日韓の報道に潜む構造的問題点
先日、日韓関係とジャーナリズムの関係に関するシンポジウムに参加しました。以下はそこで感じたことです。
いつかしっかりまとめて見たいと思っています。
1,摩擦を拡大しやすい日韓報道の構造
日本と韓国のオールドメディアの取材方法に、やはり日韓摩擦を拡大しかねない構造があるという点です。
実は私がソウル特派員をしていた時から、他社の人ともこういう話をしていました。
私は北京でも特派員をしましたが、中国では当局外国メディアに協力してくれません。インタビューにも応じません。勢い、独自な分析や個別のインタビューをするしかありません。
ところが、報告にもあったように、日韓は取材環境が整っており、かなり当局への取材が可能です。自国の延長で取材できる。とすると最も懸案であるイシューについて、スクープを狙うようになります。
問題を指摘するような記事ですから、日韓関係に影響を与えやすいということです。実はソウル特派員は、心の中で日韓関係に影響を与えたがっているのです。比較的日常的な取材を通して、相手国に影響を与える記事はカタルシスをもたらします。
かつて韓国の新聞も、かなりスクープを書いていましたが、最近はあまりありません。日本の専門家になったところで自分の将来にプラスにならないので、希望する人が減っているそうです。日本への見方も方にはまったものになっています。そこらへんと関係があるかもしれません。
逆に日本では希望者は増えています。
ただ記者の取材範囲は相変わらずソウルや政治、ストレートニュースに偏重しており、せっかく現地にいても読者の多様な関心に答えていないということになります。このズレは、日韓の交流が拡大しているなかでますます大きく、深くなっています。取材の方法、内容を根本から見直す必要があります。毎日新聞は、雑報は共同通信に任せるようにしています。変化の萌芽がみられます。
ただ、いまだに特派員が複数いる会社でも、2人ともソウルに張り付いていることがほとんどです。大事件が起きた時、記事が書けないことを恐れるためです。この点では、多少韓国の方が取材範囲が広い印象があります。
2,崩壊論が一般の特派員にもあるのではないか。
韓国特派員の1人が、日本を批判する記事が本社で受け入れられやすいと話していらっしゃいましたが、心に残る指摘でした。
どこか日韓の特派員の心の中に、「崩壊論」があるのではないかということです。どうせ韓国は孤立する、どうせ日本は没落する。それが記事の底流になっていないか、自問してほしいと思いました。