あの世の話 その1(全2回)


今日はね、土佐と呼ばれていた高知県の香美郡(かみぐん)に伝わる昔話だよ。
ポンと昔。高知県の香美郡の岩村(いわむら)今の土佐山田町に、角さん(かくさん)という男の人がありました。

ある夏の日のことです角さんはお酒を飲み過ぎて、突然ぐずりと倒れてしまい、ごうごうと大きないびきをかきながら、一週間も寝たきりになってしまいました。脳溢血(のういっけつ)という病気になってしまったのです。お医者さんに診てもらいましたけれど、このまま間もなく天国へ行ってしまうでしょうと言われました。家族や親戚の人たちは皆悲しんで泣いていました。すると、七日が空けて八日目のことです。角さんは突然パチリと目を開けると、
「あぁ、よう寝たわい」
と言って今までと同じように起き出して話を始めたのでした。
「あれ、角さん。死んだのと同じかと思っていたんで、よくまぁ、元気になりましたなぁ」
角さんの周りにいた人たちはビックリして言いました。
「その通りさ。今あの世の国から戻ってきたところなんだ。あの世を今この目でちゃんと見てきた。よーくよーく聞いてくれよ。三途の川(さんずのかわ)とやらを向こうへ渡ってな、閻魔様(えんまさま)の前へ行ってきたんだ。そりゃもう、絵で見たり聞いたりして知ってるとおり、あの恐ろしい閻魔様だろう。わしゃなぁ、どんなお裁きを受けるんか。地獄へ落とされるじゃぁないかと思うと、もうおっかなくってな。心臓がドキドキ鳴ってな、体中がプルプル震えてきて、顔なんか上げれなかったさ。そうしてたらな、大王さんが、
「おおい、おおい。もしや角さんじゃぁないか」って馴れ馴れしく言うじゃないか。わしゃ、はっとしてな。思わず顔を上げて大王さんを見上げたんだよ。な、なんと3年前に死んだ同じ村のあの庄さん(しょうさん)じゃぁないかよ
「あぁ、庄さん。」
それだけ言ったら、もう何にも言えなかったよ。そりゃもうビックリしてな、庄さんが閻魔さんになっているんじゃからな。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
続きは、また明日。

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