公は、テーブルに上がる必要があるの!?
 主人公は、外連味たっぷり自信たっぷりな動きをして見せて、この部屋の人々を制圧してるってこともある。麻薬王のママが、この男なにをするんだろう?みたいにポカンと主人公を見ているみたいに。
 でも、主人公はまず第一に、ケータイを横から誰かに奪い取られないよう、高いところに避難したのだ。
 違法麻薬製造販売をやっている犯罪者の麻薬王にも、それなりに道徳心はあり、上流の人間(になろう)として子供達を厳しくしつけているらしい。
 主人公は、ここの家族達は料理が並んだ食卓に土足で上がるなどという「はしたないこと」はしないと判断して、テーブルに上がったのだ。🕵️‍♂️


《コーラス2(1:16~):主人公がア・カペラを歌い出す》

 取引現場では、ディーラーが運び屋に拳銃を突きつけて、物々しい雰囲気になっていた。

銃を突き付けられ、ホールドアップする運び屋たち

 
 こういう時、映画ではたいてい、持って来たもの(ブツか金)を先に渡した方が危険な目に合わされる。
 このMVでも、先にブツを渡した運び屋側が、先手を取られた。
 とはいえこれも、取引の常套句的な流れではある。

 だがその時、現場のどこかでケータイの着信音が鳴り出した。
「トゥルルルル」

 主人公は、テーブルの上でケータイに向かって、馬鹿でかい声で「ア・カペラ」を歌っている。
 もしかしたら、電話の呼び出し音を紛らわすための歌なのかもしれない。

「 ♪ アーアーアーアーーーア~アアアー」

 その歌を聴いて、黒髪の美女は主人公にちょっと惹きつけられている。
 どうやら彼らには、呼び出し音は聴こえていないようだ。
 良かったね主人公。
 ファミリーたちは、土足でテーブルに上がって歌を歌い出すという主人公の意味不明な言動にあっけにとられ、金縛り状態なのかもしれない(笑)

 玄関の主人公は両手を広げ、自分の行動が効果をもたらすようにパワーを使っている。
 このあたりで「玄関の主人公」の場面は、一種の心象風景なんだろうなと気がついたりする。

 で、ひきつづき取引現場の場面。
 ディーラ-のメダル男Fが、鳴り出したケータイをカバンから取り出して、スキンヘッドHに渡した。
 それを見た運び屋のオールバックBが、ホールドアップしたまま、「いったい何が起こってるんだ?」とクエスチョン顔で首を横に振った。

 スキンヘッドHが、ケータイを耳に当てると……

「電話の音」

「Don't play with the fire, ready for the smoke.」
(拳銃は使うな、取引の用意をするんだ)

 ケータイから聞こえてきた声に驚いたディーラー側の全員が、ケータイを渡してきたメダル男Fを見た。

「お前、説明しろや」とスキンヘッド、「オ、オレ!?」と、メダル男


 (🕵️‍♂️ ちょっと解説4:電話に出た彼らが何に驚いているのか)

 おそらく、こういうことだろう。
 鳴り出したケータイは、麻薬王の側のものだ。
 着信のナンバーも、麻薬王のケータイのナンバーだ。
 そのケータイは、運び屋が持って来たカバンの中に入っていた。
 だが、そのケータイから聞こえてきたのは、運び屋の元締めである麻薬王の声、ではなく、ディーラー側のボス、ピンクスーツの主人公の声なのだ。
(ピンクスーツがディーラーのボスだというのは、この時点では仮定の話)
 ディーラーたちが聞いていたであろう事前の計画、
「マリファナがこっちに渡ったら、ヤツらを脅して安く買い叩いてヤツらを帰らせろ、なんならケガさせてもいい(ヤツらを脅してブツを巻き上げろ、歯向かったら殺せ、だったかもしれない)」
みたいな段取りとはまったく違う命令を出す自分たちのボスの声が、麻薬王からの着信で、運び屋のケータイから聞こえて来たので、ディーラーたちが驚いているのだ。🕵️‍♂️

