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渚姫(なぎさひめ)の玉取(たまとり)(その4 全5回)

「このあたりが龍神様がおられる所でございます。それでは行ってまいります」

渚姫はね、海からグングン登っていく太陽に手を合わせると、ザンブと海の中へともぐっていったんだ。命綱はクルクルと海の中へと引っ張られていく。10m、20mと引かれていく。渚姫は大岩がゴツゴツと入り組んでいる所へいったんだよ。昔から、そこらが竜神様の住んでいる所と言われていたんだ。

そのあたりを探してみると、おお、まさに奇跡か。大岩と小岩にはさまれてなにやら大きな木箱のような物がある。それは半ばこわれていたんだ。木箱のフタが開きかけている。中になにやらキラリ光る玉があった。

「ああ、これ、これに違いないわ」

渚姫はその大きな玉を取り出したんだ。桃の実くらいの玉だったよ。渚姫は夢中になって命綱に合図を送ったよ。宝の玉をひしっと胸にいだいて、引いて、引いてと命綱に合図を送りつずけたよ。

ゴアーン、ゴアーン

先ほどまで静かだった海の底の水がグルグルとうずを巻き出したんだ。後ろを振り向けば、それは大きな黒い何かがこちらにやってくるのが見えた。

「あっ、あぶない」

胸にかかえていた宝の玉が、水の流れにもぎ取られそうになっていく、指の間からもっていかれそうだ。ひやりとした。ごんごんと水の渦は強く速くなっていく。息ももうくるしい。

「この大切な宝物はなんとしてもお届けしなくては。そうだわ!」

渚姫はね、強くなっていく渦の中で、腰につけていた小刀を引きくと、右の乳房ちぶさの上をさっと横にきりさいた。その胸の中へと宝の玉を押し込んだんだ!

 

今日はここまで、読んでくれてありがとう!渚姫、そこまでして玉を守りたかったんだね。玉は無事に届けられるかな?お休み、ポン!

 

#日本史 #飛鳥時代 #藤原不比等

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