浄蓮の滝 その2(全2回)

しばらくしたある日、遠くの村の木こりが、、
あの浄蓮の滝のそばに大木に目を付け、木を伐りに来たんじゃ。その時うっかり手に持っていた斧を滝壺の中に落としてしまってな。木こりは長い間使い慣れていた斧なんで急いで滝まで下りて行ってな。そこで着物を脱いで滝壺深くへと斧を探して潜っていったと。川の水は夏でさえそりゃあ冷たくてな。
木こりは水の冷たさに体が痺れを感じ始めた時じゃった。滝壺の深くにあった大岩のあたりから長い黒髪をゆらりとなびかせ世にも美しい真裸の女が木こりの斧を持って現れたと。女は腰をゆらしながら木こりのすぐそばまでゆっくりと来るとな。にこりと笑ってな、
「そなたが探している斧は返してあげましょう。その代わり、このことを人に話してはなりませんよ。もし、話した時はそなたの命はこの私がいただきますぞ。私は浄蓮の滝のジョロウグモじゃ。」
と木こりをきつく抱きしめてささやいたんじゃと。するともう女の姿は消えてしまっていたそうじゃ。

それから何年も経ったある晩、木こりは知り合いの家で振る舞い酒に酔ってしまってなぁ、うっかり口を滑らして浄蓮の滝の滝壺のあの美しいジョロウグモの話をしてしまったんじゃ。
「これを話すと命をもらうと言われたが、、、」
とつぶやいてゴロリと横になったと。そばにいた者がびっくりして抱き起したんじゃ。そん時にはもう木こりは息絶えておったそうな。 


おしまい。さあ、おやすみ。

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