 取り引き現場では、主人公が渾身の力で歌う美しいア・カペラが、ケータイから聞こえていた。

テーブルの上で、渾身の力で歌う主人公

 そのケータイを持っているディーラー側のスキンヘッドHが、運び屋側の男たちに向かって「お前らどういうことか知ってっか?」という表情をしたのだろう。
 運び屋の男たちが「俺らも知らんがな」というジェスチャーを両手でしてみせている。
 なにせ自分たちのボスの着信から、知らない他人の男の、しかも意味不明な「歌声」が聞こえているのだからねえ。

「ワカリマセーン」「知らんがな」「ポカーン」「なんのことやら」

 さて。
 ここで玄関の主人公は、ア・カペラを歌い終わったあと、今まで見て来たピンクスーツの主人公には似つかわしくない、何かを懸念するような、真剣で不安そうな、そして何かを願っているかのような表情を見せた。

玄関のピンクスーツの、何かを案じる顔つき


《 ブリッジ(1:38~):主人公の思惑と、麻薬王や取引現場の連中の困惑とが、せめぎ合う》

 拳銃を突きつけながらも、主人公の歌を聴いてなんだか楽しくなったのか、ニヤニヤしているディーラー側の赤毛E。
 ケータイを持つスキンヘッドHなどは、もはや歌に合わせて肩でリズムを取り始めている。

か、体が勝手にリズムを……と、スキンヘッドH

 ダイニングルームでは、テーブルの上の主人公が気取った仕草でズボンのポケットに手を入れて、歌い続けている。
 麻薬王はあいかわらず美女に文句をまくしたてているが、美女はもう主人公にハートマークでくぎ付け状態。
 取引現場では、運び屋側のオールバック男Bも、困惑しながらすでにうっすらリズムを取っているが、口ひげ男Aはまだキョロキョロしている。
 ディーラー側の4人の男たちは、もはや全員、ケータイから聞こえる歌にノリ始めている。

 (🕵️‍♂️ ちょっと解説5:音楽のリズム効果)

 実際にこのブリッジは、ドンブラのスラップ気味(注)で歯切れ良いリズムと、3拍目を頭打ちする拍子木のようなカンカンいう音、小気味よく単語を分解して歌うディマシュの英語の音と相まって、この曲の中で一番リズムが強い箇所だ。

(注:スラップとは「(平手で)打つ」。弦を指で引っ掛けて、手首の回転を使って素早くはじく奏法。日本では「チョッパー」とも言う)

 手前のコーラスのア・カペラがゆったりした「横ノリ」だったのに対し、このブリッジでは急にはっきりした「縦ノリ」になっており、視聴者はここで画面の登場人物たちと同じように思わず体が動いてしまうように出来ている。誘導が非常に上手いと思った。私もここ、ズンチャカ楽しく踊りながら文章書いてます(笑)
 MVのシナリオがこのリズムの変化にうまく合わせていて、非常に面白く出来ていると思う。🕵️‍♂️
 

 ダイニングルームでは、麻薬王が美女に文句を言うのをあきらめ、主人公の歌を聴き始めた。

なんか不思議な動きで踊る主人公

 玄関で「イエ~エ~」と歌う主人公が、なんかちょっとコメディアンっぽいダンスを披露。このダンス、結構好き💖
 麻薬王が自分の歌を聴き始めたので、調子が出て来たのかな?(笑)

 すでにノリノリの子供達、楽し気に踊る美女、手でテンポを取る麻薬王。

踊り出している皆さん(麻薬王含む)

 玄関の主人公は、ちょっとガッツポーズ。

自分の世界に入っちゃったピンクスーツ

そして、スプーンを持ったまま、ニッコニコで踊るボスの母親。

ノリノリの母親+スプーン


《コーラス3(1:58~):困惑しつつも全員が、特に麻薬王が、主人公の歌に踊り始める》

 現場ではどっちの側の男たちも、困惑しつつ、ついつい主人公の歌に合わせて踊り出していた。
 玄関に控えている主人公のボディーガード2人も、足を屈伸させて踊っている。

