ハムスター 5
そこらじゅうに、たっぷりと水の入った水槽が陳列されているのに、目の前に置かれた水槽には水が入っていなかった。
底から四分の一くらいの高さまで、細く裂いた新聞紙が敷き詰められている。
「気に入った子を選んでくださいね」
がっちりとした体格の男が、緩みきった表情でこちらを見てきた。
「好きなのを選んでいいよ」
橘までが、まるで自分のハムスターを分け与えるかのように、誇らしげに見つめてくる。
タケトにプレゼントするのだ。
私が飼うハムスターではない。
どの子にするか、私が決めてしまっていいものなのか。
(つづく)
「ハムスター」は「金魚」「ティーソーダ」のつづきのおはなしです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?