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【往復書簡13通目】「いちご王国」栃木ならではのタルティーヌでピクニックを


みやうへ

菜園の隣の雑木林に野生のキジが出没したり、麦畑の早々と膨らんだ穂が風になびいたり、雑木林に絡んだ山藤がふうんわりと咲きはじめると、まるで「もう、春本番だよ。ポタジェ(菜園)の仕事ものんびりしていられない、早くやらないと!」
とせかされているようで、なんとも忙しい春を過ごしています。
みやうは、新居に念願の「食べられる庭」づくりを始めたんだね。そちらも忙しくしているだろうか。札幌の果樹庭で多くの果樹を育てていたから、わざわざ私が言うことじゃないのかもしれないけど、植物栽培には土づくりと環境づくりが一番肝心。日々できるだけ植物に感性を寄り添わせて、「何が必要?何をしたらいい?」てよくよく聞いてあげるいいよ。手間暇かけるのはもちろん、太陽の当たり方や水の量、風向きにもケアして、楽しんで取り組むことができたら、きっと多くの恵みを自然は返してくれるんじゃないかな。

関西の春の味覚「ウスイエンドウのリゾット」ごちそうさまでした。これよこれ!みやうの作るリゾット。お手紙を読みながら、妄想の世界でリゾットをご馳走になって、快楽に満ちている私がいるわ。(笑) 実は「ウスイエンドウ」という名前は初耳だったのだけど、このお手紙をもらってから、何にかの料理家のエッセイやブログに、「関西の春の食材といえばウスイエンドウ」と言った具合に紹介されていることに気づいたの。遠く離れた土地に暮らす友人と、こうして季節のやり取りをしているからこそ新しい食材に気づいて、少しだけ旬の食材の《通》になれたみたいで嬉しいよ。ふふふ。

始めてからちょうど丸一年経つこの往復書簡。お互いの暮らす土地の《旬を味わう》という「ちょっと嬉しい」体験が積み重なっていくところが、私としては気に入っている。20代の頃、両親が夏休みに安曇野を訪れた時に買ってきてくれた本があってね。それは、安曇野に移住した料理家が、自分で野菜を栽培しながら、日常の暮らしやおもてなしの食卓を12ヶ月に渡って綴った本なのだけど、当時その本を隅々まで読んでいた記憶があるの。自分や自分の周りの人に食べさせたい食材を、自分の手で手間暇かけて育て、旬の野菜を中心にしてシンプルかつ丁寧なおもてなしをする、その一連の流れのなんと豊かで美しいことかーて感動したんだよね。いつの間にか本の存在は忘れていたのだけど、昨年母に突然その本を渡された時に、往復書簡も含めて、私が今、「61+(スワソンテアン)」としてやっていることすべてがここに繋がっていると思えて、ちょっと鳥肌が立ったな。例え仮想的なものであっても、この往復書簡では、みやうをどうおもてなししようかなって考えることが毎回楽しくて、色々なアイディアを引き出してくれる食卓になっている。これからも、どうぞよろしくね。

さて話を戻すと、みやうもすでに知っている通り、「61+(スワソンテアン)」の活動の一つとして、ジャムやスープ・ペーストなどの保存食づくりに力を入れることにしました。自分のポタジェ(菜園)で栽培した野菜だけでなく、農産物が豊富なこの地域の旬の野菜や果物を、一番美味しい時に保存食としてギュギュっと瓶に詰め込んで、ちょっとだけ特別感のあるものに仕立てて多くの人に届けたい、と思ってね。3月から、毎週欠かさずイチゴを仕入れてはフレッシュなイチゴジャムを作っていて、作ったら売れるという盛況ぶりは、紛れもなく相方のジャム達人京子さんのおかげです。でもね、キッチンに立ってイチゴの赤い色と甘酸っぱい香りに包まれながら仕込むときの幸福感といったら、もうこの上ない体験よ。ジャムには、そんな香りと幸福感まで一緒に詰めて送り出したいと願っています。

先日、とちおとめの仕入れをしていた農家さんから、「もうハウスを閉じるから」と、今年最後のとちおとめをいただいたの。そのイチゴがめちゃくちゃ美味しくて、せっかくなので何か一品作ろうと思い、作ったのがこちら。
ライ麦パンを薄くスライスして、生ハム、ルッコラ、とちおとめのスライス、ポタジェで栽培した新玉ねぎのスライスを乗せて、とちおとめで作った自家製ドレッシングをかけました。生憎今日は雨降りで室内になっちゃったけど、ワイン好きなみやうとピクニックする気分で作りました。

「とちおとめと生ハムのタルティーヌ」

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それでは、どうぞ召し上がれ。

いがらし