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怪談【鼠】

これは、じっとりとした熱帯夜のお話です。
あなたは二階の寝室で、身体を汗が這う不快感と共に、なかなか眠りにつけずにいました。
心の隅には、日中の疲れや、明日への不安が重くのしかかり、それがあなたを眠れなくさせていたのです。

そんな静寂を破るように、窓の方から「コツン」という軽い音が響き渡ります。
一度ならず、二度、三度とその音は繰り返され、やがてその間隔は不規則に、音の大きさも次第に変わり始めました。
あなたの心臓の鼓動は、その音に合わせて速くなる一方でした。

気になるものの、恐怖心があなたをベッドに釘付けにします。
しかし、「コツン、コツン」という音は止むことがなく、ついに耐えられなくなったあなたは、原因を確かめようと決心しました。
カーテンをそっと開け、外を見ると、小さな白い物が一つ、また一つと、まるで意志を持っているかのように窓に向かって飛んできては、「コツン」と音を立てているのです。

その白い物の正体を確かめようと、あなたは勇気を振り絞って外に出ることにしました。
階段を降りる途中、不気味な「チュウチュウ」「キイキイキイ」という鳴き声が、どこからともなく聞こえてきます。
そして、その声と共に不思議な言葉が耳に飛び込んできました。
「〜のように強く、な〜れ!」という、まるで儀式のような呟きです。

階下に降り立ち、あなたは音の源を辿りながら、そろそろと窓の下へと進みます。
音は、あなたが近づくにつれ、その大きさを増していきました。
そして、ついにその源に辿り着いた時、あなたの目に映ったのは、地面を覆い尽くすほどのネズミの大群と、四肢を失い、歯が抜け落ちながらも、笑顔を浮かべる少年の姿でした。
少年の周りには、彼の歯が散らばっており、それが窓に向かって飛んでいた白い物の正体だったのです。

驚いて声を上げると、何千というネズミが一斉にこちらを向き、彼らの赤く輝く眼があなたを捉えます。
その瞬間、耳元で囁くような声が聞こえてきました。
「君は、変われるかな?」

あとがき

この物語は、私が16歳の頃人生で初めて書いた怪談を、つい最近少し書き換えたものです。
20歳になった私が、自分の書いた怪談を学習させたAI(ChatGPT4o)にこの『鼠』をインプットさせて、あーだこーだ命令してアウトプットさせたものですね。
物語の本筋はそのまま、各所の表現を上手く言い換えた感じです。
これを書いた当時、私は本格的な怪談というものを聞いた事がなく、ホラーも好きではありませんでした。
そんな私が「お前は声が暗い」と言われ、試しに怪談でも朗読してみるかと思って書いたものがこの『鼠』です。
その当時は「十二怪談」という干支をモチーフにした怪談シリーズを書いましたね。
「十二怪談」もいつかnoteで発表したいですね。
なにはともあれ、思い入れの強い作品ですので、noteで公開する最初の怪談に選びました。

解説

この怪談の元ネタは、私の実家の風習です。
子どもは小学生くらいに歯が全て生え変わりますよね。
その時取れた歯(乳歯)を屋根の上に投げると、新しい歯(永久歯)が強く立派な歯になる、という謎の風習です。
そして、乳歯を屋根に投げる際に、「ネズミのように、強くな〜れ!」と言って投げるのです。

余談

ちなみに私の歯はとても綺麗に生え揃いました。
ついでに、ここ1年くらい私の家でネズミが暴れ回っており、カップ麺が全滅したりしたので、今ではネズミが大嫌いです。

著作権的な話

この怪談は著作権フリーではありません。
動画や配信で朗読などをなさる際は、必ず道楽夜怪へご一報ください。
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