謎のアジア納豆―そして帰ってきた〈日本納豆〉― 高野秀行/著

前から気になっていたこの本を読んだ。

納豆は日本だけにあるわけではなく、ミヤンマーや中国などにも似た食べ物がある。日本でもさまざまな製法で作られているという。目からウロコの、エンタメ学術本だった。

実は私の実家では、毎年味噌を自分の家で作っていた。大豆を煮て、専門の圧搾機にかけて潰して、手でミソ玉を作る。

父親は、「手でこねればこねるほど、よく発酵する」とか非科学的な話をしていたが、実際そうだった。特に消毒もしない手で作業していた。

あるとき、圧搾機の中に煮た豆を入れっぱなしにした。

朝起きて中をのぞいたら、豆が糸を引いていた。恐る恐る食べたら納豆の味! 

その後、数え切れないほど納豆を食べたが、偶然自宅でできたあの納豆が、一番おいしかった気がする。

ところでこの本を読んでいて一番痛かった部分は、インパール作戦との関連だった。

ビルマ(今のミヤンマー)で行われた日本軍の無謀な作戦の名前だが、日本軍は納豆を作っている地域も通過していった。

ところが、日本兵が徴収あるいは強奪したのは家畜と野菜だけで、納豆は食べなかったという。地元の人には迷惑だったろう。

納豆系の食べ物は、単に「腐った豆」としか認識できなかったのではないか、というのだ。(234ページ)

この作戦は、食料などの補給を無視して行われ、多くの犠牲者を出したことで有名だが、事前に納豆系の食べ物があると知っていれば、生き残っていた兵士もいたのではないか。

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