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ファイヤープロレスリングワールド GWF奮闘記 幕間:夏の終わり

「夏が終わるなぁ」
「そうですネ。今年は一段と暑かったデスネ」
御堂筋条介とジョーカーは道場の隅で、水分補給をしていた。
先ほどまで、ジョーカーの対IKKI戦に向けて、基礎の練習やジョーカーの技の細かい調整を御堂筋が行っていた。
御堂筋はよく外国人選手の世話を焼く事が多く、これらの練習も付き合う事が多かった。本人の話だと、某有名ヒールレスラーの三番弟子と言うが、真実は定かではない。
ただ、御堂筋がレイヴンズで教える事は多く、アメリカンスタイルのジョーカーには合う事が多かった。

「それにしても、ジョーカーなぁ」
「どうしましたか、御堂筋サン」
「いやな、オマエくらいやったらアメリカで呼んでくれるリングもあったんやないかなぁと思うてな。それやったら、こっちやなくても、向こうでせんかったはなんでかなと」
「そですネ」
ジョーカーは、顔の汗を拭くと天井を見上げた。今だ道場は暑く、汗を拭いてもしたたり落ちてく。
「確かに、ギャラとか大きさではここより上の団体のオファーはありましたヨ。でも、こっちの方がよかったんデス」
「なんでや、また」
「まァ、こっちの水が合っていた。という事でしょうカネ?。気が付いたら、ジャパンのレスリングの方が好きになってました」
「そうかい。この時期やから、ボスは何人か抜けるのは覚悟しといたらしいけどな。戻ってきて、まぁワシも嬉しいわ」
「アリガトです。せっかく、ジャパンにいるのですから、ワタクシもベルトの一つは取りたいデスし」
「そやなぁ……ジョーカー」
「はい?」
「勝てよ」
「モチロンデスよ」
二人は、しばらく無言。すると、御堂筋が手を叩き
「よし、うどん食いに行こ。たまには食堂以外のうどんもエエやろ」
「暑いのにいいんデスか?」
「暑い時こそ、熱いもの食べるんや。ついでにカンヨルも呼んでええか?アイツ、ちょいと塞ぎこんどるしな」
「パクさんと話したいですし、いいデスよ」
「よっしゃ!それなら、電話頼む。ワシは車、準備してくるからな」
「ハイ」
道場から出ていく御堂筋を追って、ジョーカーは思った。
「ああいう人がいるから、またこの団体にいる理由かもしれませんネェ……」

夏の終わり、GWFで来月のカードが一つ決定した。


GWF Jr.ヘビー級王座 タイトルマッチ
挑戦者:ジョーカー 対 王者:IKKI
※王者初防衛戦

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