ヨハネス・ブラームス
ブラームスについて、今更語るべきことが残されているとは思えない。時代を超えた大作曲家として、恰も時代と地理的な隔たりがないかの如くの伝記的解説から始まって、パウル・ベッカーによる中部ドイツ的な交響曲作家のトレンドに位置づける試み、更にはその音楽を19世紀のドイツ・オーストリアの 社会的・文化的文脈に位置づける試みは、小市民的な親密さを湛えた音楽、ロマン派時代に台頭した知識人たち、ブラームスがともに生きた人たちのための音楽としての特質を浮かび上がらせる。形式に対する保守的な姿