歌に合わせて踊るボディーガードたち、これも仕事なんで(笑)

 すると今度は麻薬王が、心象風景の玄関で、
「拳銃は使うな、取引の用意をするんだ」
を復唱してしまった。
 どうやら麻薬王も、主人公の術中にハマってしまったようだ。

うっかり「警句」を口にする麻薬王



《コーラス4(2:21~):全員がノリノリで踊るが、そこへやってきたのは…… ♫アイヤイヤイヤイヤイヤアアア》

 ダイニングテーブルの上を歩く主人公。
 まるで猫のように料理のお皿をうまく避けている。

食べ物のお皿を避けて歩く猫……じゃなかった主人公


テーブルの上で美声を披露する主人公、鏡にも映っているのでちょっとナルシスティック

 取引現場では、男たちがついにステップまで踏み始めた。
 ダイニングルームで、主人公の歌に酔いしれる美女たち。
 キョロキョロしていた口ひげ男Aも、両手で波乗りのファンキーダンス。

口ひげ男Aは波乗りジョニー?(全然違う)

 ダイニングルームの食卓で、目を閉じてうっとりと歌を聴き、踊っている麻薬王。

「フンフンフーン♪」


 その時!
 突然、取引現場に赤いランプのちらつきが見え始めた。
 驚いてその方角を見る、ディーラーの男たち。

「は?」「ひっ?」「へ?」「ほ?」 (「ふ?」担当は今回不在)


 玄関の主人公が、歌いながら本物の下向きガッツポーズを取った。
 どうやら彼の願い通りになったようだ。

ちょっと飛び跳ねて、下向きガッツポーズをする直前の主人公


 運び屋の男たちも、どうなってるんだ?という顔でランプの方角を指さして、驚いている。
 そして、赤いランプの正体を知り、慌てて逃げだす運び屋たち。

「パトライトだ!」「なんだとおー!」


 玄関では、ピンクスーツが嬉しそうに笑いながら歌っている。

 ダイニングルームでは、やっとテーブルから降りて来たピンクスーツが、美女と戯れながら彼女に自分の歌を聴かせ、ケータイで現場の連中にも聴かせている。
 もう、余裕ぶっこいてます(笑)

 主人公が余裕ぶっこいている理由は、すでにMVを見ている皆さんはご存じだろうが、主人公のピンクスーツがケータイに向かって歌い出してから、2分が経過したからだ。(ただしMV上では約1分)


 現場では、困惑しながら逃げ出すディーラーの男たち。
 スキンヘッドHなど、もうオロオロしてしまって、どっちに逃げたらいいか分からないらしい。

「お、俺っち、どうしたらええの?」とスキンヘッドH

 用済みとなったため、テーブルの上に放り出された、麻薬王のケータイ。

ディマシュのポイッとシリーズ、ケータイ編(笑)


 玄関の主人公が、歌のエンド・ポーズを取った。

 楽し気に踊っていた麻薬王、パトカーのサイレンを聞いて我に返ると……

ほよ?

 一目散に逃げだした。

うへえ!


 暗転。

「トゥルルルル、トゥルルルル」

 電話の呼び出し音。


《音楽のあと(2:50~):ネタ晴らしのお時間です(笑)》

 おや?
 コメディ映画でよく聞く、お話のオチを誘導する音楽が鳴り出した。
 西海岸のどこかの都市(たぶんLA)の空撮。

「グワァアアアア~~~ン!」と、これみよがしに鳴り響く、銅鑼の音。

「DAY BEFORE(前日)」と、まぁデカデカと(笑)

銅鑼の音と、Warning(警戒)をあらわす黄色の文字


 どこかの誰かの書斎のようだ。

固定電話、登場!(笑)

 奥の本棚の前にいた若い男が、手に洋書を持ったまま、電話に出た。



 (🕵️‍♂️ ホントの解説6:男が持つ洋書)

