竜飛岬(たっぴみさき)の黒の神 その1(全2回)
昔々それはそれは大昔のこと。北海道と青森県は、くっついていたんじゃと。その頃のことじゃよ。
青森県の竜飛岬(たっぴみさき)に黒の神という神様が住んでおったと。黒の神はな、力が強く男らしゅうてな、いつも大きな龍に乗って大空を飛び回っていたんじゃ。
ある日のことじゃ。黒の神がの、十和田湖の上を飛んでいる時のことじゃ。その青い湖のほとりにな、それはそれは美しい娘が佇んでおったんじゃ。それは十和田湖に住む女神様じゃった。あまりの美しさなんで黒の神は目がくらんでしまってな。
「あの美しい女神殿こそワシのお嫁さんじゃ」
と黒の神はすっかりその女神様を好きになってしまったんじゃと。女神様を一目見た時から、いとおしゅうていとおしゅうて、たまらなくなってしまってなぁ。
黒の神はな、毎日日本海で捕った魚を大きな籠に入れて十和田湖の女神様に届けにいったんじゃよ。
「女神殿、これは北の海で捕れた美味しいお魚ですぞ。どうぞたぁんと召し上がってくだされ」
と毎日届けにいったんじゃと。女神様もな、毎日のように親切にしてもらってるもんでな、だんだんに黒の神が好きになってきたんじゃと。
ところがな、ある日の事じゃ。夕日の綺麗な日のことじゃった。女神様が十和田湖のほとりを歩いておったら、どこからともなく綺麗な笛の音が聞こえてきたんじゃ。立ち止まって耳を澄ましているとな、金色の大鹿に乗った秋田の男鹿半島に住む赤の神という神様が笛を吹きながら現れたんじゃよ。
赤の神もな、十和田湖の女神様に見つめられてな、すっかり好きになってしまったんじゃと。赤の神もな毎日、夕日が綺麗になるころにやってきては女神様に美しい笛の音を聞かせてあげたんじゃと。女神様はな、うっとりと聞いておったそうな。
今日はここまで、また明日。
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