へそくり十両 その2(全3回)
そんなある日のこと、お殿様の織田信長は長浜で「馬揃えの儀」というイベントを開き、大勢の家来たちを集めました。これから朝倉軍に攻めていこうと思っていたからです。家来たちが持っている馬や刀や槍など戦う時の道具を見たいと思ったからです。そして、皆の気持ちを盛り上げて一つにまとめようとも思ったのです。そのイベントには馬を売るお
店もありました。一豊は売っている馬の中に素晴らしい駿馬を見つけました。駿馬とは足が速く元気で丈夫な馬のことです。けれどもとても値段が高くて貧乏な一豊には買うことができませんでした。
「世の中に貧乏なことほど悔しいことはないわい」
と一豊は家に帰ってお嫁さんの千代にため息交じりに言いました。
「おいくらでしたの?」
「黄金十両じゃ。とてもとても高くて無理じゃよ。」
と言うと、
「それほどお気になさいましたならお買いなされませ。」
とにっこり笑って、千代は鏡箱の底から黄金十枚を取り出してお膳の上に並べたのでした。
一豊はびっくりして、
「こんな貧乏で白い米も毎日は食べられないというほどに、よく気強く内緒で黄金をためたものぞ。」
と喜びました。けれど一豊は千代との間には何も隠し事がないと思っていましたから、この秘密のお金のことを知って、少し寂しい気持ちにもなりました。千代はきちんと正座をしなおして、次のように言いました。
さて、続きはまた明日。
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