 若い男が持っている洋書は、『カザフスタン国家大百科事典(National Encyclopaedia of Kazakhstan)(Қазақстан: Ұлттық энциклопедия)』だそうだ。
 インスタグラムで、「ディマシュ・ユーラシアンFC」がDQチームからこの情報を得たという投稿があった。
 MVを見ている時には、LAだからMJの本かなと?思ったけど、表紙に見える金色の人物はMJではなく、カザフスタンを象徴する「ゴールデン・マン」だった。🕵️‍♂️


 さて。
 電話に出た人物の顔が映ると、あれっ? 主人公ではないか。
 でもさっきのピンクスーツと違って、ちょっとボサっとしたオールバックの髪と、黒っぽい洗いざらしのシャツで、とってもフツーっぽい。
 ていうか、とってもカワイイ男の子なんだが?

 電話から、女性の声が聞こえてきた。

 「エージェントDQ、助けが必要です。
 麻薬王の電話から麻薬の売人に、2分ほど電話をかけ続ける必要があるのです。
 出来ますか?」

 エージェントDQだとぉ!??


 (🕵️‍♂️ ちょっと解説7:逆探知)

 これは昔の警察映画などでよく見た、逆探知で通話の場所を探知する方法だ。人質や犯人の場所を特定するため、通話時間を延ばす必要があり、犯人を怒らせて電話を切られないようにするやり取りが物語の重要なポイントだった。現在はGPSで現場を特定したりするが、かつては逆探知はいろいろ大変だったのだ。
 このMVの舞台となっているカリフォルニア州(出て来た地図からの判断)は、2018年に嗜好用マリファナが解禁されているため、MVの物語はそれ以前の話になり、携帯電話の解説で書いたように、2000年代前半頃だろうと思われる。

 つまり、ピンクスーツの主人公は警察の「潜入捜査員」で、彼はもしかしたらもう何年も前から今回のディーラー側のボスとして麻薬王との取引まで持ち込むことに尽力し、彼ら全員を一網打尽にする手はずを整えていたのかもしれない。
 このたびやっと、その目途がついた。
 でも、取引現場を現行犯で押さえないと逮捕できない、とかナントカいう理由なのだろう。
 秘密の取引現場を特定するための逆探知に2分かかるから、助けが必要なのだ、と。🕵️‍♂️


 で、「エージェントDQ」(ディマシュ公式のイニシャル)と呼ばれた、このめっちゃカワイイ若い男は、電話の問いかけに、ひとことで答えた。

「簡単さ」

 僕が日頃「karaoke(カラオーケ)」で鍛えてる歌で、通話をいくらでも伸ばせるよ、てか?(笑)

 

 一見落着ぅ~! 「 ♪ タタタタン!」

「えへへ、みんなをケムに巻いたった💖」と、映像の向こう側のだれかさん


🌷🌷🌷🌷🌷


(以下、MVの解説と感想です)


【玄関で歌うピンクスーツの男の正体】

 実は動画のリリース時間を待っている間、画面に映っているMVのサムネを見て、ピンクスーツの男はもしかして「いいヤツ」かも?と、なんとなく思っていた。
 サムネの右側にデカデカと映っているピンクスーツ(ディマシュ)の表情が、ミョーにさわやかだったからだ(笑)
 サムネの下のほうに、電話をしている黒シャツのディマシュがいるのにも気づいたが、これは見終わるまでどういう人物か分からなかった。
 見終わる頃にはピンクスーツの男が潜入捜査員だとわかり、双子座のディマシュの2面性が非常によくわかるMVになっていた(笑)



【玄関という場所の意味】

 解説の途中にも書いたが、主人公が麻薬王の邸宅の玄関で歌う場面は、「玄関」が「心象風景の場所」で、玄関で歌う様子が「心理描写の場面」なのだろう。
 タイトルの時、玄関で静かにたたずむピンクスーツは、これから自分が始める「2重のだまし」の現場を前にして、心を鎮め、架空の人物になり切る準備、というか、瞑想をしているらしい。
 取引現場での事態が進行し、彼自身がダイニングルームに乗り込んでからは、玄関の場面が彼の「心理描写」になった。
 また、同じ心象風景の玄関で、麻薬王がコーラスの警句を怖い顔で話している顔が映るが、これも麻薬王の「心理描写」で、彼はこの時点でピンクスーツの男、つまり警察の手に落ちたということだろう。



