通幻禅師(つうげんぜんじ)のお母さんは幽霊 その1(全2回)


 
ポンポン。 
今日は母の日。お母さんのお話だよ。 
 
ポンと昔々。今から700年くらいも前、南北朝(なんぼくちょう)時代と呼ばれている時に産まれたお坊さんのお話だよ。そのお坊さんのお母さんは幽霊だったんだって。 
 
昔々、今の兵庫県のある村に一軒の飴を売るお店があった。蒸し暑い晩のことだ。そろそろ店じまいをしようと思っていたところ、見たことのない女の人がすーっと戸口を開けて店の中へ入ってきた。 
「飴お一つくだされ」 
その女の人は、今にも消え入りそうなか細い声で言った。その顔は青白く透き通っている。長い黒髪はなぜか、びっしょりと濡れていた。女の人は飴一つを持つと、すーっと音もなく帰って行った。それが毎晩同じ時に買いにやってくるのだ。飴家の主人は恐ろしくてたまらない。そこで近くのお寺の和尚さん(おしょうさん)に相談にいったんだ。 
「よし何か訳があるのじゃろう」 
と言って、和尚さんは、その女の人の後をつけてみることになった。 
 
次の日の晩、あの女の人は飴一つを買いに来た。和尚さんはその女の人の後をつけて行った。 
「どこへ行くのじゃろう?」 
女の人は寂しい村はずれへと歩いて行く。とうとうお寺の墓地まで来ると、すーっとどこかへ消えてしまった。和尚さんは暗がりの中、お墓の間を歩きまわってみた。すると、どこからか赤子の泣く声が聞こえてくるではないか。 

今日はここまで。また明日。ポン!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?