梵天丸(ぼんてんまる)の右目 その2(全2回)

ポン!昨日の続きだよ。

「小十郎っ。死んではならぬ。ワシにはもう、死ぬほど恥ずかしいことはなくなったぞ」
小十郎は枕元に駆け寄り、梵天丸(ぼんてんまる)の手を握りしめました。
梵天丸は小十郎の手を握り返すと、そのまま気を失ってしまいました。
何か月かかけて、傷口は治っていきました。右目は閉じて窪んで(くぼんで)いました。梵天丸はさっぱりとした気持ちになりました。

そして、傷が治った祝いの会がありました。その席にやってきた梵天丸の学問を教えているお坊さんの虎哉禅師(こさいぜんじ)が、懐(ふところ)から、黒い紐のついた刀の鍔(かたなのつば)を出して言いました。
「これをかけてみよ。ワシの作った目隠しの襷(たすき)じゃ。」
梵天丸はそれを受け取り、右目の上にあてました。頭の後ろで紐(ひも)を結びました。刀を止める黒い紐が額(ひたい)を鋭く斜めによぎり、左目がキラキラと輝いて見えました。
「昔、中国に李克用(りこくよう)という武将がいたのだ。片目でありながら、勇気のある英雄だったので、独眼竜(どくがんりゅう)と呼ばれていたのだ」
と虎哉禅師が言いました。
「なるほど、独眼竜か。梵天丸にうってつけじゃわい」
と輝宗が手を叩いて(たたいて)喜びました。

そして、この年、天正5年(1577年)11月、わずか11歳で梵天丸を元服(げんぷく)させ、伊達藤次郎政宗(だてとうじろう まさむね)と名乗らせました。
昔いた伊達政宗は、伊達家第9代目の素晴らしい武将だったので、梵天丸もその名前をいただいたのでした。元服というのは、大人の仲間入りをしたということです。元服すると、戦いに行くことができるようになるのです。

さあ、お休み。ポン!

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