【歌詞の意味の変更 ①:言葉遊びとして】

 歌詞の内容は、元々の歌の意味から、「暗喩の方」が表に出て来たような状態になった。
 ヴァース1は、取引現場に麻薬王側の運び屋が到着するのを待っている時の、主人公の心情になっている。

「この世界を自分の舞台だと感じるから」
➡ 最後に出て来た、緊張感のないフツーの男の子が、自分の見せ場の到来にワクワクしている様子。

「栄光の波を起こすためにここにいるから」
➡ 栄光とはつまり、潜入捜査が成功して警察が勝つこと。

「近づき過ぎると、ベイビー、やけどするからね」
➡ 犯罪者が警察官と出会えば、そりゃーもう、やけどのひとつやふたつやみっつやよっつ……。

「ロックして、ロードして、準備完了――」
➡ コーラス1前では、主人公は取引現場に両者が到着した頃合いを見計っていて、コーラス2前では主人公が電話をかける準備に入っている。

 コーラス部の歌詞は、もともとは恋愛沙汰のゴタゴタを歌っていたのに、MVでは麻薬取り引きの予定変更を告げる「警句」になった。
「SMOKE」はつまり「マリファナを吸うこと」。
「ドンパチせず、ちゃんとマリファナ取引の準備をしろ」と、警告している歌詞になってしまった。

 もしかしたらディマシュは、「Bad blood」や「Locked, loaded,」「the bullet」「double closs」「engine」などの単語から、警察が犯罪を暴く物語の映画を組み立てたのかもしれない。

 映画と言えば、スマホになる前の携帯電話(フィーチャーフォン、日本ではガラケー)が出て来た頃、その機能を踏まえたクライム・サスペンス系の映画が沢山作られ、地味に良い作品をよく見かけた。
 そのまんまのタイトルの『セルラー(Cellular)』(2004米)がいちばん有名かな。キム・ベイシンガー主演で、若いジェイソン・ステイサムやクリス・エヴァンスらも出演していて、もーの凄く面白かったのでお勧めです。(「セルラー」は、無線通信方式の携帯電話セルラーホンのこと)

 ディマシュは言葉遊び的に英語という外国語の単語をつなげて、諜報部員が潜入捜査をする物語を思いついたのだろうと思う。
 もしもそういう手法だったとしたら、それは「三題噺」だ。
 落語の舞台でお客から3つの関係ない単語をもらって、即興で落語を作る形態のことだ。
 しかもこのお話だったら、首から金のネックレスをジャラジャラぶら下げたあのとんでもないピンクスーツも「別人格」ってことでオッケーで、悪役も正義の味方も両方演じることが出来て、ディマシュ的にはサイコーの役回りだ(笑)

 お話自体はすごく単純で、映画好きならだれでも思い浮かべる内容なんだけど、それを映像にする監督やカメラマンや俳優さん達がみんな大体ハイレベルなので、退屈する暇のない、良い作品になっている。
 しかも、途中で主人公の心象風景的な「歌うディマシュ」も有りの、ミュージックビデオとしてもちゃんとした作品に仕上がった。
 ファンとしては、ピンクスーツのディマシュが恥ずかしいだけで(笑)
 この感想文に使うため、MVから山のようにスクショしたからもう慣れたけど(笑)



【ディマシュの、言語に対する感覚の異常性】

 この「音楽とMVでの歌詞の意味の変更」は、前のMV『When I've Got You』でもすでにその傾向が出ていたが、英語のネイティブスピーカーじゃないディマシュだから、こういった英単語の意味の多重性に気がついて、利用できるんじゃないかと思う。
 英語に少しだけ慣れてる程度の私でさえ、最初に「fire(炎)」の英単語を見聞きしたら、次の「smoke」は反射的に「炎の煙」だと判断してしまって、「マリファナの煙」とは全く思わないからだ。

