せいやんの不格好な包丁 その3(全3回)


先は尖っていて、幅が広くて手元の方の刃が分厚くなっている。先へいくほど薄くなっている。一番薄いところでも今までの包丁よりもずっと厚みのある刃だったんだ。主人はね、ヘンテコな包丁を作ったものだと思いながらも早速、この包丁を使ってみたんだ。何と素晴らしい切れ味じゃないか。持ち易くてよく切れる。魚の骨でも楽に切れたし、力を入れても刃こぼれしないんで、
「こらぁ、ええは。ええ包丁や。よう切れるし、刃こぼれもせんわい。ちょいと刃を厚うしただけで、こんなにも違うもんかいのぉ。」
主人は喜んで早速この不格好な包丁を作って売ることにしたんだって。

ところがね、せいやんはこの後すぐ、鍛冶屋を辞めて、どこかへ行ってしまったというんだよ。お梅さんがいなくなったことを知って辞めたのかもしれなかったんだ。その後のせいやんの行方は誰にも分からなかったって。それでもね、せいやんが作った不格好な包丁は、「あの出っ歯の、せいやんの包丁」って呼ばれてよく売れたんだって。よく切れるって大評判だったんだ。そしていつしか「出っ歯のせいやんが出刃包丁」と言われるようになったのさ。

包丁の刃なんて怖いから、よくよく見たことなかったけれど、こんな工夫がしてあったんだね。包丁がなかったら、大根だってお魚だって丸かじりしなくちゃ、だったよ。包丁があるおかげで食べやすくて美味しい食べ物になっていくんだね。

これでおしまい。最後まで読んでくれて、ありがとう。
ちょっとしたアイデアが素晴らしい進歩になったりするんだね。
お休み、ポン!

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