孫基禎―帝国日本の朝鮮人メダリスト

孫基禎―帝国日本の朝鮮人メダリスト

ベルリン五輪のマラソンに優勝し、それを伝える韓国の新聞、東亜日報が、孫の胸にあった日の丸を消した。この事件は教科書にも載っている。

しかし、その前後のことはほとんど知らなかった。

この本は、孫の自伝や、当時の新聞記事を丁寧に追っている。

孫は日の丸事件の影響を受けた。

彼が朝鮮民族の英雄になることを恐れた当局が監視下に置き、走ることができなくなった。

東亜日報は幹部が親日派の疑惑を受けていたが、この事件で9カ月の停刊を食らったことで、戦後も発展できた。悲劇というか皮肉というか。

ちょっと驚いたのは、後半になっていきなり孫が、川崎の病院に入院し、韓国に連れ戻されたことが書かれていることだ。ソウル五輪から、この入院までの時間が本の中で飛んでいる。

どうして晩年に日本で生活していたのか、詳しい説明がないので、唐突感が半端ではない。

また、孫は柳美里の本の中にも出てきて、思い出を語っている。

テレビなどでも、語っているはずだが、こういう生の話が収録されておらず、もっぱら孫の自伝に頼っている。前半は非常によく調査してあるのに、最後は物足りない気持ちにさせられた。

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