日本史サイエンス 蒙古襲来、秀吉の大返し、戦艦大和の謎に迫る (ブルーバックス)

失礼ながら、硬い講談社オブルーバックスを読んで、こんなにはまったのは久しぶりだ。歴史番組が得意なNHKでシリーズ化にしてほしいものだ。

この本の趣旨は、日本史の節目に起きた事件を、理詰めと数字で読み直そうということだ。

テーマとなっているのは3つ。
(1)文永の役で蒙古軍はなぜ一夜で撤退したのか
(2) 羽柴秀吉の「中国大返し」はなぜ成功したのか
(3) 戦艦大和は本当に「無用の長物」だったのか

そう言われると、不思議で、思考停止していたことばかりだ。

筆者の播田さんは「船の基本計画を生業とし、趣味も艦艇と古船という船オタク」(本書より)。蒙古軍の船を緻密に再現して、軍の動きを再現してみせる。

秀吉の場合は、大軍を動かす場合に必要な食料や馬がどの程度必要になるのかとはじき出してみせる。

大和については、日本海軍の致命的な作戦ミスから大和が活用されずにいた。最後になって、温存できなくなって無理な作戦に駆り出し、米軍の戦闘機にいいように攻撃され、沈没させられたことを描き出す。

歴史ってこんなにおもしろいものなんだと驚かされる。

大和は無残に沈没したが2つの点で貢献したと播田さんはいう。

1つは、日本の重工業や機械工業の基盤づくりとなったことだ。
もう1つは大和の巨大な測距儀をつくった技術が、戦後になってカメラ産業に生かされたという。

何かホッとするけれども、播田さんの懸念は、むしろ今のコロナ問題にある。

第2次大戦で日本はリアリティを欠き、目的のために最適化されない手段を使った。同じことをしているのではないか。

新型コロナウィルスへの政府の対応の、論理的一貫性のなさは、まさにそのあらわれです。いま本当に打つべき対策は何かを考えることに力が集中されていないと、最も避けるべき兵力の逐次投入のように、感染制御も経済対策も効果があがらないことになります。さらに、省庁のあいだの風通しの悪さ、いわゆる縦割り行政は、かつての陸軍と海軍もこうだったのか。


戦艦大和が沈没して残した教訓は、今日に生かされているのだろうか。

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