山内一豊の武勇伝 その3(全3回)


人間必死になって夢中になっている時は恐ろしいものです。

一豊は顔に矢を突き立てながら、それとも気が付かずにダッシュし続けたのです。一豊は、おおっ!!と動物のような吠え声を上げて、二間半の長槍で、三段崎勘右衛門の首を刺し切ったのです。一豊は赤土の上に倒れ込みました。味方の者が駆け寄ってきてくれました。一豊の顔は血だらけで、しかも頬からは矢じりの先が飛び出ているし、矢の柄は10センチほど残して折れているのです。味方の者はオロオロするばかりです。
「矢を抜け!」
と一豊は怒鳴りました。
「抜いて、よろしゅうござるか」
「抜かねば死ぬわい!」
「抜きますぞ」
と味方の者が矢のからに手をかけたのだけど、口の中の骨に突き刺さっているらしく、簡単には抜けないのです。
「どうした!!?」
一豊はものすごい痛みで失神しそうです。
「ぬ、抜けませぬ」
「ワシの顔を足で踏みつけて抜け!」
仲間は武者わらじで一豊の顔を踏みつけ、力任せに抜いたのです。
ビューっと血が飛んだのです。一豊は気を失ったのでした。

後になって、このことを知った織田信長は
「大した働きぞ。よく養生せい」
といって織田信長はわざわざ自分の手から一豊に貴重な薬を与えてくれたとのことです。

こうして一豊は50石取りだったのですが、8倍も増えて400石取りとなれたのでした。

そうそう、二間半の槍は織田信長が考え出した長槍で4メートル50センチにもなります。今までのものは短かったので、危険も多かったのですけれど、この長槍のおかげで戦いやすくなったとのことです。

織田軍は、ここまでは勝っていたのですけれど、浅井軍が突然攻めかかってきたことで、織田軍は大混乱となって大慌てで逃げていくことになるんですよ。これは織田信長の失敗の戦いでした。

はい、これでおしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?