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詩と出会う詩と生きる 若松英輔 NHK出版

この本を読めば、白紙の紙と鉛筆を手にして、詩を書きたくなるはず。
どの本だったか「詩集はクスリとして読むべきだ」と書いている人がいた。

風邪を引いて熱を出したとき、お腹が痛くて何も食べられないとき、さみしくて眠れない時、ふさわしい詩を読むと癒やされる。

この本を読んでいて、この本も心に効きそうな気がした。

古今東西の詩人の作品を、丁寧に読み解いている。創作の背景や、言葉の持つ意味、作者の経歴などが平易だが的確な表現でまとめられている。


それだけではない。
詩を書くことは生きることであり、詩を書いてみて欲しいと繰り返し呼びかけている。

詩人だけが詩を書くのではありません。詩を書いた人を詩人と呼ぶのです。さらにいえば、人は誰も、自らの心の奥に内なる詩人と呼ぶべき存在を宿しています。詩を書くとは、この内なる詩人を目覚めさせることであり、詩を読むとは、世にある詩の言葉を内なる詩人が受けとめることだといえると思います。


たくさんの詩が引用されているが、ほぼ無名の詩人の作品が心を打つ。

岩崎航の詩にはじめてふれたときの衝撃は、今でもありありと思い出すことができます。その詩に出会うことがなければ、私は自分で詩を書こうとは思わなかったかもしれません。


とまで書く岩崎は、3歳ごろに発病、翌年に進行性筋ジストロフィーと診断される。今も彼は日々、ベツドの上で暮らしている。
彼の作品に1つが紹介されている。


障がい者は戦争のない
平和の中でのみ
生きていける
だからこそ平和を担う
世界市民となれるはず


障害を持っているからこそ平和を願う。体が思うように動かないから、安定した社会を願う。

考えて見れば当然だけれども、詩になると心に響く。

手元に置いて、クスリ代わりに読みたい本だ。

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