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吉祥寺サバイバル Ⅲ 定常期(stationary phase)Ⅲ-3 自給自足例R男 縄文生活 20XY年5月

 R男は関東にある〇〇貝塚博物館の学芸員で、30歳の独身である。この年も夏休みのイベント「1泊縄文生活」の準備のため、泊まり込みで多忙な毎日を送っていた。市内の小学生6年が対象である。男女別に夏休みの8月中に4回開催する。1回の人数は5名である。人気のあるイベントで、応募者が多いため、抽選で参加者を決めている。

竪穴住居

1日目の午前中は縄文生活の概要について講義を行う。従来、狩猟採取生活とされてきた。近年、土器の圧痕から、狩猟「栽培」生活が正しいとされるようになった。ダイズの原種はツルマメで栽培化は中国で間違いないが、日本でも並行して栽培化が行われていたことが確実視されている1)。

矢じり

 昼食は縄文クッキーを焼いて食べる。午後は矢じりと弓矢を作成する。夜は土器による縄文鍋が夕食になる。その後、夜空の星座を眺めて縄文人が語ったであろう物語を話す。この部分はアイヌの星座に関する物語を参考にしている2)。会場は都会から離れているので、星がよく観えるのである。その後、竪穴住居で就寝する。当時のスタイルは不明だが、根袋と枕の持参をすすめている。翌朝、縄文鍋をもう一度食べて解散する。

土器

 ある日、R男は気が付いた。しばらく他の学芸員の姿を観ていないのである。館長や事務員も不在である。市役所に電話をしても誰も出ない。大変なことが起きていることにようやく気が付いた。テレビをつけて、L村病が世界で蔓延していることが分かった。また、不要な外出を避け、やむなく外出する時はマスクをすること、帰宅時にマスク廃棄と手洗い励行をすすめていた。

 そうであれば、街に出るのは避けるべきだろう。当然、イベントも中止である。イベント用に準備してきた食材が相当量備蓄してある。具体例を挙げれば、クリやアクを抜いたドングリ、干し貝、塩漬けしたわらびなどの山菜である。節約すれば、2ケ月くらいは持つであろう。水が止まっても近くに小川が流れている。

縄文カレンダー

 縄文時代は季節ごとにやることが決まっていた。これが「縄文カレンダー」である。現在は5月なので、海辺で貝を採取し、魚を釣る。当時は温暖で、海が広がっていた。これを「縄文海進」という。現在の海辺はやや遠いが、車を使うことにしよう。船が使えるようなら、釣りをすることも悪くない。博物館に展示している釣り具を使ってみよう。こういう活動を「実験考古学」という。

 夏場は釣りの比重が高まる。また、岩場が少ない場合、竹や雑木を干がたに建て、牡蛎を付着させ、成育させる方法を聞いたことがある。縄文時代に行われていても不思議ではない。秋は堅果類の収穫の時期である。東日本の大きな川であれば、鮭漁が重要な仕事になる。

 冬は木々の葉が落ち、見通しがよくなる。したがって、小型獣や鳥類の狩猟がやりやすい。その時の為に、手の空いた時に弓と矢や槍を整えておく必要がある。家の補修や土器についても同じことがいえる。作業量が多く、一人ではなかなか大変である。幸い、博物館には多くの使用可能な展示物が存在する。当面はこれらを流用することにしよう。

 いつまでこのような生活を続けられるか保障はない。来年春までにできるだけ保存食を蓄えよう。それができたら、生存者を探す旅に出ることにする。よい季節が長く続くからである。海辺沿いならば、魚介類の補給が可能である。もちろん、車を使うことになる。ガソリンは止まっている車から得ることになる。バールと灯油ポンプがあれば、何とかなるだろう。
1) 日本起源のダイズ https://ameblo.jp/yk206/entry-12522406594.html
 https://jafpec.com/wp30/wp/works/works-1800/
2) The Ainu Constellations http://www.astro-ninja.com/nociw/
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