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 GDPは経済発展の指標として作成され、用いられてきました。これは、どれだけモノを作り、経済的に豊かになったかという指標です。しかい、現在のように、モノがあふれている時代にGDPにはどんな意味があるのか?本当に必要なのか?について考えてみたいと思います。

GDPは豊かさの指標?
 2016年に英経済誌の「エコノミスト」はGDPは物質的厚生の指標としてもはや時代に合わない、大きな見直しが必要(GDP is a bad gauge of material well-being. Time for a fresh approach)」と題する解説記事を掲載し、新時代に合った経済指標のあり方を見出す必要性を指摘しました。現実には、GDPは「経済的豊かさの代名詞」とでもいうべき地位を占めてきており、より大きなGDP、より大きなGDP成長率を示すことと、豊かさがイコールとよくみなされてきたといっても過言ではありません。ただ、指標としてはもともと、多くの欠陥も抱えており、時代の変化がさらに、その欠陥をあわらにさせています。

時代の変化
 時代は少品種を大量に生産する「大量生産大量消費」型から、需要に応じて多品種を少量ずつ生産したり、きめ細やかなサービスへの経済はシフトしています。言い方を変えれば「付加価値:利益」よりも「意味のあるもの」に活を感じるような時代にシフトしているのです。しかし、GDPは、効率的にどれだけ多くの製品を作り、利益が上がったのかの指標であり、地球環境への配慮や社会貢献などの社会的意義を把握することはできないのです。そう考えると、先進国経済では、どれでけ多くの製品を作りだしたかよりも、社会にどれだけ貢献できたのかということの意味に価値を見出しているため、豊かさを測る尺度としての「GDP」の妥当性はますます低下していると指摘されてきているようです。

GDPの改善点
 現在、GDPは推計やサンプルに頼った解析であるため、1つ目は課税データをはじめとしたビッグデータなどの直接的なデータを活用することで、より実態に近い指標になるように改善することです。
 2つ目は、GDPに織り込まれる要素を増やすことです。具体的には、家庭内労働(子育てや介護)の恩恵、長寿化など保健サービスの「効果」、新製品の登場や選択肢の拡大がもたらす豊かさの向上をも取り込んだ「拡張GDP」(GDP-plus)を開発する必要があります。
 3つ目は、公的資産、無形資産、環境を含む各種ストックから派生するプラス・マイナス両面の評価を加味することです。
 特に、近年の温暖化社会では、3番目の環境を組み入れた指標を取り入れて改良を重ねれば、GDPが「豊かさの指標」としての本領を発揮できると思われます。

「豊かさの正確な計測」はできるのか?
 1970年ごろからOECDのガイドラインに沿って進められたSI(Social Indicators、国民生活指標)の設計と測定です。「住む」「費やす」「働く」「育てる」「癒す」「遊ぶ」「学ぶ」「交わる」などの生活領域ごとに、どれだけの質的改善があったかを指数として表そうという試みです。もう一つは経済審議会が1973年に公表したNNW(Net National Welfare、国民福祉指標)です。GNP(GDPが主役になるのは80年代以降)から公害、混雑などの非福祉的部分を差し引き、余暇、主婦労働などの福祉的要素を加えることによって求められます。あくまでも貨幣額での足し引きとして、例えば主婦労働の時間単価をいくらと見るかなど、別の恣意的要素が入り込む恐れは小さくありません。
 さらに、国連では今もSNA(国民経済計算)にサテライト勘定として環境・教育・介護などの分野を連結して、社会生活の全貌を記述しようとするSSDS(A System of Social and Demographic Statistics: 社会人口統計体系)の研究もあります。

経済以外の何かを豊かにするのか?
 GDPとは「Gross Domestic Product」の略称で、日本語で「国内総生産」です。GDPは、一国の中で生み出された「利益」をすべて合計したものです。まれに、GDPは「モノの生産額の合計」と勘違いされている方がいます。GDPは、モノだけでなく、サービスも付加価値に含まれます。
 しかし、最近ではいくら利益を上げても、環境を破壊したり、社会に混乱を招くような商品は認知されません。今は単純な利益だけでない価値をどう提供できるかが人間としての豊かさを示しており、決して売り上げという経済効果だけでは、豊かさを示すことはできないのだと思います。
 そう考えると、環境や社会に配慮した経済活動こそが、先進国における真の豊かさであると思います。

まとめ
 豊かさの指標が変わろうとしています。昔は経済的に安定していれば幸せであると思われてきましたが、経済的に安定して幸せになれるのは年収400万円まであり、それ以上は経済的に安定しても幸せの程度は変わらないと言われています。そう考えると、人に幸せには、健康と豊かさは必要不可欠な様相であると考えると、健康で且つ豊かになる、言い方を変えれば健康になることで環境や社会に貢献できる方法を選んで健康になること、「健康行動で環境をイノベーションする」ことこそが、心身ともに本当の幸せに導いてくれるのかもしれません。





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