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熊谷直実と権田栗毛(その3 全3回)

権田栗毛は直実の言葉がわかってずっとヒーヒーと泣いていたんだ。直実は何度も首を撫でてやっていたんだよ。
そうして、家来といっしょにゆっくりゆっくりと兵庫県から群馬県までと帰っていったんだ。
権田栗毛はやっと権田村に帰ってきた。けれど、権田栗毛を育ててくれたイチスケの人たちはもうだれもいなくなっていたんだよ。だれもいないちかけた家と馬小屋の周りをヒーヒーと泣きながらぐるぐると足を引きずりながら回っていたんだって。村人たちはかわいそうにと見ていたよ。
権田栗毛が大きく身震いした時さ。背中につけられていたほろを振り落してしまったんだ。すると、そのほろの中から1寸8部の観世音菩薩かんぜおんぼさつの像がこぼれ落ちたんだ。
村の人たちはほろをそこに埋めてね、ほろ明神みょうじんとしておまつりしてね、観世音菩薩の像は別にきざんだ木造の体内におさめてね、近くの岩穴に堂を作っておまつりしてくれたんだ。
これが今も大勢の人で賑わっている『岩窟観音がんくつかんのん』さ。
この後ね、権田栗毛は近くの小川の水を飲むとばったり倒れてしまったんだ。村の人たちはその場所に馬の亡骸なきがらを手厚く葬って、馬頭観世音ばとうかんぜおんの堂を建ててね、馬の霊をとむらってくれたんだ。
 
最後まで読んでくれてありがとう、ポン!
 
#日本史 #平安時代 #熊谷直実
 

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