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東畑開人さんの中学受験 栄光学園の速度算

最近読んだ、臨床心理士の東畑開人さんの本がおもしろかった。「心はどこに消えた」というタイトルで、患者さんとの相談内容を紹介する一方で、自分の心理もけっこう率直に吐露している。

その中に「中学受験の神様」というタイトルの項がある。

中学受験は親子による総力戦になりがちだ。なにせ当事者である受験生自身がドッジボールとかテレビゲームとかに夢中になるような年頃なのだ。そんなガキンチョが将来のリスク回避と自己投資を計算して、受験しようと決意するはずがない。親が夢を見て、親が計画を立てる。
親が指揮して、子が勉強する。親が将校で、子は兵卒なのが中学受験だ。

少なくとも私の家はそうだった。いや、違う。我が家の場合はなぜか、勉強まで母親がしていた。もちろん、私も一応、つるかめ算とか二酸化マンガンとか京浜工業地帯とか勉強した。
涙ぐましい努力をしたはずだ。しかし、それ以上に母親が勉強していたのである。第1志望校であった名門麻布中学の過去問を、母親は繰り返し繰り返し解いていた。蛍の光窓の雪、過去問解く月日重ねていたら、ついに中学受験の神様が降臨した。私にではなく、母親に。

「明日は漁業が出るぞ出るぞ」受験前の最後の慨餓を終え、台所で洗い物をしていたは
親が愚依していた。異言を話し出したのだ。「焼津港の水揚げ高出るぞ出るぞ」
戦標する私に、母親が参考書の漁業のページを開いて迫ってくる。「汝、ここを頭に刻みてから、寝よ」受験の神様は言った。「さすれば、麻布の門は開かれる」

身につまされる。この文章の中に出てくる母親を「父親」に変えれば私の家のことになる。

東畑さんの場合、運悪く麻布は落ちたが、神奈川県の名門、栄光学園に合格し、京都大学に進んでいる。その点では、立派に成功した人の1人にあげげられるだろう。ご本人は繰り返し

僕は深刻に勉強ができない。授業を聞いていても全然頭に入らず、予習復習をしようにも何をすればいいのかわからない。 テスト前日になれば図書館にいくし、自分では勉強しているつもりなのに、実際には読みたくもないつまらない小説を読んで帰ってきてしまう。そんな自分に嫌気がさすから、せめて翌朝までに英単語のーつでも覚えょうとするのだが、なぜかテレビを見ながら暗記しようとするので、何も覚えていない。

と自虐ネタを連発する。

あえて麻布不合格を書けるのも、勉強ができなかったと書けるのも、今の自分に自信があるからだろう。本人のところにも、そういう意見が届いているらしい。

巻末の著者欄を見て、結局大学受験はうまくいったみたいだし、むしろ嫌味では? というもっともなご指摘までいただいた。

と同じ本の中でこう書いている。難関中学でバリバリ勉強ができたのか、この本のようにイジイジと悩んでいたのかは定かではないが、東畑さんはここでよい友人に恵まれたことは間違いないようだ。

私は埼玉に住んでいるので、地理的にも神奈川の中学には縁がなさそうだ。ただ、大学時代には栄光学園出身の知人もいた。妙に自信まんまんな人だった。こちらは田舎出身なので、栄光学園がどんなところなのか全く知らなかった。

どんな受験問題出しているんだろうと、いつもの銀本を開いてみた。問題数は少ないが、個性的というか、工夫した問題が並んでいて、

解ける気がしない(泣)


最もやさしそうな1つ、速度算に取り組んで見た。

途中で速度が変わるというしんどい設定になっている。最初の3問は慎重に計算してなんとか分かったが、その後は暑さもあって戦意喪失。

この問題見ただけでも、やっぱり東畑さんは劣等生じゃなかったとおもうよ。



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