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東大が目標200億円調達  国内初の 大学債とは

東京大学が、国内で初めてとなる債券「大学債」を発行します。

来月にも発行し、200億円の調達を目指します。

  リモートで授業や研究活動できる環境、先端的な研究設備や施設、そういったものに大きな投資も必要である。


 東京大学の大学債は毎年、利息の支払いをしながら40年間で返済する条件で投資家から200億円を調達することを目指し、来月にも発行します。

 さらに今後10年で、1000億円を調達したい考えです。国からの交付金が減るなか、自由な研究資金を確保します。

 国の規制緩和もあり、国立大学による債券の発行が今後、広がる可能性があります。

 東大が、大学債発行へ 投資需要の高まりも「格付け」が教育機関に及ぼすメリット・デメリットとは?

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 海外では、すでに行われている大学債

 日本では、大学が投資対象になることや、大学自らが株を運用することはほとんどありません。

 しかし欧米を中心として、寄付金を元手に投資を行って利益を上げたり、大学の研究開発力を売りに大学債を発行して投資家に購入してもらったりするケースは珍しくないのです。

 アメリカのハーバード大学は、個人や法人から毎年800億円近い寄付金があり、総額4兆円以上の大学基金で設備投資のほか、株などの投資運用で利益をあげて資産を増やしています。

 イギリスのオックスフォード大学は100年、ケンブリッジ大学は60年という超長期的運用の大学債を発行し、資金調達を行っています。

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 日本国内では、慶応大学(港区三田)の基金が有名ですが、2018年度末で総額約731億円と欧米の有名大学に比べると規模は少なくなっています。

 また日本では、基金を元手に大学が投資を行う慣習はなく、資金調達は国私立問わず難題となっています。

 特に国立大学は、私立大学に比べて大学基金が浸透しておらず国からの助成金や学生の学費に頼らざるをえない状態が続いています。

 しかし研究費や施設費の先細りを危惧した東京大学(文京区本郷)がこの度、日本の国立大学として初めて大学債を発行し資金を調達することになったのです。

 これまで、国立大学に認められている投資は付属病院や学生寮といった事前に相当の収益が見込めるものに限定されていました。

 大学の研究開発を最大限に活用するため、こうした縛りをなくすため関連法令改正をし規制緩和を求めたのです。

 研究棟の増築や拡充をしようにも思うように資金を集めることができないと、それに伴い優秀な人材が流出し大きな損失となります。

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 グローバル社会を生き抜くために日本国内で高い水準の研究開発や人材確保を充実させるには、いかにスピーディーに資金調達できるかが「カギ」となってきます。

 文部科学省が2020年2月から毎月に行っている「国立大学法人の戦略的経営実現に向けた検討会議」のなかでも、東京大学の五神総長は日本の国立大学が抱えている資金面の問題について提言を行ってきました。

 東京大学の要望が通る形で2020年6月に国立大学法人法施行令が一部改正となり、大学債の発行の条件が緩和されました。

 これを受け、東京大学は国立大学初となる大学債発行に向けて一気に動き出したのです。

 東京大学は7月31日(金)に大学債発行に関わる証券会社や銀行の選定、日本格付研究所から債務履行の確実性が最も高い信用格付け「AAA」を取得したとホームページ上で発表しました。

 複数のメディアの報道によると、東京大学は10月に40年という長期間にわたる200億円規模の発行に向けて準備を進めており、注目を集めそうです。

投資にはメリットとデメリットが伴う

 大学債の発行による資金調達はメディアでも大きく取り上げられ、債券購入は順調に行われると予想されています。

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 東京大学で発行される債券は、とても大きな安心材料で投資初心者から経験値のある投資家まで幅広い層に受け入れられることは必至です。

 東京大学側も確実に結果が残せそうな研究に関わるものを優先すると考えられますが、それは冒険がしにくくなるという意味も持っています。

 欧米と日本とでは投資に関する考え方が異なり、東京大学であっても安全運転で進んでいくのは避けられません。

 また、国立大学という公的機関が投資の対象となることで、癒着や汚職が起きないとも限りません。

 公正公平さを保ちトラブルを招かないためにも、今まで以上に情報公開をしていく必要があります。

 大学債は、日本国内で定着するか?

 施設投資に必要な資金調達の解決策として大学債を発行する東京大学の試みは、他大学も追随する可能性は大いにあります。

 しかし、大学の規模や理工学系の分野で実績の有無によって格付けランクが決まり、そのイメージが定着してしまう危険性も含んでいます。

 世間一般には、あの大学はAAランクで、この大学はAと大学債の格付けと大学のブランドイメージを重ねてしまう懸念もあるのです。

 そのため安易な導入を避け、国立大学の中でも、ごく一部の大学しか前向きに検討しないでしょう。

 大学という高等教育機関は、投資の世界とは遠く離れている印象がありますが、世界的な流れでは、施設の充実を図る上で資産運用や資金調達は必要不可欠になっています。

 東京大学の挑戦をスタートに、2020年は国立大学も企業的な面を持つ多角的な組織に変わっていく歴史的な年になるかもしれません。

いってらっしゃい!



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