 こういうことが出来るのは、ディマシュが持つ「言語に対する感覚」が、普通の人間と違って、相当に「変わっている」からではないかと思う。
 普通に考えれば、彼の第一言語(母語 mother tongue)はカザフスタン語で、第二言語がロシア語だ(逆かもしれないが)。
 だが、おそらくなのだが、彼の第一言語はあくまでも「音楽」であって、人間の言語はどの国の言葉であっても、彼にとってはすべて「それ以外」でしかないのだ。(カザフスタン語が第二言語で、ロシア語が第三言語となるにしても、だ)
 彼にとって「smoke」は「スモーク smóuk 」という音でしかなく、その意味は、彼の頭に後付けで出来た英語の辞書のページにずらーっと「並列に」並んでいるのだろうな、と想像する。
 そして、ディマシュ的には、意味はどれでもいいのである(笑)

 ディマシュは英語の発音どころか、話すこと自体があまり上手くないのだが、彼の言語的な特異性、天才性といってもいいが、それはこういうところにあるので、頭をちょっとだけ「音楽寄り」に切り替えて、彼の歌唱をもっと素朴に楽しんでいただきたいなーと私は思っている。


【歌詞の意味の変更 ②:歌手本人による無意識の修正(かもしれない?)】

 作詞家のキャンディス・ケリー氏は、Dimash Newsに掲載されたインタビューで、この曲の主人公はいわゆる悪い男で、自分に恋した女性に対して「自己責任で」自分と関係しろと忠告しているのだと言う。
 (この作詞家のインタビューは、日本語訳を後日シェアする予定です)

  だが、ディマシュのボーカルからは、そのような意味合いは聴こえてこない。
 そりゃそうだ、だってディマシュの個性の中には、そういう「サイコパス」、あるいは「自己愛的人格障害」の性質はほとんどない上に、この子は基本「天然ちゃん」だからだ(笑)

 あるとすれば「天然ちゃん」にプラスして、「真面目で忍耐強い長子の性質」と「巫女的憑依(トランス)型体質」、音楽家としての「帝王的素質」みたいな感じかな。
 なので、以前投稿したこの曲の「音楽のみの動画」の妄想感想の中で、「わりと典型的な ‟ワルぶったキャラ”風なんだけど、それが主題だという気もあまりしない」と書いたように、歌詞と歌声との齟齬がちょっと大きかったのだ。

 だが、このMVではそれを逆手に取ったような構造になった。
 ディマシュはもしかしたら本人も気がつかないうちに、自分の特徴である「悪役に憑依して、なり切ることができる能力を持つ普通の人間」というキャラクターを提案してしまったのかもしれない。

 そのことが直感的にわかるのは、「コーラス2」最後の、玄関での場面。
 お話の中でもちょっと指摘したが、ヴォカリーズが終わったあとに映る、上の方を見ている時の主人公の表情だ。

玄関先の主人公、何かを案じる顔つき(この写真、お気に入りなので2回目の登場)

 
 自分のたくらみが上手くいくのかどうか、心の中では不安に思っていて、ちゃんと上手くいきますようにと願っているかのような、この表情。
 これが非常に印象に残る表情だったのだ。
 この時点では、視聴者はまだ物語の全貌を知らないのだが、主人公のこの表情を見て、MVの物語の全体像をなんとなく察することができる。

 そしてこのキャラクターであれば、ちょっと意味不明に聴こえていた歌詞の内容と、彼の声がもともと持っている「悪いことができない、良いヤツ」的な性質がうまく組み合わさって、歌詞の内容が「理由があって悪いことをしている良いヤツのひとりごと」に変化し、非常に納得のいく意味に落ち着いた。
 これはディマシュの音楽的な能力の高さと同時に、物語を語る能力の高さだろう。
 ひとことで言って、やっぱね、天才です、ハイ🤣
 この場合の天才とは、「なんか知らんけど毎回うまいこと行く」っていう意味ですがね(笑)



