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鼠(ねずみ)小僧じろきち(その1 全2回)

今日はね、有名などろぼうのお話さ。岐阜県の各務原かかみがはらに伝わるお話だよ。
ポンと昔。今から200年前くらいのことだよ。
娘と年老いたお母さんが中山なかせん道をひたすらに歩いていたんだよ。そのころこの道は物騒で、女の人だけで歩くのは危険だったんだ。
そして、各務原に入ると日がれてしまった。宿はないかとさがしながら歩いていたんだよ。すると遠く松林に小さな明りを見つけたんだ。急いで近づいてみると、
『旅人宿いろは』と書かれてあったんだ。
「宿が見つかって良かった。古いようだけど休ませてもらえるのは助かったね」
親子はわらじを取ると、部屋へ通されたよ。隙間すきま風の入ってくる部屋で、敗れたふすまの向こうには旅のお坊さんが泊まっていた。それでも二人はすっかり歩き疲れていたんでぐっすり眠ってしまったんだ。
真夜中のことだよ。ガタゴト何やら音がして人の気配があったんで、娘は目をさました。
闇に目がなれて見てみれば先ほどの宿屋の夫婦が自分たちの荷物を開いている。
「あっ、それは!」
娘が小さな声で言うと二人はきらり光る刃物を持って枕元へと来たんだ。
「た、助けて!」
娘がこう叫んだ時だったよ。バターンとふすまが倒されて隣の旅のお坊さんが飛び込んで来てくれた。あっという間に振りかざしていた刃物を取り上げると二人を投げ飛ばしてしばり上げてしまったんだ。ふたりが何度も御礼を言って名前を聞いたんだけれど、そのお坊さんは名前も言わずに早々と出かけていってしまったんだって。
そんなことがあってから何年かした後のことだよ。娘はえんあって江戸の大きな旗本はたもと奉公ほうこうすることになったんだ。

今日はここまで、読んでくれてありがとう!続きは明日のお楽しみ!お休み、ポン!

#日本史 #江戸時代 #次郎吉

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