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7 のど捕捉&食道:違和感あれば検査

 前回の喉について、書き損ねたことがあるので補足しておこう。食品に関する最大のハザードについてである。死者は毎年4,000名を超える。原因食は多様だが、先日はウズラの卵で発生した。通常はもち、米飯、パンが多く、ナッツ類、飴玉、プチトマトが続く。お分かりだろう。多くの命を奪っているハザードは化学物質や食中毒菌という生物的要因でもない。食品そのものの物性と大きさという物理的要因であり、窒息が死因である。

 やはり、65歳以上の高齢者が圧倒的に多い。高齢者はだ液の分泌と嚥下(えんげ:噛み砕いて飲込む)機能が低下するため、事故が起こりやすい。また、乳児もややリスクが高い。ただし、彼らだけの問題と捉えてはいけない。壮年(30~44歳)であっても、例年50名以上が亡くなっている。「ピーナッツ等の豆類は3歳以上」という情報も、子を持つ親の常識として普及させたい。

 高リスク者と一緒に生活する家庭では家族が目を配ることが大切である。さらに、万一喉に詰まった時の応急処置を会得しておこう。食品を吐き出させるため、年長児や大人は「腹部突上げ法」、乳幼児は「背部叩打(こうだ)法」が適切である1)。これらは知識として持っているだけでは不十分である。人形等を利用して、身体で覚えておくことが肝要だ。窒息事故は一刻を争う。施設等で、高リスク者に接する方々も上記をマスターしておく必要がある。

 なお、キリンの首はあれほど長いのに骨の数は人間と同じ7個である。7個でないのはジュゴンやナマケモノなど数種類の動物だけだという。これらのこと以外にも哺乳類のことがよく分かる「大哺乳類展3」が科博で開催されている(2024年3/16-6/16)2)。

食道の構造

 ということで、食道に進もう。食道は口腔、咽頭に続き、かみ砕いた食物や飲料を胃まで送り込む管状の器官である。ヒトの食道は成人で25~30 cm程度の長さがあり、飲料は数秒程度、かみ砕いた食物でも数十秒程度で胃へ達する。長径約2㎝、短径約1㎝の楕円形をしている。通常、食道はつぶれて閉じており、食物などが通るときにだけ、大きく広がる。

 食道は3つのセクションに分けられる。のどから鎖骨の辺りまでが「頸部食道」、その次が「胸部食道」「腹部食道」と続く。胸部食道は最も長く、大動脈、気管支、心臓など重要な器官と隣り合っています。そして、腹部食道は横隔膜から食道・胃接合部(噴門部)までの最も短い部分になる。

食道断面図

食道の壁は内腔側から粘膜、筋層、外膜と分けることができる。粘膜は力学的に強い重層の扁平上皮から成っている。かみ砕かれたとはいえ、固形物が含まれる食物が通過することで傷つかないようにするためである。また、粘膜の下層にある多数の食道腺から分泌される粘液は食物の通過をスムーズにしている。

 粘膜下層のさらに外には、「輪状筋」と「縦走筋」からなる固有筋層がある。筋層は2層構造をしており、内側の筋は輪走筋、外側の筋は縦走筋に相当する。長軸方向に対して筋線維は垂直/平行ではなく、いずれも斜目に取り巻いている。これらが順に収縮することで食物を胃に送り出す動きをする。これを蠕動(ぜんぞう)運動という。そして、いちばん外側は「外膜」という膜状の結合組織で覆われている。

食道の狭窄部

 食道には3箇所の狭窄部が存在する。咽頭との接合部、気管支の後ろの部位、そして横隔膜を抜ける部位であり、食物が詰まることがある。これら狭窄部にはがんができやすく、「食物がしばしばつかえる」「せきが出る」「声がかれる」といった違和感がある場合は検査を受けたほうがよい。「喉元過ぎて熱さを忘れる」の言葉どおり、食道の粘膜の感覚はあまり鋭敏とはいえない。ただし、新三共胃腸薬など生薬成分を含む錠剤が貼り付いた場合、「薬の味」が分かる。なお、食道のpHは5から6程度の微酸性である。

 食道に関する慣用句と四字熟語は見つけることができなかった。
1) ナース専科 https://knowledge.nurse-senka.jp/214685/
2) 国立科学博物館 https://www.kahaku.go.jp/
*食品なんでも相談所 横山技術士事務所
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