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世界遺産の本旨に戻れ

活字にならなかったので、ここに残しておきます。

 「佐渡島の金山」(新潟県佐渡市)の世界文化遺産登録が2024年以降にずれ込むことになった。書類の不備を指摘されたものだが、当初から、戦時中の朝鮮人強制動員の歴史に十分触れていないなどの批判があった。

 世界遺産に対立を持ち込まないためにも関係国と意見交換し、申請内容も世界遺産の本旨に沿い、歴史全体が分かる内容に改めるべきだ。政府・自民党は、この登録を政治的に利用しようとする意図がなかったか反省してほしい。

 今年2月、文化庁はユネスコに申請書を提出、今年夏には、審査が行われる予定だった。ところが導水路跡に関する説明が不備だとして、ユネスコ側が推薦書の再提出求め、日本政府も応じることになった。これで、来年の登録は時間的に間に合わなくなった。

 佐渡では、世界遺産登録を念頭に、観光振興を目指してきただけに残念だろう。しかし、今回の登録申請には、韓国政府だけでなく、国内の専門家からも批判が起きていたことを忘れてはならない。

 申請内容は、戦国時代末から江戸時代までに限定されているが、明治以降、戦時の朝鮮人強制労働なども含め歴史全体が示されることが必要だとの指摘だった。

 一部で朝鮮人労働者の待遇に差別はなく、賃金も受け取っていたとの主張もあるが、強制的な労働があったことは否定できない歴史的事実だ。地元の自治体も、地域史の出版物の中で認めている。

 日本政府は、長崎の端島(通称・軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産登録(2015年)された際、戦時の朝鮮人強制労働を含む「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」と、ユネスコ世界遺産委員会で約束した。 しかし、その後も十分実行しておらず、世界遺産委員会が、「強い遺憾の意」を示し、日本政府に対して適切な措置を取るようを重ねて求める決定を採択している。

 今回の登録見送りで、自民党内からは「岸田政権と自民党を支えてきた保守層(からの支持)にも影響が出かねない」との意見が出たというが、政治利用の本音が出たと言わざるをえない。 世界遺産は「人類の知的・精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくる」というユネスコの理念を踏まえたもだ。日本政府の主張を押し通すことが目的ではないはずだ。

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