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「体調悪いけど、仕事行ってきた」のコスト、年間・1人43万円。

今日は久々に論文の紹介です。
みなさん、プレゼンティーズムという言葉を知っていますか?
簡単に言うと「体調悪いけど、頑張って仕事行ってきたわー」という状況における生産性低下のことです。

https://note.com/yoko_pt_20/n/n81a04423e4af

同じ給料を出していても生産性が低くなるという意味では、企業側の損失というイメージが強いかもしれません。

そのプレゼンティーズムは実際どのくらいの損失額が出ているのか?
実際に調べた論文がこちら。

Tomohisa Nagata,:Total Health-Related Costs Due to Absenteeism, Presenteeism, and Medical and Pharmaceutical Expenses in Japanese Employers,J Occup Environ Med. 2018 May; 60(5): e273–e280.

Published online 2018 Feb 2. doi: 10.1097/JOM.0000000000001291

かなりセンセーショナルな内容で、産業保健分野では、かなり引用されてる文献です。

その要約は次のとおり

目的:

日本の製薬会社 4 社の従業員のコストの内訳 (欠勤、出勤、医療/薬剤費) を詳細に調査した

方法:

これは横断的な研究により欠勤と出勤は労働者の自己記入式アンケートによって測定、そのコストは人的資本の計算式を使用して推定した。プレゼンティーイズムは、仕事の質に対する計算式によって評価した。医療費や薬剤費は保険金より計算された。

結果:

欠勤による金銭的価値は年間 1 人当たり 520 ドル (11%)、プレゼンティーズムによる金銭的価値は 3,055 ドル (64%)、医療/薬剤費は 1,165 ドル (25%) であった。慢性疾患による総費用負担のうち最も高い 2 つは、精神的 (行動的) 健康状態と筋骨格系疾患に関連していた。

生産性の低下が大きかった症状は、首や肩の痛み、睡眠不足、腰痛、ドライアイ、緑内障、うつ病であった

年間一人当たりの健康関連コスト。プレゼンティーズムは64%の3055ドルに当たる。


ダントツに多いのはメンタル疾患と骨格筋疾患。


この研究は2018年に発表されたコロナ前。

テレワークが普及したコロナ以降は、作業環境が整わない中でPC作業を行う機会も増えたと思われ、骨格筋疾患の発症率はより上がっているのではないかと推察しています。

ちなみに時間当たり31ドル(時給換算で4370円)の給与形態での計算であり、製薬会社のみを対象した研究であることも解釈の制限となります。

それにしても年間、一人当たり3055ドル。
今のレート(1ドル140円)にしてみたら42万7000円です。

企業側にしてみたら、人件費として払っているけど、これだけの額が生産性が損なわれていることになります。
(ちなみに給料半分の場合であれば約21万円のコストがかかっていると計算します。)

永田先生は考察にて、検査対象者はかなりの労働時間をコンピューター使用に費やしていると特徴づけています。
コンピューターの長時間使用はVDT症候群をもたらします。
文献にもよりますが、長時間のコンピューター使用により70−80%の成人がはVDT症候群に悩まされています。

プレゼンティーズムの原因にVDT症候群が含まれているとすれば、企業に理学療法士が貢献できる部分はとても大きい。
一人当たり年間40万円を超える損失額を、理学療法士が改善できるかもしれない。

すごい可能性があると思っています。

私の夢は、企業で理学療法士が必要とされる未来を作ること。
働く人が困ったときに、理学療法士がすぐに相談に乗れる環境を作ること。

この文献を足がかりに、VDT症候群に興味を持ってくれる企業様に、どんどん理学療法士を紹介し、参入の手立てをつかんできたいと思います。




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