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ハリウッドと薬物中毒の深い関係とは

最近、NHKの映像の世紀という番組をよく見ている。これまで見たことない映像とともに過去の歴史を紐解く内容だ。

毎回毎回見応えがある。先日見たのはハリウッドの歴史についてだ。過去にもハリウッド関係の本を読んだり、映画を見たりしたことはあるはずなのだが、まとまった歴史を知ったのは今回が初めてのような気がする。

有名なハリウッドの文字看板は、もともとは地元の不動産会社のものだったというのも改めて知ったことだ。

この中のレポートで最も驚いたのは、ハリウッドの薬物中毒が非常に長い歴史を持っているということだ。ジュディ・ガーランドという初期のトップスターはなんと14歳の頃から全米の注目を浴びながら、覚醒効果のある薬と沈静効果のある薬を交互に飲まされ、ハードなスケジュールをこなしていた。

その結果、錯乱状態に陥り47歳で亡くなってしまう。彼女のことは映画でも見たことがあるし、娘はライザ・ミネリと言って、やはり有名な俳優歌手として活躍した。

彼女の 華麗な経歴の陰に、このような薬物中毒の過去があるというのは初めて知ったことだった。改めて関連の本を読んでみた。

キネマ旬報社から出ているジュディ・ガーランドという本には詳しく、その状況が書かれている。


88ページにこうある。

最初は彼女の体重をコントロールするため、薬が使われた。当時、ダイエット薬にアンフェタミンが含まれていると知っていたものはほとんどおらず、ハリウッドのスターで太りがちのものは皆それを服用していたという。

さらにガーランドはベンゼドリン(商品名バビルタール)を処方していた。撮影所には専属の医師がおり、セコナールという薬物を処方した。

誰もそれを危険なものだとは思わなかった。ジュディの母も薬物を使っていることは知っていたが、気にしていなかった。

ガーランドが飲んだ薬は食欲を減退させたが、ハイな状態での活動を増進させ、そのために眠っているべき時間に目が冴えてしまう。

今度は睡眠薬を与えられ眠る。そうなるとだんだん午前の起床時間に夢をうつつとなり反応が鈍くなる。

このため、今度は別な薬が与えられて刺激神経が高ぶる。こういったことが当然のように行われていた。当時ガーランドはまだ14歳だった。後年これにアルコール中毒がかさなり、さらに状況は悲惨になったようだ。

鎮静剤と覚せい剤を交互に使用すると、体の自然なリズムを破壊するため、当然ながら悲惨な結果を招く。

中枢神経系に異なる作用を及ぼすことが問題だという。

覚せい剤の興奮作用により、鎮静剤の効果が相殺されたり、逆に強化されたりすることがある。効果が極端に出てしまうのだ。

鎮静剤は呼吸抑制や低血圧を引き起こす可能性がある。覚せい剤と併用することで、これらのリスクが増加する。

舌根沈下という症状や呼吸抑制などが出ることもある。

最も深刻なのは精神状態への影響だろう。交互に使用することで、不安、幻覚、妄想などの精神症状が悪化することがある。ガーランドの場合は、まさにそうだった。

ハリウッドの薬物中毒について調べると、かなり多くの人が陥っている。

ロバート・ダウニーJrは、映画『アベンジャーズ』シリーズで世界的なヒーローとなったが、薬物トラブルに悩まされていた過去があった。しかし、そのことを公表し。努力の末に依存を克服し、成功を収めた。

ダニエル・ラドクリフ。『ハリー・ポッター』シリーズで有名になった彼は、アルコール依存に苦しんだが、現在は禁酒生活を続けている。

映画「スタンド・バイ・ミー」でブレイクしたリバー・フェニックスは貧しい生い立ちで、ビーガンとして潔癖な生活をしていが、大人になってから薬物を乱用し、若くして亡くなっている。

売れている時期に無理をさせるというのは、今も続いていることだ。表面上は世間から受け入れられやすいアルコール中毒とされているスターも、実は薬物中毒だった可能性もある。

娘のライザ・ミネリ は、母の葬儀の中で弔辞を述べた。その内容は次の通りだった。

人生に対する愛こそが母にあらゆる苦難を乗り越えさせてきたのです。彼女には中庸は全く不向きで退屈なものでした。彼女は最高にエキサイト することを望みました。彼女がハッピーな時は 単にハッピーだったのではなく 有頂天 だったのです。そして彼女は悲しい時は人一倍 悲しかったのです。

ジュディ・ガーランド534p

2人はとても仲が良かったという。

そのミネリも、アルコール中毒に陥ってしまったのは、運命だったのだろうか。

決して人ごとではない気がする。


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