防災について


はじめに

 東日本大震災からはや十数年が経ち、三陸の一市街地が丸ごと壊滅するなどの決して忘れてはいけない悲劇的な記憶が少しずつ薄れゆく今日この頃です。
 しかし毎年の災害状況を振り返ってみますと、年に一度以上の割合で震度5強以上の地震が日本国内のどこかで発生しており、全く油断のならない状況が続いております。
また地震以外にも大雨洪水豪雪なども毎年発生するなど、もはや日本人と災害は切っても切れない関係となってしまいました。
 いつ来るやもしれぬ大災害に備え、市町村や企業では事業継続計画(BCP)と合わせて防災計画が組まれていますが、その防災計画の一端を稚拙ながら紹介させていただければと思います。

タイムライン防災行動計画

 2012年に発生したハリケーン・サンディがニューヨーク州に上陸すると、ニューヨーク州域内の鉄道や地下鉄、道路を含むインフラの破壊、ビジネス活動の停止など、近年発生した災害の中でも甚大な被害をもたらしました。
 しかし、ニューヨーク州はあらかじめ策定していた防災計画によって、想定されていた人的被害を最小限に抑える事が出来ました。
この防災計画がタイムライン防災行動計画です。

タイムライン防災行動計画とはどんなもの?

 タイムライン防災行動計画は『被害の発生を前提とした防災』であり、例えば『台風が東京に向かっている。どうやら直撃コースだ。』という事が判明した段階をスタート地点とする防災計画です。

出典: 国土交通省 防災タイムライン, https://www.mlit.go.jp/river/bousai/timeline/

タイムライン防災行動計画は災害発生より前からスタートする防災計画

 最近、計画運休という言葉を聞いた事がありませんか?
直近の計画運休と言えば2023年の台風7号の影響を見込んだ東海道新幹線の計画運休です。
これは2014年10月に発生した台風19号に合わせてJR西日本が行ったもの(全列車計画運休)が初めてと言われています。
 この計画運休はまさしくタイムライン防災行動計画そのもので、『台風が来るとわかった時点で』『事前に災害が発生する事が見込まれている』時間帯に合わせて列車の運行を取りやめ、運行中に発生しかねない危機的な状況にあらかじめ対処するものになります。

※運行中に発生しかねない危機的な状況とは?
 運行中に信号トラブルなどで駅間に長時間停車し乗客に被害が出る事故。
 豪雨によって橋梁が流されそこに列車が突入してしまう事故。
 盛り土など高所を運行中の列車が強風にあおられ脱線転覆してしまう事故。
 などがあります。
 この計画運休のようにタイムライン防災とは、

  • 『台風や大雨が住んでいる所や働いている場所に到達するとわかったら、その時点をスタート地点と設定して』

  • 『浸水被害や強風被害に備えるために土嚢や窓に目張りするなどの準備をして』

  • 『もしもの為に早めに避難所へ避難して』

  • 『災害が発生した後は被害状況を確認し』

  • 『復興を目指して物資輸送や工事を計画する』

これらを時間ごとに何をすべきかを明記しつつ計画するものになります。

タイムライン防災行動計画はすべての災害に対して万能ではない?

 タイムライン防災行動計画は『災害の原因がその土地に発生すると見込まれた時間』をゼロアワーとして設定し、そのゼロアワーから時間を遡って見積もった行動計画とリードタイムを作成します。
そのため、地震のように突発的に発生する災害に対しては時間を遡って計画する事が出来ず、専用のタイムライン防災行動計画を別途作成する必要があります。

※ゼロアワーとリードタイム
 ゼロアワーとは、元々は軍事用語である作戦が開始される時間の事を言い、ここでは災害が発生したその時間の事を指します。
 リードタイムは製造業界などで使われる言葉で、作業や工程が開始されてから終了までの時間の事を言い、ここでは一つずつの防災行動にかかる時間の事を指します。

タイムライン防災行動計画は見直しを繰り返す事によってより正確に

 タイムライン防災行動計画は防災訓練や実際の災害を元に振り返り、

  • 何がどう足りなかったのか

  • あの時何が足りなかったのか

  • あの時は誰があの担当であるべきだったのか

  • もっと早めに行動すべきだったのか

実際もしくは想定する災害対応時の時系列の記録(クロノジー)と比較して検証を行います。
その検証から得られた改善策をタイムライン防災行動計画に反映していきます。


次回:タイムライン防災行動計画を実際の災害に当てはめて考えてみる


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