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鼠(ねずみ)小僧じろきち(その2 全2回)

そうしてある夜のことさ。夜中どろぼうが入ったと大騒ぎになって、使用人たちが大騒ぎでやっとそのどろぼうを捕まえることができたんだ。そのどろぼうは庭の木に縛り付けられた。娘は怖いもの見たさでそのどろぼうを見に行ったんだよ。
「あ、あなた様はあの時助けてくださったお坊様ではありませんか?」
娘はびっくりして腰を抜かしてしまったよ。そうだよ、この人が鼠小僧じろきちという人だったんだ。
このじろきちはね、どろぼうだったけれど、ぬすむお金はお金持ちの大名旗本たちの所からしか盗まなかったんだって。盗んだそのお金は貧しい人たちの家の窓から投げ入れてくれたというんだよ。そんな噂だったんで、鼠小僧じろきちは貧乏人たちからのヒーローだったんだ。
実はね、そう信じられていたんだ。
ところがね、天保3年(1832年)。
じろきちがつかまったという記録が『御仕置例類集おしおきれいるいしゅう』に残っているんだ。今でいう警察署けいさつしょ記録簿きろくぼさ。
「へい、盗んだ金は全部つかっちまったんです。博打ばくちと女にね、てへ」
じろきちが忍び込んだ屋敷は98か所、盗みに入った回数は122回。被害総額は三千両をゆうにこしたって。一両はだいたい今の13万円くらいらしいから、3億9000万円!
じろきちはお金持ちの家にだけどろぼうに入ってお金だけを盗んで、ほかの物を盗んだり傷つけたり、人にけがをおわせたり殺したりもしなかったからね、そんなんで人気があったどろぼうだったんだ。
だけれどじろきちがつかまって貧乏人への投入れせんはしていなかったと知ってみんながっかりだったんだよね。それをしてくれていたならいまだにヒーローになれていたのにね。
両国りょうごくにある回向院えこういんにはじろきちのお墓があって、パワースポットとなっているんだってね。

最後まで読んでくれてありがとう、ポン!

#日本史 #江戸時代 #次郎吉


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