ジョセフ・クーデルカ プラハ侵攻1968

2011年、東京都写真美術館で行われた展示会
「ジョセフ・クーデルカ プラハ侵攻1968」
の図録として発行された写真集、帯付きです。

平和だった市民の街に、 突然戦車と軍人が侵攻してくる。
それは「同胞」であるはずの外国人の軍隊です。
抗議の声を上げ、 身体で戦車を止めようとする市民。
戸惑い顔の軍人に訴えかける市民。
やがて市街は炎と黒煙の戦場と化します。

たまたま目の前で起こった一連の事件を、 写真家はカメラに撮影しました。 彼はジャーナリストでもなく、 それまで撮っていたのは
主に舞台写真でした。
それは発表する場もないものでしたが、
写真家は秘密裏に国外に持ち出し、 そして一年後に匿名で配信されました。

クーデルカはこの写真によって 「ロバート・キャパ賞」を受賞しました。

ここには、私たちが見慣れている「報道写真」 からは窺い知れない、
理不尽極まりない不条理な戦争の姿があります。
緊迫した市民の表情や姿には、
重く強く訴えてくる、 生きる人間の力があって、
それは映画などの表現メディアでは、 伝えきれないものだと感じます。

撮影したクーデルカは、
戦車の中の自分と歳が変わらない兵士と向き合った時、
不思議と憎しみは湧かなかったといいます。
「悲劇は、彼ら私も同じシステムの下にいるということであり、
彼らに起きることは私にも起こりうるということだ。
ある日、戦車に乗って、ブダペストやワルシャワにいるのは
私かもしれない」

「風の谷」に侵攻して来たトルメキア軍を描いた 宮崎駿の脳裏には、
このプラハのイメージが あったのではないでしょうか。

ロシアとウクライナの戦闘が日々報道される今、
報道では見えてこないものを、 感じ取っていただければと思います。

写真の他、当時の状況知ることの出来る文章も 豊富に記載されています。
撮影から40年を経て紙焼きされた約250枚の写真の 大部分は、
この写真集によって初めて公開されるものです。
8ページの冊子と、2011年に東京都写真美術館で行われた展示会で配布されたリーフレットをお付けします。
大きくて非常に重たい本です。
カバーに多少の傷等がありますが、
重さによるページの歪みなどはほとんなく、 状態は良い方だと思います。

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