【カザフスタンとアメリカの監督ふたり】

 今回のMVは、カザフスタンとアメリカの合作だったそうだ。
 前回のMV『When I've Got You』を監督したガリム・アシロフさんとともに、アメリカの監督さん、Dmitry Lysanという名前が、MV概要欄のUSAクルーの監督欄にクレジットされていた。
 ディマシュの場面をアシロフさん、取引現場の場面をアメリカの監督さんが撮ったのではないかと思う。

 ディマシュがいる場面は、物語の背景や人物の役割がわかりやすい。
 ここを撮ったであろうアシロフさんは、コメディ・ドラマ出身の人。
 コメディは、面白さをもたらすシチュエーションの説明が大事で、アシロフさんはその説明が上手な感じだ。見て一瞬で分かるワイドショットが多いのだ。今回は特にコメディだからね。

 だが、ディマシュがいないマリファナ製造工場や取引現場の場面は、背景や人物の役割がぱっと見でわかりにくかった。
 私も登場人物の見分けが全然つかなくて、スクショ撮りまくって比べまくってようやく、誰がどっち陣営で何してるかが判明したくらいだ。しかも、途中で上着は変わるしバンダナ取るし、そこ変えんなよう、みたいな💦
 もうひとつ、あの中で一番重要な人物のスキンヘッドHを、あーんな見えにくい窓ガラス越しに撮らんでも……とも思ったぞ(笑)
 なので、ごくフツーに音楽を聴きながらMVを見てるだけでは、誰がどっちの陣営かさえ分からないかもと思って、今回はスクショ多めで解説した。
 そこがちょっとだけもったいなかったけど、犯罪現場なのはわかるので、まあ良しとしよう。



【MV内の2つの現場の、シンクロ具合】

 そのほか、「一見して関係なさそうな何かがシンクロしている」という特徴がディマシュのMVにはあるのだが、今回はダイニングルームと取引現場などの出来事が、きれいにシンクロしていた。

 以下、主人公のピンクスーツが麻薬王の邸宅のダイニングルームに入ってからのシンクロしている主な場面。

◉ 主人公が初対面の黒髪の美女にご挨拶 「運び屋」と「ディーラー」が初めて対面する
◉ 麻薬王が主人公と美女に文句を言う 麻薬のカバンが相手方に渡る(潜在的に危ない状況になる)
◉ 主人公が麻薬王のケータイをこっそり取る 「ディーラー」の誰かが拳銃にこっそり手をやる
◉ 赤毛が銃を相手方に突きつける 主人公が手に持ったケータイでどこかに電話をかける
◉ 主人公がテーブルの上に上がる 両者、一触即発状態になる(どっちも故意にモラルを踏み外す)
◉ 銃を突きつける男にピントが合っていない コーラス1のあと、玄関の主人公の表情(どちらも事態の推移を不安に思っている)
◉ ダイニングルームのみんなが踊り出す 現場でもみんなが踊り出す
◉ テーブルの上の主人公が、向こうに行って手前に戻る 警察が逆探知を行って、成功する
◉ 現場の男たちが仕事を放棄して逃げ出す  ケータイがテーブルに放棄される

 などなど、そんな感じのシンクロ状況。
 気がついた時には「ひょえ~っ!」ってなりました(笑)

 これまでに『Together』『The Story of One Sky』『When I've Got You』そしてこの『SMOKE』と、4つのMVのストーリーを解析したけど、どのMVも本当に素晴らしい出来だ。
 素晴らし過ぎて、世界がこれらの作品群を「発見できない」んじゃないかとさえ思う。
 MVの時間は短いが、映画で言えば「ブロックバスター(大手映画制作会社が巨額の制作費と宣伝費をかけた大作)」や、TVゲームなら「AAAゲーム作品(トリプルエー、大手ゲーム制作会社が巨額の以下同文)」並みの作品だと感じるのだ。
 とにかくシナリオが非常に優れている。ストーリーが破綻なく練られていて、小技を使うのが非常に上手く、音楽と映像を有機的にシンクロさせる方法に毎回驚かされる。これも、ディマシュの第一言語が「音楽」で、彼が頭の中では動く映像でものを考えているからだろうという気がする。
 音楽と歌が世界最高のクオリティだから、映像もそれに引っ張られて世界最高クオリティにおのずとなってしまうんだろうな。
 それは、やっぱディマシュが「天然ちゃん」で、こういう世界レベルの仕事を「天然で!」出来てしまうんだろうなと思ったりしている。


