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オワハラ?について、就活最前線の現場で感じたこと

ある会社から内定をもらった学生が、こんな話をしてくれた。

実際には「内定」でなく「合格」。
入社の意志を表明した段階で「内定」に変わるとのこと。
逆に他社と検討する場合は、検討相手と企業名を知らせてほしいとのこと。

へえええ、そんなやり方もあるのか、と少し感心してしまった。

「合格」とすることで一定数の学生を確保しながらも、学生の職業選択の自由を保障できるからだ。

日本国憲法(昭和21年憲法)第22条第1項では、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する。」と規定されており、いわゆる職業選択の自由を保障しているととらえられる。

学生の就職活動も当然ながら、自分で職業を選択できる権利がある。


内定が多く出る季節は、早起きが気持ち良くなってきますね

その一方で企業としては採用したい学生を確保するのは一苦労だ。
定年退職が伸びたとはいえ、会社に在籍する一定数は必ず退職する。
その穴を埋めるのが新卒採用だが、企業が成長を求めるならば、少しでも優秀な人材を一定数確保したいと思うのは当然だ。

だから、時に行き過ぎた行動が、「就職活動終われハラスメント」になってしまうのではないか。

その様は年々巧妙…というか、いろんな形で展開されている印象を受ける。

例えば、企業の内定承諾書の文言の中には、「この書類の提出をもって就職活動をやめることを誓います。破って法的措置を取られても、文句は言いません」といった言葉がつづられている。
内容はうる覚えで恐縮だが、学生が一筆書くのではない。企業側が用意しているから驚きだ。

あるいは新卒エージェントに紹介してもらった企業から内定をもらった場合は、エージェントから「終わらせてね、就職活動」といわれるとか、言われないとか。

個人的には、企業の気持ちはわからないでもないが、業界トップの企業でさえもこんなことをやっているのを知ると、そこまで学生を縛っていいものな
のかと、なんともいたたまれない気持ちになる。


若かりしころ、私自身も内定辞退した経験がある。


マスコミ志望だった私は活動が難航していたのもあり、並行してほかの業界の企業も応募し、ありがたいことにある企業から内定をもらった。
それでもどうしてもマスコミにこだわっていた私は、その後もしつこく活動を続け、地方新聞社に滑り込むことができた。おりしもプロ野球の日本シリーズが開催されていた時期だった。

そんな時に、当初内定をもらっていた会社から電話があった。通信教育の課題提出がなかったことを不審に思い、人事担当者が電話をかけてきたのだ。電話を受けた母に促され、恐る恐る連絡し、六本木の本社に赴いた。通信教育の未提出を詫びた上で、他社より内定をもらってそちらに行きたい旨を伝えた。

すると人事担当者は、私をやさしく諭すように語りかけた。

「あなたがマスコミに行きたい気持ちは前にお話ししていたから知ってましたし、こうなることは薄々わかってました。だから、どうかあなたが私たちに恥じない、立派な社会人になってください」

もう30年近くも前のことだから、記憶も薄れてきているが、あの日の言われた言葉は折に触れて思い出す。
立派な社会人になれたかはわからないが、あの日の懐の深い、彼らの言葉のおかげで、今の私があるのだ。

これから社会にはばたく学生こそ、これからの社会を作る人材でもある。
その学生が納得いく進路選択ができるように、企業側も温かい目で見守ってほしいと感じる。

もちろん企業側だけが努力しなければならないわけではない。
困りごとには速やかに連絡を入れるなど、企業に対する学生側の誠意も必要だと感じているし、困ったことがあったら大学のキャリアセンターに相談してほしい。
多くの大学の職員は、みんなの力になってくれるから。

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