【エージェントDQ、登場!】

 最後に「エージェントDQ」が正体をあらわすのだが、これがまあ~!
 どこが諜報部員やねん!というほど超絶キュートなディマシュで(笑)
 それなのに「Easy」と言ったその声は、このキュートさに似つかわしくないとも思える、低くて深くてよく響く、美し~いバリトン。
 あの低音の「Easy」を聴くと、そのギャップに毎回「ひょえ~っっっ!」と鳥肌が立ちます(笑)

なんかもう10代みたいな(いやホントは「真面目な顔をした幼稚園児」だと思ってる)可愛らしさ



【音楽家としてのディマシュの「信念」】

 このMVの隠れた、ていうか全然隠してないけど、ディマシュが意図したコンセプトは、「音楽はこの世界に平和をもたらす」という、音楽家としての彼の「信念」だ。
 MVでは、取引現場の悪い連中が踊り出しただけでなく、麻薬王まで懐柔されて歌い出すまでになってしまった。
 もちろんこれはディマシュのミュージック・ビデオだから、そういう風に作られている。
 その「信念」は、傍から見れば、ある意味でとてもおとぎ話的だし、現実を知らない楽観主義的だと思われてしまうかもしれない。
 だが彼のその「音楽家としての信念」を、私は美しいと思う。
 ディマシュのコンサートを見れば、世界中から彼のファンが集まり、しかも現在敵対する国同士のファンも一緒になって彼の歌をカザフ語で歌い、ひとつの家族のように心をひとつにして政治的な壁を乗り越えていくのを目撃することができる。
 この世界には、彼のように人間の「善性」を無邪気に、そして真剣に信じる人間が必要なのだ。


【まとめのお時間です】

 そろそろまとめたいが、その前に。
 なぜディマシュはこのMVを「イスタンブール・ライブ」のわずか5日後の29日、「アスタナ時間で夜8時」にリリースしたのか?
 なにせまだイスタンブール・ライブの興奮冷めやらぬ時期だったし、私はこの時まだライブの感想を書き終えてなかったし😂

 もしかしてディマシュ、カザフスタンの実家で、家族みんなといっしょにMVを見たかった、とか?
 んで、家族みんなが最後に爆笑するのを見たかった、とか?(笑)

 ともかくですよ、この作品は、
①   3月13日の『SMOKE』ティザー動画発表の時の不意打ちに、爆笑
②   4月25日の『音楽のみリリース』の時、0時ギリギリの54分にYouTubeにリリースして、爆笑
③   すぐに来たパフォーマンス・ビデオのダンスで、ディマシュのあまりに微笑ましい「へたっぴさ」に、爆笑
④   そしてMVのオチで爆笑したと同時に、超絶キュートな「エージェントDQ」にニッコリ🥰

 という風に、最初から最後まで笑かしてくれるという、非常に楽しい作品となった(笑)
 歌の最後のコーラスに出てくるあの「♪アイヤイヤイヤイヤイヤアアア」の合いの手を聴けば、ディマシュは最初っから笑かす気満々だったんだろうと思う。
 でもまさか、こんなに徹頭徹尾そうなってしまうってのは、ディマシュの意志の強さなんだろうか。
 それとも、「天然ちゃん大炸裂!」なんだろうか(笑)

 おまけ。
 たまたまなんだけど、WHOの「世界禁煙デー」及び「世界禁煙週間」である5月31日に、『SMOKE(煙草)』に関するこのMVの感想を書き始めたという「すんごい皮肉」にも、気がついた時には爆笑してしまった🤣

 とはいえ、「超絶キュートなエージェントDQ」は、マリファナの取引現場の摘発に大成功したので、趣旨としてはいちおう合ってるってことになるのかな?(笑)


(あー楽しかった、終了で~す🌷⭐💖)


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